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不安な夜は、夢の話をしよう。

作者: 菜の花
掲載日:2026/03/21


橙色の空が藍に溶けていく

訪れた夜は長く

輝く月が存在感を増す

星屑を拾う人々も

すぐに夢の中へ


私は暗い海の中

独り投げ込まれてしまったように

遠ざかる昼の幻影を見つめていた


水は冷たくて

ぶるりと身体が震えた

透明だからか音がない

そのくせに起き上がれないほど重い

夜が連れてきた不安は

曇り空に包まれていた


今日、眠れない私は

何をして過ごしましょうか


真昼に日の光を浴びた布団

すんと鼻を鳴らすと

まだ太陽の匂いがする


真っ白のシーツに落ちた

あなたの髪

黒い一本一本が映える

思わず伸びた左手

触れたのはあなたの右手


ゆっくりと開いたあなたの瞼

瞳に映る私は

私の知らない人だった


「どうしたの」


吐息交じりの小さな声

夜だからか

それとも眠たいからか

多分、きっと両方


「今日はなんだか、

うまく眠れないんです」


起こしてしまって申し訳ないな

起きてくれて嬉しいな

もう眠りたいんだろうな

でも、少しだけ

ほんの少しだけでも

私はあなたと言葉を交わしたいんです


瞼はゆっくりと閉ざされて

また開かれる

ゆったりとした瞬きは

どこか擽ったい


「じゃあ、夢の話をしよう」

「夢の話?」

「そう、僕が今さっきまで、

見ていた夢の話さ」


あなたは私の左手を

ぎゅっと強く優しく握って

また瞼を下ろした

代わりに口から溢れる言葉


穏やかな声色で紡がれてゆく

おとぎ話のような夢物語

私とあなたの幸せなお話

もう忘れ始めているみたいで

あやふやにして話しているのには

気づかないふりをしておこう


「そうして僕らは幸せになりました。

……ってさ。

今の僕らと、そう変わらないね」


そんな声が聞こえた頃には

私は目を瞑っていて

不安は夜に溶けて消えていた


あなたに

ありがとうと伝えた

ちゃんと届いたのか

夢の世界へ足を踏み入れた私には

よくわからなかったけれど

夢の入り口で

「おやすみ」と

優しい声が耳を包んだ

ご覧いただきありがとうございました。


不安な夜は、幸せな夢の話を。


誰かに届きますように。

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