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六話 魔法戦といこうか

 ーーーー魔法。


 それは、人に異次元の力を与え、使い方によっては、人を神にも悪魔にも変貌させる危険なもの。古来よりは人は魔法と共にあり、魔法は人と共にあった。


 そんな、人間の使える魔法は大きく分けて二種類、それは、基本属性魔法と固有魔法である。


 まず一つ目、基本属性魔法、これは、基本属性である、炎、水、風、雷、土の五種類の魔法を指す。この魔法は、自分に適性のある属性の魔法を使用することができる。

 ミレーネの場合、水、風、雷の属性を持っているため、この三系統の魔法を使用することができる。

 また、他にも無属性というものも存在するが、その話は追々するので今は割愛させてもらおう。


 次に固有魔法、これは人によって違う魔法のことで、ミレーネの場合は、氷魔法がそれが当たる。いわば固有魔法は奇跡的に同じ固有魔法の人に出会わない限り、魔法の使い方を教わることはできない。それに、ただでさえ帝国の魔導士の数は少ないのだ。

 なので、帝国の魔導士の固有魔法は、ほとんどがその人のオリジナル魔法となる。


 固有魔法は極めれば極めるほど奥が深く、使用者のセンスや性格が顕著に現れるものなのである。


 *****


「≪吹雪(ブリザード)≫」


 ミレーネが呟く。

 刹那、緑に覆われていた森林が、辺り一面、白一色へと変貌を遂げた。

 辺りに肌寒い冷気が漂い、ミレーネは不敵に笑う。


 その横でミアクマは飛び跳ねてから体を丸め込み、「≪獣王の影(ビーストキング)≫」と叫ぶ。何かがずしりと落ちる重い音が響き、ミアクマの周りが霧雪に包み込まれる。

 次の瞬間、その中から、霧雪を振り払った大熊が姿を現す。


「どうだ、かっけぇだろ」


 声は違うが、喋り方と体が毛糸で目がボタンなことからミアクマだとわかる。ミアクマは気を失っているトウマが凍傷にならないようにするため、お腹の中に無理やり詰め込んだ。

 中にはわたが詰め込んであり、暖かそうだ。


「さあ、ボクたちを止めたければかかってきなよ!」


 ミレーネが挑発する。


「こうなるのはわかってたぞ、ミレーネ」


「はは、さすがフィンだ」


「何が"さすが"だよ、おいお前ら、わかってると思うがあいつに手加減は不要だ。最初から全力で行くぞ」


 言いながらフィンは杖をミレーネに向ける。


「≪業火(ヘルフレイム)≫」


 フィンが生成した炎がミレーネとミアクマの周りを囲むように燃え上がる。


「寒すぎんだよ、これで少しはあったかくなったんじゃねえか?」


「ふふ、あいにくボクは暑がりでね、これくらいがちょうどいいんだよ」


 ミレーネとフィンが視線を交わした。


「うおおおおっ!先輩!私を見てくださーい!!」


 その間に突如割り込むシンシア、体の動きからは想像できないほどの早さでミレーネに突っ込んでくる。


「≪全力突撃(フルチャージ)≫に身体強化をかけたのか」


 シンシアの固有魔法、≪全力突撃(フルチャージ)≫は、体中に全ての物理攻撃を跳ね返すバリアを張り、捨て身の突撃をする魔法だ。

 普通のスピードなら攻撃が当たる可能性が低い、だが、無属性魔法である身体強化と組み合わせれば、この魔法は真価を発揮する。


 しかし、


「シンシア、残念だけどそんなスピードじゃボクには当たらないよ」


 シンシアがミレーネにぶつかる寸前、ミレーネはまるで闘牛士のように華麗に避けた。


「にゃっ!?私の愛のタックルを受け取ってくれないんですか先輩!?」


「そんなんじゃボクには当たらないって何度も言ってるだろう?君の攻撃は法則化しやすいからね」


 言いながらミレーネはシンシアを氷漬けにした。なんだか固まっているはずなのに氷の中から視線を感じる。怖い。


 ーーーーミアクマの方は大丈夫かな?


 思いながらミアクマの方を見るとぶるぶると恐怖で震えるユリーカと、両腕を広げて精一杯の威圧感を醸し出しているミアクマがいた。


「あ、あ、あわあわあわ……クマさんその姿やめてくださいっていつも言ってますよね!?怖いです〜……」


「キャハッ!怖くて結構、後オマエ、オレの名前はミアクマだよ、クマさんっていうのやめろっていつも言ってるだろう?」


「く……クマさんがやめないのなら、私がいつもの姿に戻して見せます!」


「お?威勢だけはいっちょまえだな、ほれ、オマエにできんのか?」


「できるできないん話じゃないです!怖いからやらないといけないんです!行ってください!≪茨の抱擁(ソーンバウンド)≫」


 すると、地面を覆い尽くすほどの厚さの雪のカーペットの下から二本の茨のつたがにょきにょき生えてきた。それは、ミアクマを捕獲しようと、生き物のようにうごめいて襲いかかる。

 だが、ミアクマはそれをわかっていたかのようにその巨体からは想像できないような軽い足でバッステップをして避けた。


「危ねぇ、オレ、頭で考えんのは嫌いだけどやっぱ法則化しておくと便利だな」


 ミアクマは呟きながら拳を構えて高く跳躍した。狙いはもちろんユリーカだ。


「ーー!!≪茨の抱擁(ソーンバウンド)≫」

「へっ、そうくると思ってたぜ≪大猩々の拳打(コングフィスト)≫」


 空中で逃げ場のないミアクマは、下から襲いかかってくる茨をいとも簡単に払いのけ、ユリーカの頭に拳を入れる。ミアクマはそのままユリーカから少し離れた場所に勢いよく着地する。


「オマエは最初と焦った時はあの魔法しか使わねぇからな、他の草魔法だったらやばかったぜ……ってえぇ!?」


 ミアクマがカッコつけていると、先ほどまでユリーカのいた場所の霧雪が晴れた。そこにいたのは無傷のユリーカと、優雅にレイピアを構えているリュード。


淑女レディーに向かって野蛮な拳を向けるとは……紳士の隅にも置けない……紳士の中の紳士たる僕がッ!ここで君を切り伏せてやろう」


 リュードはレイピアをミアクマの方に向け、刀身に魔力を乗せた。


「≪麗しき閃突(ビューティフラッシュ)≫」


 刀身が派手に光輝き、リュードが何かよくわからないセリフをカッコつけて喋っている。怖い。


「はぁぁぁぁぁあ!!!!」


「いやオマエの攻撃当たるわけねぇだろ」


 ミアクマは言いながらリュードの攻撃を避け、そのまま首裏に気絶させるくらいの勢いで手刀を当てる。

 近くであわあわしているユリーカも、直にミアクマに気絶させられるだろう。


余所見よそみとは余裕だな、ミレーネ」


 目の前に来ていたフィンがそう話しかけてくる。

 先ほどまでミアクマの戦いを見つめていたが、その間もフィンと戦っていたのだ。


「さて、そろそろボクも終わらせようかな≪洗浄ウォッシュ≫」


 言いながらミレーネはフィンに洗浄魔法をかける。ただの生活魔法だとしても、この極寒の寒さの中でなら水は凶器となる。≪吹雪(ブリザード)≫で冷やされた体には水はよく効く。

 現にフィンは溺れそうになりながら体を冷やそうと自分を抱きしめている。


「これくらいでいいかな」


 何もミレーネはエンパイアのみんなを殺す気はない。フィンを氷漬けにして後は……


「やっぱり、君が残るんだね」


「はっ、そりゃそうだろ、俺はお前の同期なんだからな!」


 言いながら現れたのはアランだ。ミレーネはフッと笑い「その同期だからっていう理由、何の根拠もないのに使うの、やめといた方がいいよ」と、半ば煽るようにして問いかける。


「ま、それはさておきミレーネ、久々の魔法戦だな」


 アランは楽しそうに指を鳴らした。すると、ミレーネが氷漬けにしたシンシアとフィンの氷が音を立てて破壊された。


「さあミレーネ、俺と楽しく遊ぼうぜ!!」


 ミレーネの同期アラン、彼は固有魔法『魔法解除』の所有者だ。

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