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ヴァルターの決意

レギンリンダから正門をあける約束をもらいヴァルターは急いで自分にあてがわれた寝室へと戻っていった。出撃とはいえ甲冑も兜もつけるつもりはない。時間がないし敵の陣地に潜入する訳だから金属で出来た甲冑のかさばる音など敵にバレそうだしで余計だと感じた。

寝室のベッドの近くにある箱を開けて、自分が従騎士に昇進した時に渡された騎士用のアーミングソードを取り出した。剣の柄を握り青い鞘から素早く剣を部分的に出す。両方の刃に刃こぼれが無い事を確認して剣を鞘に戻すと、ヴァルターは剣に収まった鞘を腰のベルトの左側に固定した。


「おい!ヴァルター!」


作業に集中していたヴァルターは寝室の扉を閉じる事も忘れていたので声をかけられるまで後ろに人がいる事に全く気がつかなかった。後ろを振り向くと声の主、ヘルムートとディートリッヒにハインリヒの3人が寝室への入口に集まっていた。ヴァルターは立ち上がり、入口の方へと顔を向ける。


「ヴァルター、何してる?見張りでも命じられたのか?それにしては鎧も付けずに剣1本とは装備が軽すぎるだろ?」


3人の中で一番の脳筋と言えるディートリッヒがヴァルターがさっきまでやっていた事に疑問を呈する。ディートリッヒとは違い詩人肌のハインリヒがヴァルターのやろうとしていた事にそれとなく気づいて厳しい表情になる。若い貴婦人相手に武勲詩を歌った彼には読めた行動だった。


「ヴァルター、君ヴォルフラム様を助ける為に出撃するつもりですね。」


「なんだって、ヘルムート?おい本当かヴァルター?」


テオデマー将軍の息子で戦術戦法に関して目があるヘルムートの発言にディートリッヒは驚いた。ヴァルターはこの時点で何も答えなかった。


「何とか言ってくれよ、ヴァルター。」


ヘルムートはかけていたメガネ越しにヴァルターを睨んだ。左腰にぶら下げた剣を手に抑えてヴァルターはようやく口を開いた。


「そうだ。俺は今から父上を助けに行く。」


「無茶だ!一人で助けに行くなんてそんな武勲詩じゃあるまいし!」


ヴァルターの答えにハインリヒが抗議した。女性にもてる為にと詩人としても修行を重ねている彼も従騎士として仕えて行き成り弱小貴族による反乱の鎮圧に直接の主と共に従軍してから戦の現実というものは彼なりに見てきたつもりだった。少なくとも英雄が単身で敵の軍勢を突破するなど夢物語だとハインリヒは理解していた。


「ハインリヒ、戦が武勲詩とは違うと分かっているなら魔族に捕らわれた者がどんな仕打ちを受けるか分からないお前じゃないだろ?」


「・・・!ここでその言い方は卑怯だぞ、ヴァルター!」


ブロド大陸の北西に位置する大陸で高度な古代文明を築いたエルフ達は1000年程前に魔王によって率いられた魔族の軍勢による侵攻によって崩壊し、多くの生き残りが人間が大多数を占めるブロド大陸へと亡命していった。ハインリヒの母はブロド大陸のザーゼン帝国に仕えたエルフの戦士の血を引いており、エルフの伝統を重んじる母から何度も魔族の残虐性について説かれていた。その点を突かれハインリヒは怒っていたのだ。

怒るハインリヒを横目にディートリッヒもヴァルターを説得しようとした。


「ヴァルター、一度頭を冷やせ。一人で敵陣地にいっても見つかって打ち首がオチだぞ。」

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