魔剣アルフンク 後編
「・・・あの魔剣はな、お前たち一族の墓にヴァルデマールの亡骸と共に埋葬されておる。あやつの息子のエンゲルディオの判断じゃ。当時は新たな大公家の政治基盤が以外に早く強化されておったから前の王朝の証拠になるものが家にばーんと飾ってあったら謀反を疑われると考えたとの事らしい。」
「エンゲルディオってうちの2代目当主の名じゃないか!?ご先祖様がそんな判断をしたなんて・・・」
ヴルムドルフ家の墓とはヴルムドルフ村から少し離れたクライネシュ・グラウとい小山の中にある古代エルフの貯蔵庫を転用した当主と近親者を葬った墓地の事だった。ヴァルターは一家で一緒に墓参りにその場所にいった事があったが山内の墓地への入口はロックのある木のドアで簡単に入れない様にされてあった。その墓地の一番奥に始祖ヴァルデマールの墓があるのを思い出す。
「老婆心でいうがの・・・当時はそれなりの理由があって魔剣を封印した。ヴァルター、お前の判断は単なる墓荒らしではないぞ?あの剣は王冠や王杓と同じ王権を示すレガリアじゃ。あれを世に出す時の覚悟は出来ておろうな?」
現在のボイマルケンの大公の統治を否定しかねない王権を示すものを歴史の闇の中から世の光に解き放つ事はこれから政治闘争の可能性があるのだとティッタが警告している事にヴァルターは理解できた。
「俺には今のルートヴィヒ様の統治を否定するつもりはない。ここだけの話、軍事指揮官としては無能だと思うけども民が商売をしやすい様に街道を作ったり、農奴や農民であろうと有能であれば役人に任命したりするから有能な統治者ではあると思う。」
「ほぉ、大公に不敬でありながら敬意を同時に示すとは面白いのう。だが覚えておいて欲しいヴァルター、王とは元から王であるからその地位になれるものではない。人々から望まれるから王は王になれるのじゃ。これを忘れてはならんぞ?」
「俺がそんな簡単にルートヴィヒ様に代われるとは思えないが覚えておくよ。」
ヴァルターも騎士の家に生まれたから騎士になるのは当然と子供の頃は考えていた。だが小姓として最初の騎士修行をしていく内に、気弱な明らかに戦う素質のない者もやはりいてそういった者は早い段階から失意の内に騎士修行から脱落していったのを当時は驚きながらも強く印象に残っていた。騎士の修行は簡単なものではなく自分も努力しなければ騎士になれないかもしれないと。そう想いながら騎士修行に励み、やっと従騎士になれた時はハインリヒ達と4人で泣きながら喜びあったのをよく覚えている。今思えば自分たちは師匠である騎士たちの望んだ基準に達したから従騎士になれたのだとヴァルターは思った。
そんな考えを心の隅に置いといてヴァルターはとりあえず魔剣を墓から持ってくる段取りをティッタに説明した。明日の昼食後に墓まで行ってご先祖様のヴァルデマールの墓から魔剣アルフンクを取りにいく。ティッタも一緒にいくと言い出したのでそれを了解した上でヴァルターは家に戻って眠りについた。
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