尋問 後編
目の前の肌色のオークの大将軍はどうやら事前に斥候を放ったというのだ。その上で自分がどう言うのか試していたのだ。もし自分がその場限りの嘘を言っていればと思うとヴァルター達が身震いしていた。
畳み込み式の簡易な椅子に座っていた黒の大将軍は関心した様に敵に拘束されて緊張していたヴァルター達を眺めていた。そして質問をヘルムートに投げた。
「おいメガネ、貴様が頭がよさそうだから聞くがお前たちがヴァルターにここまでついて来た理由は?」
「ヴァルターは初めは自分一人で行くと言い張っていました。だから僕達3人は救出と生存の可能性を上げる為に一隊になって忍び込む事にしたんです。」
黒の大将軍はあごに指を当てながらメガネと呼ばれたヘルムートの話しを聞いていた。
「なるほど合理的ではあるな。しかし悪天候とは言え一人でも父親を要塞から助けに行こうとはオークでも中々見ない蛮勇ぶりだな?我が戦友達よ?」
ヘルムートの答えにアジノスは関心した様に拘束していたヴァルター達の後ろで見張っていた親衛隊の兵士達に問いかけた。親衛隊の兵士達もヴァルターを馬鹿みたいな目つきで笑っていた。黒の大将軍がすっと右手を上げると親衛隊の兵士達の笑いがすぐに止まった。黒の大将軍はハインリヒの方を忌まわしそうに見つめて問いかけた。
「そこのエルフのガキ、集団とはいえ何千人もいる要塞に攻め込むのは流石に無謀とは思わなかったのか?」
「例え無謀だろうと正しい行いをしなければならない騎士道という奴ですよ。あいにく仲間の父親がおたくらに食われても何とも思わない感性じゃないんでね。」
皮肉まじりの返答が気にくわなかったのか、ハインリヒの後ろに立っていた親衛隊の兵士がいら立ちながら彼の背中を勢い良く蹴った。声を上げたハインリヒが前にのめり込む様に倒れた。
「ハインリヒ!」と叫んだヴァルターの首筋に刃がそっと当てられた。後ろの親衛隊の兵士のもので下手に動けば殺すとの合図だった。
「エルフというものは・・・」と言いながら黒の大将軍は地面にうずくまっているハインリヒを身ながら溜息をついていた。
「つまりはお前達の騎士道という考えがヴォルフラムを助け出すきっかけになった訳か。それでここまで来たのは関心したぞ?」
ヴァルターはあれほど野蛮と言われた魔族の将軍にこうも称えられるのは変な気分になった。僅かながら捕虜を丁重に扱うのかと思った矢先に冷たい言葉が放たれた。
「黒の大将軍として判断を下した。捕虜であるヴォルフラムを盗もうとしたお前たちは打ち首だ。」
その言葉を聞いてヴァルターは気分がどうにかなりそうだった。ここで死ぬのか?もう故郷のヴルムドルフに帰れないのか?故郷のエルフの師匠に魔法を教わる事はもうないのか?もうレギンリンダにも会う事は出来ないのか?
「仲間は・・・俺に勝手についてきた。彼らは助けてくれないか・・・?」
「騎士道精神で助けに来たんだろう?じゃあそいつらも同罪だ?」
せめて仲間の命を助けようとヴァルターの口が動いたが目の前のオークに無下に却下された。
そんな時、父親のヴォルフラムが言葉を発した。
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