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尋問 前編

後ろの魔族の親衛隊の兵士から話せと言わんばかりに突かれヴァルターが重い口を開いた。


「俺はヴルムドルフを治める一家の従騎士のヴァルター。ボイマルケン軍で旗騎士を務める我が父でヴルムドルフを治めるヴォルフラムを助け出しにこの要塞に忍び込んだ。」


「ほう・・・。父親を助け出しにこの寒い中、わざわざこの要塞にまで忍び込んだ訳か。ご苦労な事だ。」


ヴァルターの答えに黒の大将軍は皮肉めいた態度ながらも少し関心を持った様だった。ヴァルターは抑えようとしていたが震えが止まらなかった。自分よりはるかに強い戦士から尋問を受けているのだ。精神的に耐えきれる自信がなかった。


「一応自己紹介をしておこう。俺は魔族を統べる魔王陛下の親衛隊の長を務める黒の大将軍の称号を賜った者だ。俺の右手にいるのが親衛隊の副官のアジノスだ。」


黒の大将軍が親指で自身を、右手の人差し指でアジノスと呼ばれた高級将校のオークを指さした。アジノスはヴァルター達を見て軽く鼻で笑った。ディートリヒがアジノスの態度に腹が立ったのか飛びかかろうとした所を後ろにいた親衛隊の兵士に力づくで抑えられ背中を蹴られた。


「弱い癖に歯向かうからだ。馬鹿な小僧め。」


アジノスは地面に押さえつけられているディートリヒを一瞥しながら罵った。


「まぁまぁ若い内に活気に溢れていて良いのではないか。蛮勇ともいうが。」


アジノスに対して黒の大将軍がディートリヒをある程度評価しているとの意見を言うとそこに軽蔑のニュアンスも含めていたからか二人とも軽く笑った。その様子をヴァルター達は歯ぎしりしながら見るしかなかった。二人が笑い終えると二人とも真面目な表情でこちらを見て黒の大将軍が最初に口を開いた。


「で、戦力は?本当にお前達4人だけか?陽動じゃないのか?他に伏兵はいないのか?」


黒の大将軍は関心を持っていたがヴァルターの行動に疑いを持っていた様子だった。事実、黒の大将軍はヴァルター達従騎士4人を疑いの眼差しで睨んでいた。


「おら!閣下が質問なさったぞ!答えろ!」


今度はアジノスに脅されるがヴァルターはどう答えるか一瞬戸惑った。事実を話して時間を稼ぐか。後ろに大軍がいると信じ込ませてその隙をついて皆で逃げるか。だが後ろに槍で武装した魔族の兵士が5人も構えている以上、皆で逃げるという選択肢は潰されてしまった。

やむなくと自分に言い聞かせてヴァルターは震えながら事実を話した。


「伏兵は・・・いない。本当に・・・俺たち4人・・・だけだ」


テントの中へと別の甲冑を着てやって来た魔族の親衛隊と思わしき兵士が黒の大将軍の左に近づいて耳打ちした。それを聞いた黒の大将軍に向けてヴァルターに関心した様な顔つきをした。


「ヴァルターとやら・・・嘘は言っていない様だな。俺の親衛隊の斥候が要塞近くの林で馬を4頭捕まえたとの報告を先ほど受けた。それ以外に敵部隊の存在も確認できないともな。正直で偉いじゃないか?」


「本当に4人で来たんですか、こいつら?思い付きで行動したというか馬鹿というか。」


まるで子供を褒める様なばかにした二人の仕草にヴァルターはもはや怒る気力も無かった。

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