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城からの出撃

決意を固めたヴァルターら4人は拍車の付いた乗馬用の靴に履き替えるとグリュンブルク城内にある馬小屋に向かい、従騎士に昇格した時に与えられたそれぞれの軍馬を起こして乗馬用の鞍を装着させた。


ヴァルターも神話の英雄の馬にあやかってグラニと名付けた灰色の馬がいたが夜に起こされて不満そうな顔だった為、グラニを「どうどう」となだめながら鞍を付けて馬小屋から正門へと連れて行った。ヴァルターら4人の従騎士達が各々の馬を引き連れて城の正門に集まると正門はすでに開かれていた。その開いた正門の前でレギンリンダが小姓のマグナスと共に立っていた。緊張している表情のマグナスと裏腹にレギンリンダは心配そうなヴァルターに向けていた。


「姫様、そこに立っていると危険ですよ。」


「これから出撃する貴方がそれをいうの、ヴァルター?」


ヴァルターは開いた正門の前で立っていたレギンリンダの身を案じたが彼女にすぐにそう言葉で返された。ヴァルターには反論できなかった。レギンリンダはヴァルターの後ろで馬の手綱を引いて立っているハインリヒら3人を一瞥してこう言った。


「門番には偵察に行かせると言っておきました。でも貴方たち4人で行くなんて予想外です。」


「申し訳ありません、姫様。でもこの方がヴァルターもヴォルフラム様も生きて帰れる確率が高くなると判断しました。」


ヘルムートが4人でいく理由を彼なりの理論でレギンリンダに説明した。


「ヴァルターの漢気に手を貸したいと思ったからです。本家の当主であり武勇に優れた旗騎士を敵地に放っておくのも騎士道に反すると考え俺は行動しました!」


ディートリッヒが騎士道に基づいた道徳をレギンリンダに説いた。


「旗騎士のヴォルフラム様には従騎士に昇格する時の騎士修行の際にお世話になりました。主君に尽くし部下を思いやりしんがりをつとめる武勲詩を歌うに相応しい騎士です。それに俺のエルフの血が友の父ヴォルフラム様をオーク共から助け出せと騒ぐのです。」


騎士も詩人も両方目指すハインリヒが感情論もやや混じった己の信念を語る。


「ヴァルター、やはり行ってしまうのね。」


「すみません、おこがましいですが我が父は大公様の貴重な戦力となりうる存在です。助け出して必ずや我が軍を立て直します。」


「あなたの事が・・・あなたの事も心配なのよヴァルター?貴方にもしもの事があったら・・・」


レギンリンダがせめてもの説得を試みた。その説得がヴァルターに対する秘めたる思いからくるものだと恋愛詩を歌う修行にこれまで励んできたハインリヒにはすぐに分かる。ヴァルター自身も小姓として大公の宮殿で彼女と出会ってから何度も会話を交わして来た身だ。彼女の心に秘めた思いに自覚はあったが、彼女は帝国の貴族の頂点たる大公家の姫、かたや自身は金で自由を買ったとは言え元農奴の騎士の息子だった。ヴァルターには割り切るしかなかった。


「申し訳ありません姫様、もう行かないと。」


そう言うとヴァルターは自身の馬グラニに跨った。他の3人も馬に跨ったのを振り向いて確認するとヴァルターは3人に指示を出した。


「これより我ら4人で我が父ヴォルフラムを助け出す!場所はここグリュンブルク地方を越えた旧ゼムノネーネン領の平地、つまり魔族の軍の野営地だ。気を引き締めてかかれ!」


ヴァルターが合図しコンロワ(5人から10人の騎士隊)にも満たない一隊となった4人がブーツの拍車で馬に合図し速足で城門を抜けて出るとヴァルターの指示でこんどは急いで移動する為の駈足へと馬を急がせた。


城門の扉の鉄格子が下がっていくなかレギンリンデは4人の、特にヴァルターの無事な帰還を戦神オーディンに祈るしかなかった。

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