子ヤギ令嬢とオオカミ令息が嵐の夜に出会ったら
(ツイてないわ……)
近所の森を散歩しながら、メイジーはため息を吐いた。
頭上からは、よく晴れた午後に相応しい柔らかな木漏れ日が差し込んでいる。だが、それとは対照的にメイジーの心は曇り空のようにどんよりとしていた。
(まさか、あのガブリエルさんと婚約を結ぶことになるなんて)
ガブリエルはメイジーと同格の貴族家出身の令息だ。そのため、二人は社交の場でも何度か顔を合わせたことがある。
だが、メイジーはどうにもガブリエルに好感が持てないでいた。
(お喋りもダンスもしないで、いつも一人で隅のほうにいて……。むっつりと難しい顔で黙り込んでばかりいるものだから、あの人の周りだけ空気が淀んでいるみたい。そういえば私、ガブリエルさんの声すら聞いたことがない気がするわ)
人と話すのが好きなメイジーには、ガブリエルのような孤高の男性は理解不能の存在だった。
(それにあの目……)
メイジーはガブリエルの鋭い眼光を思い出して身震いした。彼の容貌はどことなく肉食獣を思わせる。そのため、メイジーは心の中でガブリエルのことを「オオカミさん」と呼んでいた。
(あの人の前に立つと、まるで自分が獲物になったみたいに感じてしまう。ガブリエルさんがオオカミなら、私はさしずめ子ヤギってところね。その内、骨も残さずペロリと食べられてしまうかもしれないわ)
笑えない冗談だ。親の言いつけだから今回の婚約は仕方のないことだと割り切るしかないが、メイジーには彼との未来が明るいものだとはどうしても思えなかった。
(……そろそろ帰らないと)
メイジーは懐から懐中時計を出した。今日はガブリエルがメイジーの家を訪問することになっているのだ。婚約に際しての挨拶とのことだが、気が重い。それでもメイジーは踵を返してノロノロと来た道を戻り始めた。
その時、先ほどまで晴れていた空が急に暗くなり始めた。
一雨来るかしら、と思った時には、メイジーはすでにずぶ濡れになっている。この地方は天気が変わりやすいのだ。
土砂降りの雨の中、メイジーは靴やドレスを泥で汚しながら屋敷に向かって駆け出した。今日はどこまで運のない日なのだろうと我が身の不幸を嘆かずにはいられない。
(……そうだ。確かこの近くに森番が資材を保管している納屋がなかったかしら?)
家まではまだ距離もある。少し雨宿りをしていこうと、メイジーは方向を転じた。すると、記憶通りの場所に粗末な掘っ立て小屋が見えてくる。メイジーは中に飛び込み、ドアをきっちりと閉めた。
「ふう……」
小屋には窓がなく、中の様子はよく見えない。それでも大雨から逃れられてメイジーは安堵した。
壁板の隙間から漏れる光を頼りに材木の山を見つけ、そこに座ってスカートの裾を絞る。濡れた服は気持ち悪いが、こんなところで裸になるわけにもいかないので我慢するしかないだろう。
メイジーはしばらく雨が小屋の屋根を激しく叩く音を聞いていた。だが、その勢いはなかなか弱まりそうもない。
(少しだけの雨宿りのつもりが、長居することになりそうね)
本来なら困ったことになったと思うべきなのだろうが、メイジーはほっとしていた。
今から家に帰っていくつかの書類を書いてしまえば、ガブリエルとの婚約が正式に結ばれてしまう。それは、メイジーにとっての暗い毎日の始まりを意味していた。
そんな日々の幕開けを早めたいなどと誰が思うだろうか? 最悪の瞬間を先延ばしにできるのなら、こんなにありがたいことはなかった。
メイジーは壁に背を預けた。安心したら気が抜けてしまったのか、少しうとうとしてしまう。メイジーはゆったりとした気持ちでまどろんだ。
ギシ……。
床板が軋む音がするのと同時に顔に風を感じて、メイジーの意識は覚醒した。突然のことに気が動転し、「きゃあ!」と大きな悲鳴を上げてしまう。
「誰かいるのか?」
年若い男性の声が聞こえてくる。小屋のドアが閉まる音がした。メイジーは心臓をバクバクさせながら、「え、ええ……」と掠れた声で返事する。
「ひどい天気だから、ここに避難してきたの」
「俺もだ」
床板が踏みならされる音が止む。青年もどこかに腰かけたのだろうか。室内はますます暗くなっており、メイジーの目には青年の姿は大きな影としか映らなかった。
(寝ている間に夜になってしまったのかしら。雨もどんどん激しくなって、風も出てきたみたい。これじゃあまるで嵐ね)
うなるような音を立てて暴風が建物を揺らす。この小屋、壊れたりしないといいけどとメイジーは心配になった。
不意に、巨大な太鼓を打ったような落雷の音が辺りに響いた。間髪を容れずに室内からも派手な物音がする。青年がいるほうだ。
「何事!? 大丈夫!?」
「あ、ああ……。少し驚いて……バランスを崩しただけだ」
どうやら青年は座っていた場所から転げ落ちてしまったらしい。メイジーは彼の声が震えているのに気づいた。
(……もしかして雷が怖いのかしら?)
雷が苦手な大人の男性なんて初めて会ったけれど、彼を笑うのは失礼というものだろう。誰にでも嫌いなものくらいある。たとえば自分なんて、これから婚約する相手のことを怖いと思っているのだから。
「そっち、行ってもいい?」
「……どうしてだ」
「人が近くにいるほうが怖くないかなと思って。雷、苦手なんでしょう?」
「な、何を言っているんだ。そんなことは……」
またしても雷鳴が轟き、青年は「ひっ……」と声にならない声を上げた。メイジーは青年のシルエットが見えるほうまで歩いていき、その傍らに腰を下ろす。どうにか彼の手を探し当て、優しく握ってあげた。
メイジーも昔は雷が怖くて、ゴロゴロと空から不吉な音がする度お気に入りのぬいぐるみと一緒にベッドの下に隠れたものだ。そして、天気が良くなるまでふわふわの手をギュッと握りながら過ごしたのである。
(この方法、この人にも効くかしら? せめて少しでも落ち着いてくれたらいいんだけど)
そんなことを考えていると、青年が手を握り返してきた。メイジーは思わず微笑む。
「お話でもして気を紛らわしましょう?」
メイジーは明るい声を出した。
「あなた、雷はいつから苦手なの? やっぱり小さい頃から? 天気が悪い時は普段どうしてるの? 昔の私はベッドの下に隠れたのよ。あなたもそうするの? それとも、クローゼットの中とかのほうがお好み?」
「ええと……俺は……」
矢継ぎ早に質問されたせいか、青年はしどろもどろな口調になる。しばらくの沈黙の後、「すまない」と聞こえてきた。
「俺は人と話すのがあまり得意ではないんだ。君みたいに社交的な性格もしてないし……」
「あら、私だって誰にでもこんなふうに親しく話しかけたりはしないわよ。苦手な人くらいいるわ」
ガブリエルの顔を思い浮かべながら、メイジーはこっそり嘆息する。
「その人は少し怖い男性なの。彼の傍にいると、まるで子ヤギになったみたいに感じちゃうわ。だから私、彼を『オオカミさん』って呼んでるの。気難しくて人となれ合うのをよしとしないのよね。そのせいで周りに気まずい思いをさせてるのに」
「……困った奴だな」
青年は言葉少なに返した。
「だが、俺にはそいつの気持ちが分かる気がする。俺も人の輪に入っていく勇気がなくて、よく皆のことを遠くから眺めているから……」
「勇気?」
「ああ。突然言葉が出てこなくなったり、話題が尽きて相手を退屈させてしまったりしたらどうしようとか、そんなことばかり気にしてしまうんだ」
「退屈だなんて! 私はあなたとお話しできて嬉しいわよ? ……ごめんなさいね。私ってお喋りでしょう? たまに呆れられちゃうのよ」
「いや、それくらいでちょうどいいと思う。俺が黙る分、君が喋っていると考えれば釣り合いも取れる」
「それ、素敵な発想ね!」
メイジーは晴れやかな声で笑った。そんなふうに言われたのは初めてだ。類は友を呼ぶということなのか、喋るのが好きなメイジーの周りには同じような性格の友人しかいない。そのため、青年の考え方はとても新鮮に聞こえたのだ。
(私たち、相性ぴったりってことね)
メイジーはこの青年に親しみを感じ始めていた。繋いだ手にもう一度力を込めると彼も同様に握り返してきて、それがさらにメイジーを喜ばせる。
「あなたって楽しい人ね。私たち、仲良くやれそうだわ」
「皆もそう感じてくれればいいんだけどな。特に……婚約者は」
「……あなた、将来を約束してる人がいたの?」
高揚していた気分が一気にしぼむのを感じた。メイジーの顔からゆっくりと笑いが消えていく。
「正確には『これから約束する相手』だ」
建物内は真っ暗で、メイジーの様子の変化が青年には分からなかったのだろう。何事もなかったように話を続けている。
「俺は皆から好かれていない。きっと、その女性にも。婚約相手にまで嫌われるなんて、さすがにどうかと思っていたんだ」
「……私もね、もうすぐ婚約するの」
メイジーは湧き出してくるモヤモヤした気持ちを持て余しながらそう言った。
「さっき話した『オオカミさん』よ」
「君を怖がらせるような男なんてやめておけ」
青年が即座に返した。
「君みたいに素晴らしい女性には、そんな奴はもったいない」
「素晴らしい女性? 出会ったばかりなのにそう決めつけるのは早いんじゃないの?」
「そんなことはない。なぜなら君は……はくしゅんっ」
青年は小さな声でくしゃみをした。メイジーは「大変!」と目を見開く。
「今さらだけどあなたの手、とっても冷たいじゃない! このままだと風邪を引いてしまうわ!」
メイジーは青年のほうににじり寄った。ピタリと体を密着させると、彼が息を呑むのが分かる。
「私の服も濡れてるけど、これで少しは温かくなったでしょう?」
「あ……ええ……と……」
青年は言葉が出てこないようだ。けれど、逃げる気配はない。少しの間不明瞭な声を出し続けたあとで、「ありがとう……」と言うのが聞こえてきた。
「君は寒くないのか?」
「ええ。体は丈夫なのよ」
「そうか。いいことだな」
青年はまた黙り込んでしまう。彼のような口下手では、こちらから話題を振らなければ話を続けることは難しいのだろう。
だが、メイジーはあえて口を閉じていることにした。何も喋らなくても、彼とこうして体を寄せ合って座っているだけで、先ほどまで感じていた温かな気持ちが蘇ってくるのが分かる。
(何だか変だわ……)
メイジーは高鳴る胸にそっと手を当てた。
(これじゃあ、まるで恋してるみたい)
顔も名前も知らない相手に? メイジーはそう思って笑い飛ばそうとする。
しかし、できない。「恋」という言葉がやけに鮮明に頭に残り続ける。
(恋……)
メイジーは心の中で呟いた。
(私、この人に恋しちゃったのかしら? ……でも、どうして?)
もしかして、彼が自分にはないものを持っているからだろうか。寡黙さとか、どこか控えめな態度とか。
「……あなた、婚約間近だったわよね」
大変なことになってしまったと動揺しながら、メイジーは青年に話を振る。
「相手のことはどう思ってるの? ……好きなの?」
「……分からない」
やや間を置いて青年は返した。
「彼女は俺とはまるきり違うタイプだ。君みたいに明るい人なんだよ。正直に言って、どう接していいのか全く分からない」
「でも、私とはちゃんとお話しできてるじゃないの。だったら、その人とも何とかやっていけると思うけど」
「どうかな。君は特別だから」
青年の言葉が胸の奥の柔らかな部分をくすぐった。口数が少ないからなのか、彼の言葉は誠実で真摯に聞こえる。深みのある静かな声で「特別」などと言われてしまい、メイジーは恍惚となった。
青年がメイジーのほうに近寄ってくる。元々触れ合っていた体は、今や恋人のような距離感になっていた。
青年に体重を預けながら、メイジーは束の間時を忘れる。
(……でも、このままじゃいけないのよね)
メイジーは、先ほどまで強烈に吹きつけていた雨や風の勢いが弱まっているのに気づいた。
雨宿りはもうおしまいだ。同時に、このほのかな恋心にもケリをつける時が来た。
「……私、もう行かないと」
メイジーは青年から体を引き剥がした。
「家族が心配してるわ。それに……私の婚約者もね」
メイジーは踵を返したが、青年の「待ってくれ!」という必死な声に思わず立ち止まる。
「好きでもない男のところへなんて帰るな! そんな奴じゃ君を幸せにできない! 俺は、俺は……!」
「ダメよ!」
メイジーも叫び返した。
「それ以上はダメ!」
メイジーの心の中には青年への甘い感情がある。そして、それは彼も同じだった。
けれど、彼にもメイジーにも婚約が決定した相手がいるのだ。その約束を反故にはできない。
「お願いよ、もう何も言わないで。……私だって辛いのよ」
「……せめて、また会えないか?」
青年も、自分がワガママを言える立場にはないということは分かっているのだろう。苦しそうな声を出した。
「今度はもっと明るい時に。明日になったらこの小屋で落ち合おう。俺の名前は……」
「いけないわ」
メイジーはもう一度青年の言葉を遮った。
「私たち、もう会わないほうがいいのよ。顔も名前も知らないでお別れするのがお互いのためだわ」
メイジーは小屋のドアを開けた。そよ風が頬を撫で、一歩外に踏み出すと小雨がしとしとと体を包む。どうやら嵐は過ぎたようだ。雲の切れ間からは月が顔を覗かせていた。
(よかった。これならお屋敷までどうにか帰れそう)
森の中を歩いていこうとした。
その時だった。
「メイジー!」
大声で名を呼ばれ、振り返った。
小屋の戸口に立つ青年を見たメイジーは目を丸くする。
「ガブリエル……さん?」
鋭い眼光が特徴的な精悍な容姿。月明かりに照らされて浮かび上がってきたのは、誰あろうメイジーの婚約者候補の青年だった。
「ど、どうしてここに……!? だって、あなた……」
不意に、メイジーは衝撃的な事実に気づいた。
「私がさっきまで話してた相手はガブリエルさんだったのね!」
メイジーは口元を手で押さえる。
「何で言ってくれなかったの!? 私、てっきり……」
「俺も知らなかったんだ」
ガブリエルは弁解するように言った。
「今外に出て初めて分かった。俺も君のことを見ず知らずの女性だと思っていたんだ」
二人は軽く混乱したままの顔で見つめ合った。
「私がここにいるって知らなかったのなら、どうしてガブリエルさんは小屋へ立ち寄ったの?」
「今日は君の家を訪問する予定だっただろう? だが、いきなり天候が崩れたせいで、着いたのは随分遅くなってしまったんだ。けれど、俺の遅刻なんて誰も気にしていなかった。メイジーの姿がどこにもないと、屋敷は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたから」
「まあ……」
メイジーは心の中で両親に謝る。今が何時か正確には分からないが、もう遅い時間帯だということだけは確かだった。行き先も告げずに散歩に出かけるんじゃなかったと、今さらのように反省する。
「ご家族は君が家出したと考えたらしい。これから屋敷の使用人総出で辻馬車乗り場や駅に聞き込みに行くというから、俺も同行させてもらうことにしたんだ」
ガブリエルは地面に視線を落とした。メイジーは、両親はどこまで彼に本当のことを話したのだろうと心配になる。もしかして、自分が婚約を嫌がっていたと言ってしまったのだろうか。
「でも、どこを捜しても見つからない。状況報告のため、俺は一旦屋敷に帰ることにした。だが、その間にもどんどん天気は悪くなるし、おまけに道にまで迷ってしまって途方に暮れていたんだ。そんな時、森で小屋を見つけた。それで、しばらく雨宿りでもしようとして……」
「私と会ったのね」
メイジーは続きを引き取った。ガブリエルはちょっとほっとしたような顔になる。
メイジーはガブリエルに感謝した。喋るのが苦手なのにこれほど多くを語ってくれたのだ。いたわりを込めて、「しばらくは黙っていてもいいわよ」と言ってあげたかった。
だが、そういうわけにもいかない。メイジーにはまだ彼と話しておくべきことがあった。
「あなたのこと悪く言ってしまってごめんなさい」
メイジーは心の底から詫びた。
「私、あなたがどういう人なのかちゃんと分かっていなかったの。だから、『オオカミさん』なんて呼んで一方的に怖がってた。本当のあなたは全然そんな人じゃなかったのに」
「そうだな。俺は情けない男だから」
ガブリエルはかぶりを振った。
「意気地なしで雷も怖い。余計に婚約するのが嫌になっただろう?」
どうやらメイジーの嫌な予感は的中したらしい。両親はメイジーが婚約に反対していたとガブリエルに言ってしまったのだ。
メイジーは急いで「そんなことないわよ」と返した。だが、ガブリエルはその言葉が聞こえなかったかのように続ける。
「俺はこの小屋で誰とも会わなかった。そういうことにしておくつもりだ。だから……家出の続きをしたいのなら、そうしてくれ」
「そんなの嫌よ!」
メイジーは先ほどよりも大きな声を出した。ガブリエルがハッとなったようにこちらを見る。
「もう! 人の話をちゃんと聞きなさいよ! あなたは今まで何を見てたの!? さっきまではちゃんと分かってたはずでしょう! 私があなたを好きになっちゃったってことを! それなのに、いきなり自信を失わないでよ!」
「メイジー……」
「私は今でもあなたが好きよ! それに、すごく喜んでもいるんだから! だって、私が恋した相手は自分の婚約者だったのよ! こんな素敵な偶然ってないじゃない! ……ねえ、そうでしょう?」
あまりに後ろ向きなガブリエルに、メイジーは少し腹が立っていた。だが、その立腹は次第に安堵に変わっていく。
禁断の恋は勘違いだった。自分たちが結ばれるのには何の障害もないのだ。
「あなたこそ、私のことをどう思ってるの? 上手くやれる気がしないって感じてたみたいだけど」
「今は違う」
ガブリエルは大きく首を横に振った。メイジーの言いたいことがやっと伝わってきたようだ。その瞳はかすかに熱っぽく潤んでいる。
「一緒にいて分かった。君は優しくて頼もしい女性だ。好きにならないわけがないだろう」
真っ直ぐな言葉にメイジーの表情が緩む。気取らない言い方がガブリエルらしかった。
「じゃあ、何にも問題ないわね」
メイジーはガブリエルに歩み寄った。
「帰りましょう、婚約者さん」
「……ああ、そうだな」
先ほどまで真っ暗な小屋の中にいた時のように、二人は手を繋ぐ。
風は止み、雨もすっかり上がっていた。嵐の夜は過ぎ、雲が晴れた空にはまん丸の月が浮かんでいる。
気強い子ヤギと臆病なオオカミ。正反対だけれど、それでも相性抜群の二人は森の出口に向けて歩いていった。