第五十五話 ウサミミカチューシャ
ゼロイチの目線の先には、ピンク色のネクタイ。白色とピンク色の縞ゝだ。それに体のラインが見えるような白衣は、世の男性を魅了するが、男性がいたならの話。ここには、男はいない。いるのは、女性だけだ。兎角、ゼロイチはそのことを知らない。いつか、知る日が来ることを願って。
私は、今兎のつく言葉を使ったが、この登場人物………いささか不思議である。うさ耳のカチューシャをつけているのだ。『兎』………実に奇妙だ。
「イザベラさん。なんで、うさ耳のカチューシャをつけてるんですか?」
「ふふーん。何を隠そう。私が、月の民だからだよ。」
「へえー、そうなんですね。」
あれ?思ったより、反応が薄い………この子男の子だよね?私、昔は結構モテたんだけどなあと考えながら、胸を寄せてみるイザベラ。
そんなものに興味はないのだ。ゼロイチの興味は、あの謎の手紙、暖炉で燃やしてしまったが、本当に届くのだろうか。半信半疑で、燃やして、少しばかりの後悔をしていた。
なんで燃やしてしまったんだろう!
ガラシャからの大事な手紙。取っておけばよかった!
そんな、ああでもないこうでもない論争が繰り広げられる中で、ゼロイチの目の前で、植物状態となったガラシャは、片腕をだらーんと垂れさげ、寝ていた………
玉の記憶の世界にいる。ガラシャはというと………
口元に薄ら笑いを薄い浮かべた白い服の女は、ひたりひたりと不気味な足音を立てながら近づいてくる。その女の顔に見覚えがあった。就職先の上司なのだ。上司の顔をした、髪の長い女が近づいてくる。ひとり、ふたり、さんにん、徐々に、徐々に、増えていく。
バッと起きると、男は目を覚ました。
「なんだ夢だったのか。」
男は、遅刻寸前の時間だということに気づき、アラームを急いで止めると、会社へと向かった。
「おはようございます!」
「 ぉ は ょ ぅ 」
そこには、夢で見た女が会社の同僚や部下そして、上司となり働いていた………
Strange Tales―――069669
「ええ!こわー」
どうやら、ガラシャは本を読んでいたようだ。『数字は嘘はつかない』を手に持っていたはずだったが、お気に召さなかっだろうか。著者の九は、残念がるに違いない。
ところで、手紙は書いたのだろうか。
「あ、そうだ!手紙屋書かなきゃ!」
先が思いやられるものだ。
ガラシャは、手紙の作成に着工した………
髪留め「カチューシャ」の由来は、大正時代の人気女優・松井須磨子がトルストイの小説「復活」でカチューシャを演じた際に、この髪留めを頭につけていたことです。松井の使った髪留めがそのままカチューシャと呼ばれるようになったと言われています。
「カチューシャ」はロシア語由来の言葉で、ロシアに多い女性の名前「エカテリーナ(Ekaterina)」の愛称です。ニュアンスとしては「エカテリーナさん」という程度の意味からより親しげな呼びかけまで幅があります。
英語圏では、単に「ヘッドバンド」と呼ばれることが多く、『鏡の国のアリス』の主人公がつけていたことから「アリス・バンド」とも呼ばれます。
次回までどうぞよしなに!
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