第五十一話 眠り姫
ガラシャは書斎で手紙を書いていた。たまたま手に取った本から、紙がひらりと落ちてきたのだ。その裏面にはこう書かれていた。『手紙屋 誰にでも届けます。書いたら、燃やすだけ。』不思議な文面だったが、とりあえずガラシャは書いてみることにした。
『ゼロイチへ
こうして、手紙を書くのは初めてだけど、本当にゼロイチに届きますように。
私は、今、不思議な世界に迷い込んでしまったようです。みんなからは、玉と呼ばれています。
誰なんだろう?わかんないや。
でもね、楽しいよ。ゼロイチ大丈夫かな?ひとりでやってけそう?ちょっと心配です。
私は、いつも元気です。ゼロイチは元気かな?えっと、あと何書こうかな。そうだ。ちしちゃんと仲良くやっている?この前、聞いたよ。ブシを間違えて踏んじゃったって、面白かったな。また、3人でご飯食べたり、話したりしたいな。私のバイト先の店長や、大学の先生はどうしているかな。この手紙は一方通行なのかな。送ったら、本当に届くのかな?そんなことを考えています。念には、念を押して、届きますように!って、10回唱えといたよ!
この世界に来て思ったことがあるんだけど、私の昔いた世界にちょっと似てるかも。でも、直感でわかるんだよね。違うって。ゼロイチがいたら楽しいのにな。こんな感じでいいのかな。
ガラシャより』
一方その頃、ゼロイチはというと………
「ガラシャ!!起きて!」
困惑するゼロイチ。ガラシャは息はしているようだが、ぴたりとも動かない。動かないガラシャを跪いて抱えて、その重さを実感しながら、当たり前が当たり前じゃなくなってしまったこと。不幸が実際に起きてしまったことを悔いていた。
「行かなきゃ。」
ゼロイチは、病院へと向かう。ここからは遠かったが、千城ちしの手も借りて、向かった。千城ちしはすぐに駆けつけてくれて、「手伝うよ。」と一言だけ言った。
病院には、うさ耳をつけた。ナースがいた。ゼロイチは不思議に思っていた。なぜうさ耳をつけているのだろうか。と、ナースは、ガラシャを見ると植物状態ではないか?と、判断した。
「生きているんですか!?」
「もちろん。生きているけど」
医学的には「遷延性意識障害」と呼ばれる、意識不明になった後、意識がなかなか戻らない状態を、一般的に「植物状態」といいます。
通常は、植物状態にある人は、思考や意図を要する活動ができません。話すこと、指示に従うこと、意図的に腕や脚を動かすこと、痛みの刺激から逃れようと動くことなどはできません。
植物状態は、脳の全部または広範囲が壊死または損傷することにより発症します。生命維持に必要な脳幹部分が不完全ながら生きているため、自発呼吸ができ、回復の可能性も残されています。
次回までどうぞよしなに!




