第五話 我武者羅?いいえ、ガラシャですけど?
『我武者羅』
向こう見ずにむちゃくちゃに物事をするさま。
オックスフォードより。
では、本編をどうぞ!
「君、ゼロ円なの?」
「なんだい?」
いきなり女の子がゼロイチに声をかけてきた。普通は喜ぶのだが、ゼロイチはつい最近ハニートラップなるものを知った。その言葉をどうしても、どうしても言いたかったため、口から出まかせで、唇を動かした。
「さては、ハニートラップだな!僕を黙そうとしているに違いないね!」
「お子ちゃまが何言ってんの?」
「なんだって!?僕はこれでも、大学生だい!」
ゼロイチは、彼女の頭部を見てみると、千円札が1枚だけ頭部にあった。
「千円かぁ。」
体は女性なのに、顔が野口英世のように見えるため思わず笑ってしまったゼロイチ。1度は、こらえようとしたが、こらえきれなかった。吹き出すと、どうやら彼女の癪に障ったようだ。
「ああん?ゼーロ。」
「僕は、レイイチだ!」
「ほら、やっぱゼロイチじゃん。」
悔し泣きするゼロイチ………
その様子を見ていた彼女は、財布の中をゴソゴソと探しているではないか。
「なんか可哀想。あげる。」
彼女の顔である千円札が、いや、野口英世のあの不気味な顔がゼロイチの顔に近づいてきた。まあ、ゼロイチに顔はないのだが、ゼロイチは反射的に仰け反った。
ゼロイチの手に感触があった。何か見てみると、一円玉だ。
「え?いいの?こんだけ。」
余計な事を言ってしまったゼロイチ。
「こんなにでしょ?ゼロからイチって割と凄いからね。ほら鏡みなよ。ゼロイチ。」
女性は、化粧ポーチから鏡を取り出して、ゼロイチに見せつけた。
「ぼ、ぼくの頭が一円玉に!?君は、名前なんていうのさ。僕は、レイイチ。まあ、ゼロイチとも言うけどさ。」
「ゼロイチ君には、特別に教えてあげる。でも、恥ずかしいな。やっぱり、一円玉返してくれない。999円になっちゃったし。私は、えっと我武者羅。よろしく。」
「ガムシャラ?へぇ、って!なんで!僕また、ゼロ円じゃん!僕のお金が…………」
ゼロイチは下を俯きながら、嫌そうに手を差し伸べる。
「はい。ガムシャラちゃん。」
「我武者羅?いいえ、ガラシャですけど?」
「え!え、自分で言ったんじゃないか!」
「私の下の名前は、ガラシャなの。下の名前で呼びなさいよ。」
「が、ガラシャ。へぇ、ガラシャねぇ。」
「きゃーーーん。ありがと!」
「口が、アニメとかで見る猫の口になってるよ。」
「にゃああん?」
「あ、なんでもないです。」
女子って怖い。ゼロイチは、心の底から、そう思った。
「ハンバーガー食べに行かない?ゼロイチ〜」
あれ、初対面だよね?なんか馴れ馴れしい。ゼロイチは心を抉られた気分だった。
「大学はいいの?まだ講義あるんじゃ………」
「今日は、私一コマだけだからさ。」
「わかったよ。ガラシャ。」
「きゃーーーん。ありがと。」
あれ台詞決まってるの?いや、そんなはずはないのだが、勘違いするゼロイチ…………
友人となったガラシャと共に、ゼロイチは、ハンバーガーショップを目指した。ターラは、依然として、隠れたままである。
元々は、我武者羅だったのですが、一捻り加えたかったために、偉人から名前を取って、ガラシャに………
ちなみに、ガラシャという名前自体は、ラテン語で「神の恵み」を意味するそうです。
次回まで、どうぞよしなに!