第四十五話 おんがえし
タイトルが漢字ではなく、平仮名の真意は!?
「私が何かを言わなくても、あなたは自然とわかるはずですよ。」
「レイイチ。レイイチは、何になりたいんだ?」
新聞紙を見ながら、一はゼロイチに質問する。
「ぼくはね、おかねもちになりたい。」
「そうか。」
一は、新聞紙を見続けている。そんな父の姿を見て、ムッとするゼロイチ。
「おかねもちになって、とうさんとかあさんにおんがえしするんだ!」
間があった。一呼吸ぐらいの間だ。訪れた沈黙は、2人に考える時間を与えた。
「―――そうか。」
一は、先に話し始めたかと思えば、新聞紙を机に置くと言った。
「はっはっ、流石、金屋敷家の長男だな。」
ゼロイチがまだ、2桁にもなる前に言った台詞であった。
それが今。違う形で功を奏しようとしていた。
「何を思い出しているんです?レイイチさん。」
俯いたゼロイチにすかさず質問をするタコなり。
「いや、うん。ちょっとね。古い記憶だよ。
「そうだ。タコなりさん。聞かなければならないことがあったよ。弁財天様はここにいないのかい?」
「誤解を生まないように、はっきりと言いましょう。ここにはいません。」
「―――そうか。やっぱり、いないんだね。」
「ですが…………」
「ですが?」
「1つ間違いなく言えることがあります。」
手で1を表し、ゼロイチを見据える。
「なんですか?」
「弁財天様は、」
タコなりは、一呼吸おいた。
「弁財天様は?」
聞き返すゼロイチ。
「「生きています!」」
心に響くものがあった。まるで、心臓に触れられたように。
「本当ですか!?信じられないですよ!
「どこにいるんですか?」
すかさず訊くゼロイチ。
「それは………探すしかありません。大丈夫です。あなたなら必ずや、きっと見つけられるでしょう。
「ほら、戻ってきましたよ。あなたの友人が………」
「お待たせ。待った?ゼロイチ君。」
「いや、待ってないよ。今タコなりさんと話してて………あれ?」
周囲を見渡すが、そこには誰も見当たらない。
「タコなり……さん?誰かしら?」
「でも、弁財天様はここにはいないんだ。どこにいるんだろう?」
「誰から聞いたのかしら。まあ、いいわ。とりあえず、帰りましょ。メテオーラを探したいわ。」
「うん。そうだね。行こう!」
仲良さげに手を繋いで、歩く2人の影は短かった。
次回までどうぞよしなに!




