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最終話 毒に愛された少女は皆からも愛される

 空は晴れていた。

 ケイティと何度も来た、帝国でもひときわ大きい教会。

 今日も変わらず天を突くような高さを誇っている。

 ここで私とジェラルド様の結婚式は行われる。


 控え室にて、私は特注のウェディングドレスを着た。

 純白で、ふんわりとしたデザインで、私の小さく細い体によくフィットした。

 鏡で自分の姿を見てみると、まるで自分が自分じゃないみたい。

 ドレス職人さんには本当に感謝しかない。


 ジェラルド様がやってきた。

 白のタキシードを着て、穏やかな笑みを浮かべている。

 私はこれからこの方と結婚する、ということが未だに信じられない自分がいる。

 だけど、結婚するんだ。しっかりしなくては。


「綺麗だよ、ニーシャ」


「ありがとうございます、ジェラルド様」


 私もにっこりと笑った。


「お二方、こちらへどうぞ」


 教会の人に呼ばれ、私たちは手をつないで礼拝堂に向かう。

 礼拝堂には、大勢の人が集まっていた。

 みんな、ジェラルド様と私を祝福してくれている。


「おめでとう!」

「おめでとうございます!」

「ニーシャ様、お綺麗だ……」


 お綺麗だなんて、なんだかはにかんでしまう。


 ケイティたちも並んで出席してくれている。

 三人とも笑顔で拍手してくれている。

 私がこうして毒を制御して結婚式まで挙げられるのは、三人のおかげでもある。本当にありがとう。

 皇后となっても、あの三人とはずっと友達でいたい。


 厳かに式は進み、教会の司祭様が夫婦になる私たちに問いかける。


「ジェラルド・レクス。ニーシャ・レクス。永遠の愛を誓いますか?」


 ジェラルド様と私は声を揃えてこう言った。


「誓います」


 みんなが見ている前でキスを交わす。

 ちょっぴり恥ずかしさもあったけど、だけど嬉しさの方がはるかに上だ。

 私は一生、ジェラルド様を愛し続ける。


 皇后ニーシャ・レクスとして――



***



 それから五年後、なんと私は子供を授かった。


 こんな毒まみれなのに――と驚くかもしれない。

 今も私の体内には猛毒がある。それはもはや私の一部といってよく、抜き取ったり、消し去ったりすることはできない。だけど、邪魔にならないところに“移動”させることはできる。

 だから、毒に晒されず、我が子を宿すことができた。

 メディックさんからも「順調にいけば健康な子が生まれますよ」とお墨付きをもらった。


 ジェラルド様は私のお腹に手を置いて、微笑んでくれた。


「この子は私たちで幸せにしよう」


「はい、もちろんです!」


 数ヶ月後、私は宮廷のベッドで我が子を産んだ。

 お産は苦しかったけど、嬉しさの方がはるかに勝っている。


「おぎゃあ、おぎゃあ……」


「よしよし……いい子ね」


 絶対にこの子に毒がいかないよう、気を配ったのでいたって健康な男子が生まれた。

 ジェラルド様を思わせる気品も漂わせている。なんて、生まれたばかりの子に思うのは、さすがに親馬鹿かしら。


 まだ名前のない我が子を抱いて、ジェラルド様が嬉しそうに笑う。


「元気で大きな子だ。この子にならレグロアを安心して託せそうだ」


「ええ、きっと立派な世継ぎになりましょう」


 毒の川に捨てられて、毒に愛された私。

 触れるものを皆傷つける我が身を呪ったこともあったけど、今はとても幸せだ。

 今なお体内に宿っている毒でさえ、愛することができる。


 窓の外を見る。

 そこには私たちの未来を祝福するかのように、青空が広がっていた。






完結となります。

最後までお読み下さいましてありがとうございました。

楽しんで頂けたら、評価・感想等お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遅くなりましたが、完結おめでとうございます\(^o^)/ 辛い生い立ちのニーシャでしたが、幸せになって良かったです(>_<。) 皇帝、3馬鹿など良い人たちに巡り会えましたね。 ご両親と…
[良い点] 完結、おめでとうございます。 ニーシャの境遇が悲惨過ぎて、あまりに暗鬱な描写だと続きを読むのがつらくなってしまいそうなものですけど、そうならずについ続きが読みたくなる匙加減はさすがです。…
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