始まり?
「疲れた・・・」
人気が無い電車の中でポツンと一人の男が電車の座席に座り呟いている
その男は仕事の帰宅途中に最後の電車をギリギリで乗ることができ一安心している
「何とか最終便間に合ってよかった~」
周りに誰もいないからか独り言をつぶやき体を弛緩させ伸びをしていた
「はぁ~明日も仕事やりたくねぇから世界滅びねぇかな」
意味もない妄言を呟きくだないとは思いつつ日頃の仕事で溜まった愚痴をこぼす。
男はいつも通り変わらない日常が待っているとはわかりつつ新しいことが起きることがないかなと
しかし自分からは何かを変えようとは強く想っていない
変わらない日常を送ることに不満を持っていても変わらない日常を良しとしている
そんな自分を好きでも嫌いでもない普通と呼んでもいい男だった
電車が目的の駅に着き男は電車から降りて自宅へ向かって歩いていく
深夜に自宅への帰路を歩いていく男の足取りは早いものだった
家に帰ったらすることを考えて思考に耽っている男の道を電柱の明かりが照らしている
「帰ったらまず風呂だな」
男が自分家の古いアパートに帰ってすることを呟いてもうすぐ家が目視できる角を曲がろうとした
「・・・・がぁっ・・・っ!!!」
角を曲がろうとした男の心臓が急に鷲掴みされたように締め付けられた
男は声を出せず急な胸の・・・いや心臓の痛みにその場で尻もちをつく
胸を押さえながら周りをみるがこんな時間人など歩いていることもなく誰も見えなかった
苦しい痛みを受けながら携帯をポケットに仕舞っていたところから取り出そうとするがうまく持てずに落としてしまった
男は苦しみ中から解放されようとして藻掻いて行動しようとしたが痛みで思考がまとまらない
だんだんと痛みだけはっきりしているが力が抜けている体に気付き
世界がゆっくりとしてきた感覚に包まれる
自分に死が近づいているのはっきりと感じてしまった
「嫌だ・・・死にたくなぇっ」
痛みと絶望でいつのまにか泣いてぐしゃぐしゃになった顔で声を発したが嗚咽といっしょに悲しく響いた
やがて身体の力が完全に入らなくなり男は倒れた
倒れた男は体は動かないが痛みが続いている
痛みで絶望に染まった思考
男の目の前は真っ暗にならなかった
急に痛みがなくなり身体が自由になったが周りは光に包まれた
わけのわからない光景だったが胸の痛みに解放された男は安堵していた
しかし痛みがなくなり自由になった身体を起こして周りを見てみるがまるで光しかみえない
眩しいと思うはずだが何故か光の世界で目を開けている
不思議な場所になぜいるのか?自分がさっきまでいた所とは違うのか?
男が思考を始めた瞬間声が聞こえた
「あなたは死にました。これから異世界に転生してもらいます」
「はっ?」
思わず聞こえた声にあまりに理解できずこえを出してしまった。
いや転生や異世界というのは言葉や意味として知っているし何度も妄想してきているが自分が死んでしまったことやその異世界転生者に選ばれた状況がわからない
しかしそんな思考を無視するように声がつづく
「これから・・・・・かいに・・・・てん・・・・スキルは・・・・そして・・・・あなたの・・・・・
『死なない』・・・それが能力・・・干渉さ・・・・」
ひどく聞き取り辛く詳しく何を言っているかわからない
しかし最後ははっきり声が響いた
「探してそして楽しんで満足のいく生き方を」
その瞬間世界が眩しく感じて目を閉じた
あまりに唐突で光に包まれたような感覚を感じながら思考は
「赤ちゃんからスタート?それとも意識覚醒か?」
どう転生されるのかあまりに現実離れした出来事により転生の事実のみ吞み込んで考えていた
やがて包まれたような感覚がなくなったように感じ眩しくなくなった目をあけた
知らない場所だった
周りには木しか見えなかった
そして自分を見た
スーツだった。不思議な出来事が起きる前と変わらない格好をしていた
男は空を見上げた
「いみわかんねぇ」
そうしておれの転生物語が産声をあげた瞬間の言葉だった。






