~ニート卒業~
朝7時。超晴天。
新しい俺の門出に相応しい天気だ。
「バッグ持った。財布もスマホも入れた……おっと」
鏡の前に立って身だしなみをチェックする。
「うんっ!剃り残し無しっ!」
七三ピッチリ。眉毛も整っている。
鼻毛出てない!ヒゲも全部剃ってツルツル。
もうニート時代の汚い茶髪ロン毛には戻りたくないな。
「……母さんが選んでくれて父さんに買って貰ったネクタイ」
スーツにつーか。俺にバッチリ似合ってるな。
アイロンでパリっとさせたYシャツって何でこんなに気合いが入るのかな?
大人の男の本能なのかもしれない。
「いよっしっ!行くかっ!」
大学卒業してから13年もニートだったんだ。
正直緊張はしている。
でも座り込んで腐っていくより。前に進んで傷つく方がよっぽどいい。
13年の『暇』に比べたらどんな忙しい職場だって天国さ。
「いってきます!」
今日は俺の35才の誕生日。
ニートとは34才までの無職の事。
つまり今日から俺は正式に無職だっ!
玄関の扉を開けた。
さっきまで晴れてたのにどしゃ降りの雨だ。
「天気になんか負けるかよ!」
今日もパチンコ頑張るぞ!
並んでいい台取るんだ!
誕生日だから絶対勝てる!
俺は駅前でパクった自転車に股がった。