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7 熱を出しました

 あの後、他に気になったお店に行こうと意気込んでいた私をずうっと無言のヘルムが首を左右に振って、アズをチラリと見てアイコンタクトをしていた。それが気になって首を傾げた私に近寄ったアズが額に手を当てて。


「お嬢様、熱を出してます」


 ……えっ?

 そんなわけないじゃない。

 私、全然平気だよ?

 という訴えを口にする前にヘルムが踵を返してしまって屋敷に帰って来させられた。

 ムゥッと唇を尖らせている事すら私は気付かない。中身が四十五歳プラスされるはずなのに。そんな子ども染みた表情をしている時点で、もうおかしいことに気付けなかった私は、ヘルムが私を下ろした時にようやく異変を感じ取った。

 端的に言えば。


「あれ?」


 フラッとひっくり返りそうになってヘルムに支えられた。


「やっぱり。俺はずっと抱っこしてましたからね。身体が徐々に熱くなって来たことに気づきましたよ。お嬢様、自分で言ってくるかなって思いましたけど、初めての経験に興奮していて自分では気付かなかったみたいなので、連れ帰って来ました。お嬢様、自己管理って言葉を知ってますか」


 言われたことは理解出来るのだけど、いかんせん身体が思う通りに動かなくて。其方に意識が傾いているからか、ヘルムの問いかけに答える気力も湧かず。


「あー、仕方ないですね。ベッドに行きましょう」


 ヘルムが大きく溜め息を吐いて抱き上げてベッドまで運ばれて……そのまま私は意識を失いました。




 次に意識が浮上したのは、夜の帷が落ちていた頃でした。

 目が覚めてぼんやりと辺りを見回し……此処が何処なのか考えて、屋敷であることを思い出しました。

 ベッドサイドのテーブルの上にあるシェードランプがオレンジの光を照らしていてその優しい光にホッとします。身体が熱くて喉が渇き起き上がろうとしましたが身体に力が入りません。上半身に力を入れて両手をついて起き上がろうとして腕の力も入らないので、ベシャリと何かに押し潰されたような形になってようやく氷枕が頭の下にあったらしい事に気付きました。

 既に氷ではなく水みたいでタプンと音はしたし、温くなってますけど。


 コンコン


 微かにドアのノック音が聞こえて来てうつ伏せでベシャリとした格好から何とか顔をドアへ向けると同時に入って来たのはアズとアズのお母様であるヒルデで。


「お嬢様、目が覚めました?」


 慌てて駆け寄って来るアズ。ヒルデは氷枕の替えを持って来ているみたい。アズが私の格好を見て察したらしく。


「起き上がろうとして力が入らなかったんですね」


「うん……」


 返事をしたけど、自分でも驚く程声が擦れていてアズが私の身体を起こすと同時にヒルデがサッと氷枕を替えて、そこへ私を寝かすとアズはベッドサイドのテーブルの上から水差しとコップを取って水を注いで私に飲ませてくれた。

 かなり喉が渇いていたのかゴクゴクと飲み干した私は、ホウッと息を吐き出してアズに礼を述べる。


「お嬢様、無理し過ぎたのです。今夜は母と交代で付き添いますからよく休んで下さいね」


「うん。心配をかけてごめんなさい。でも、ありがとう」


 アズとヒルデに言えば、ヒルデが手を額に当ててくる。氷枕を持っていたからなのかひんやりとした手が気持ちよくて擦り寄る。そんな私の行動にクスリと笑って頭を撫でながら「お嬢様、もう少し寝ましょうね」 と優しく歌うような声で言葉を紡いで。

 その言葉なのか声なのか。

 誘われるようにトロトロと瞼が閉じていき、また眠りの世界に引き込まれるように意識が沈んだ。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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