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4-2 乗り込んで来た

怪我の描写あり。苦手な人は5-1までお待ち下さい。

 振り払った拍子によろけて倒れ込んだ異母妹。狭い小屋の中なので倒れた先はベッドの足。私が寝起きしているベッドの。結構勢いよくぶつかったから足が折れてしまった音がした。元々小さくて頑丈な木を元にしたベッドとは違って日本人だった頃の記憶を持った状態で見ると、おそらく端材の木を組み立てた代物。でも作ってくれたのは、あの父から命じられた使用人ではなく、庭師だったから良心的に造られたのだと思う。だからこそここまで持ち堪えてくれたのだろう。


 造ってくれた庭師には悪いけど。

 でも髪の毛をブチブチ引っこ抜かれるのは結構痛いのよ。だからつい振り払っても仕方ない。そして狭い小屋だもの。倒れ込んだ先がベッドでも仕方ない。そして元が脆い木だから、勢いよくぶつかった異母妹のせいでベッドが壊れてしまうのも仕方ない、と思う。


 結構大きな音がしたからか。

 ドアを更に蹴破る勢いで二人の侍従と一人の侍女が入って来たのを視界の端で捉えた。ドアを蹴破られたら誰が直してくれるというのか、と頭の何処かで冷静に考える自分がいながらも異母妹から目を離さない。


「アンタ! この私に逆らうなんてどういうこと⁉︎ アンタはお父様に嫌われているんだから大人しく私のストレス解消になってなさいよ!」


 そう言いながら起き上がった異母妹は、多分興奮しているからか痛みを感じてないのだろう。怪我をしているのか知らないけれど、それを案じてあげるほど私は優しくない。


「父に嫌われていようが、私は姉よ! 今までは追い出されるのが嫌だから逆らわなかっただけ。シッティ・ラテンタール、あなた、父の実の娘でも、戸籍上は養女なの、知ってる? 私とあなたじゃあ法の上では私の方が立場は上なのよ!」


「なんですってぇ⁉︎ 何が立場が上よ! アンタなんかお父様に嫌われて私のお母様にも嫌われているだけのくせに! アンタなんか居なくても問題ないのよ! お父様に言って追い出してやるわ! オズバルド・ロイスデン様との婚約は私が貰ってあげるから!」


 初めて言い返されたのが気に入らないのか、そんなことを言いながら立ち上がって私を突き倒して来た。年齢は変わらないけれど体格は圧倒的に異母妹の方が上なのは、食べている物が違うせい。私は他人の前に出る時はドレスで身体が隠れてしまうけど腕も足も細いというより骨と皮の間に辛うじて肉がついているような体型。


 暴力を振られていたから痣もあちこちにあるし、オズバルド・ロイスデン公爵子息には気付かれていないと思いたいけれど、父と義母からの暴力は力任せなので怪我もしょっちゅう。そのせいで右足は引き摺ってしまうし、長く立っていられない。足に負担がかかるので疲れてしまうのだ。

 更に右手は小指が伸ばせない。骨折しても治療されてないから、アズが父達の気が逸れてから何とか治療をしてくれたものの、一日は確実に放置されたので治療が遅くなったために伸ばすことが出来ない指になってしまった。左手は全体的に常に痺れているので長く物を持っていられない。


 謂わば虐待されて育ったのが私、だった。

 あの小説でオズバルド・ロイスデン公爵子息様の婚約者が若くして亡くなったというのが私、であるならば。この現状だから、いつ死んでもおかしくない。

 病気じゃない。

 病気が無いという意味では健康優良児。

 でも。

 肉の無い骨と皮のような身体に怪我が治り切らないこの身体。そんな身体でこの家に居たらいつ死んでもおかしくない。

 多分生きている限り、この身体と一生付き合っていかなくてはならなくて。だからこの家から追い出されても生きていける自信はないけれど。

 でも、生きたい。

 生きたいというのは、本能みたいなものだと思う。

 こんな身体で生きていけるのか分からないけど。


 生きたい。だからこの家から、追放されたい。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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