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4-1 乗り込んで来た

今話・次話・三話目。暴言、暴力描写あり。苦手な方は5-1までお待ち下さい。

 色々と思い返すと、日本人だった頃とは百八十度違う状況にゲンナリした。記憶が戻る前は暴言も暴力も“仕方ない”と諦めていた。だって、私は母に似なかった悪い子だから、と。実際、父からは「お前の母に似ていない不細工がっ! ああ、こんな不細工を産んだエメが可哀想だっ!」 と罵倒されていた。エメとは亡き母の名前・エーメリーの愛称。私はお母様を可哀想にしてしまった悪い子だと思い込んでいたから、暴言も暴力も“仕方ない”と諦めていた。それも二年前までの話。引き篭もれば暴言も無ければ暴力も振るわれない事に気づいてからは、トイレ以外はこの離れという名の小屋から出た事が無かった。だから引き篭もる事で何もないことに、諦めるというより安堵していた。


 でも。

 日本人で四十五歳で死んだだろう記憶が戻ってから考えてみればあまりにも理不尽だ、と気づく。


 私の顔は父似なのだ。

 つまり自分の顔が嫌いだと父は言っているわけで。

 そんなに嫌いならば、整形すれば良いのだ。……あ、そんな技術は無いかもしれないか。だが無いなら作ればいい。そんな発想も無いなら鏡を破ればいい。

 というか、自分の顔が嫌いだからってそっくりな私に八つ当たりする事がおかしい。だったら結婚しなければ良かったのだ。結婚しなければ、子を作る行為をしなければ、私は産まれなかった。


 そう考えれば理不尽だし愚かとしか言えない。

 八つ当たりする時点で子どもが自分の思い通りにいかない事に対して泣き喚いているようなものだ。

 向こうが子どもなのだ、と思えば……いや、思えるわけがないし、思っても“じゃあ仕方ない”と割り切れるわけはない。


 だって痛い思いをした。悔しい思いをした。怒りの気持ちもある。……悲しい思いは半分以上。なんで? なんで? なんで? という絶望は、ずっと。

 でももう、これ以上は黙ってやられる気はない。

 暴言を吐かれようと暴力を振るわれようと、黙っている気はない。

 きっと言い返せば更に酷くなると思う。

 痛い思いをされてもやり返す。やり返したらもっと酷くなると思う。それでも。


 アイツらだって痛い思いをすれば良いんだ。


「ちょっとっ!」


 決意したのと同時に異母妹が現れた。

 こっちに来る事なんて今まで一度もなかったのに。

 ドバンっ

 と大きな音を立てて小屋のドアを開けてきた。まぁ鍵なんて存在はこの小屋にあるわけないから仕方ないのかもしれないけど、壊れそうな勢いだ。


 異母妹……シッティ・ラテンタール。父と義母の娘だけど養女として迎えられた半分血の繋がった娘。義母そっくりな薄桃色の髪と同じ色の目をした見た目だけは可愛い少女。日本だったらアイドルグループでセンターを務めるような可愛さはある。ちょっとぷっくりした唇と垂れ目がちで鼻は高いというより小さめだけど、それが全体的に見て可愛らしいと表現は出来るだろう。性格は我儘で癇癪持ちだけど。


「アンタがなんでオズバルド・ロイスデン様と婚約することになってんのよっ!」


 ああ、そのことを言いに来たのね。

 この子……我儘で癇癪持ちだけど、マナーに知識に教養の家庭教師を何人も付けているんじゃなかったの?

 家庭教師達から王命の意味を学んでないのかしら?

 なんで、も何も「王命だから」 でしょうに。


「王命だなんてっ! 国王もバカなんじゃないの⁉︎ こんな不細工な女とオズバルド・ロイスデン様のような見目麗しく凛々しいお方が釣り合うわけないじゃないのっ! アンタ、私にオズバルド様を譲りなさいよ!」


 国王陛下に対して不敬だと思わないのかしら。思わないから言えるのね。そういえば、不敬は罪になるんだっけ?


 そんなことを考えていた私は多分異母妹から見たらボンヤリしているように見えたのだろう。鼻を膨らませてフン、と言いながら両手に力を込めて私を押し倒し、直ぐに両手で髪をギリギリと引っ張る。ブチブチッと音がしているから、結構髪の毛が抜けているらしい。


 カッとなって異母妹のその手を振り払った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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