2-2 間話・コレは説教案件ですね〜アズ視点
お嬢様がヘルム殿に抱き上げられたまま、という部分は気にかかるが、お嬢様が下ろして欲しいと言っても下ろさないので取り敢えず放っておいて家の中を案内。
お嬢様とお茶を飲むと疲れからか、眠そうになってしまい主人の部屋にヘルム殿がお連れした。よく眠っているのでそっと部屋から出て食堂へ戻る。
「ヘルム殿、何故お嬢様を下さなかったのです?」
「俺は侍女殿がネスティーちゃんを大切にしてることは分かっている。でも、それと自分の目で安全を確認するのは別。護衛というのはそういうものだ。本当は先に確認したかったがそんな時間は無かった。だから俺が安全だ、と判断出来るまではネスティーちゃんがどれだけ望んでも下さなかった。それが公爵様のご指示の家でも」
成る程。
私がお嬢様に心から仕えているのと安全は別、か。そういうことならば仕方ない。
「ところで、公爵様のお話では、ヘルム殿がお嬢様の専属護衛になられるとか?」
「うん。別に俺はオズバルド様付き、というわけではないし。ネスティーちゃんが俺を嫌っていたら、別の人だったと思う」
「先程からその“ネスティーちゃん”というのが気になるのですが」
伯爵家では“ご令嬢”と呼んでいたのに。
「ネスティーちゃんが令嬢じゃないから、その呼び方はおかしいと言うからね。でも、富裕層の平民の娘、という事なら侍女殿と同じで“お嬢様”って呼ぶかな。それと侍女殿、俺と夫婦にならない?」
「は?」
あ、思ったよりも低い声が出ました。
「怖っ。えー、そんなに俺のこと嫌いー?」
「お嬢様のことを考えて下さっているのは分かるので、そこは評価しています」
「それだけ⁉︎」
「他になにか?」
「いや、いいけど。夫婦って言っても仮初のつもりだけど、嫌ならいいや。ただ、侍女に護衛に侍女の母親ってどんな関係か勘繰られるのが面倒なだけ」
成る程。確かに勘繰られそうではありますが。
「まぁ母には乳母役をやってもらうつもりですし、乳母として信頼している母の娘が侍女をやっていても何も問題ないでしょう。護衛であるあなたも長年勤めていたから、で済みませんか?」
「普通は、ね。ただ両親を亡くした深窓のお嬢様、というのは世間から同情や憐憫と同じくらい付け入る隙がある、と見られる。勘繰る奴は俺が主人であるお嬢様を狙っている、とも見るからさ」
ああ、そういう……。
でもまぁ。
「お嬢様は十二歳ですし、見た目は更に幼く見えますからね。チラリとお嬢様を見たら、そんな下種な勘繰りは止めるでしょう。あとお嬢様はご両親を亡くした悲しみで痩せている、という事にして片時も離れなければ良いと思います」
「ま、その辺が妥当だね。じゃあこの話し合いを公爵様に一度報告してくる。で、直ぐに帰って来るよ」
あっという間に去って行ったヘルム殿は風のようで、ちょっと驚く。ティーカップが残されているのを見て、幻ではなかった、と納得。それくらい動きが早かった。
で。
本当にあっという間に帰って来た。
えっ、公爵家からこの領地までの距離って?
などと思ったら、何のことはない。
公爵様が近くに滞在していたらしい。それは早く帰って来る。公爵様、そんなにお嬢様が気になりますか。
「まぁ、公爵様、お嬢様のこと気に入っているからね。なんだっけ? お嬢様の血? ってヤツ以外にお嬢様自身がお気に入り。だから肩入れが凄いんだよね」
とは、ヘルム殿……お嬢様を見習って“さん”でいいか……ヘルムさんの談。
「それはそうと、背後のお方はなんで此処にいらっしゃるんでしょうかね」
グッスリ寝ていたお嬢様の様子を見に行こうとしつつ、私はヘルムさんについて来たらしい、オズバルド様を見た。
「あー、お嬢様が気になるって、公爵様を追いかけてこっちまで来て、そんで俺が報告しに戻ったらそのまま着いて来た。すまん。公爵様も何も言わなかったから置いて来られなかった」
「済まない。だが、婚約者だし。気になったのだ」
神妙な顔つきで軽く頭を下げるオズバルド様に溜め息を付き、滞在を了承する。まぁ説教しておきたかったし、いっか。取り敢えず明日の朝まで休んで下さい、とヘルムさんと同室で適当に部屋を当てがって、私はお嬢様の様子を見ることにした。
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