表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/225

3ー3 私の現状は

 母に似てない。


 ただそれだけで。


 父に似ている。


 ただそれだけで。


 父は私が気に入らない。

 だから私が視界に入ることを酷く厭う。だから私にお金をかけるのは嫌だからアズに私を教育させる。

 政略結婚の駒にするために。ラテンタール家は伯爵位ではあるけれど、物凄く裕福ではないし、筆頭の座は別の伯爵家に既に譲っている。筆頭というのは、資産もあるだけでなく王家に信用されている家でなくてはならない。必ずしも王城勤めをしている必要はないが、元老院に所属している貴族達の中でも同じ爵位の家々の意見を取り纏めが出来る、発言力の強い立場が筆頭ということ。


 元老院は貴族の当主ならば男爵位から公爵位まで全ての者が所属する。何故なら国王の助言役という機関であるから。元老院から出て来る問題点や意見は国王といえど、簡単には退けられない。そういう機関。

 これに対して、近年平民の中でも取り分け裕福な富裕層と呼ばれる者達を国王陛下は注視している。抑々国は民がいなければ成り立たない。民が在ってのものだから平民の意見も取り上げる機関を作っていた。これを議会という。……多分、小説の世界だからというのも関係しているのかもしれないけれど。いや、此処は小説に似た世界、かも。分からないけれど。似ていて違うかもしれない。ううん、今はそんなことはどうでもいい。


 それより。

 我が家は裕福ではない。筆頭伯爵家という名誉もない。だから何処かの良い家柄と婚姻を結んで援助してもらおう、という父の考えは分からなくない。

 貴族とは家同士の契約で政略結婚をするものだ。恋愛は結婚してから夫婦間で育むか、他所で育むか。

 その考えも否定しない。

 ただ嫁ぐのであれば持参金といって、嫁に行く娘が、若しくは婿が、嫁ぎ先で金で困窮しないようにある程度の生活費を持たせるのが一般的。持参金を持たせられる程のお金が無いならば、持参金が無くても構わないと言えるような家との縁談を組むか、娘や息子を働かせるしかない。

 そして父は持参金を持たせなくてもいい、と言ってもらえるような縁談を組んで共同事業でも持ち掛けて資金を恵んで貰おうと考えている。尚、その資金が本当に事業に使われる保障は何処にもないけれど。


 そう。父は、そんな縁談を私にする予定だった。だから嫌々ながら私をこの伯爵家に置いている。持参金無しで嫁がせられ、且つ支援もしてもらえるような家との縁組を考えていたはず。

 それなのに。

 王命が出てしまった。

 きっと父は歯噛みをしているだろう。

 持参金無しということは相手方は相当お金がなければならず。さらに支援も見込める家ならば尚更金がある家。

 公爵家はその条件には合うだろうけれど、それはオズバルド様が跡取りならば、だろう。三男との縁談など何の旨味も父には齎さない。


 だから王命を嬉々として、受け入れた……と私は思ってない。


 何しろ、自分に似た娘は、可愛くもなければ美しくもない平凡な容姿。それが嫌でうっかり私が父の視界に入った瞬間には平手打ちされる。お前など顔を見せるな、という罵声と共に。父は自分の容姿が平凡なことにコンプレックスでもあるのだと思う。だからそっくりな私に苛つく。だから罵声と平手打ちをする。

 そんな私が父に何の旨味も齎さない縁談を公爵家との縁が出来たとしても、喜ぶわけがない。異母妹には持参金を持たせても私などに持たせる金は無いと考えているような人だから。実際、罵倒される時には決まってそう言っていたから本音のはず。


 尚、倒れ込んだ私を可哀想に思って駆け寄り介抱するフリをして、長い爪を立てて手や腕や足などを抓って来るのが義母。お義姉様が可哀想、と父に取り成すフリをして嘲笑った上に慰めるフリをして長いドレスに隠した足で背中を蹴ってくるのが異母妹。


 仲良く私を虐めてくるのだから、まぁある意味円満な家族なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ