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3ー2 私の現状は

 私の普段の服装は多分侍女のアズの方が質が良いだろうなって思う古い綿のワンピース。そして薄いので多分伯爵令嬢が着る類の物ではないと思われる。尚、アズがコソコソと布を継ぎ足してくれて私の成長に合わせたツギハギワンピース四着を着回している。コソコソなのは、仮令(たとえ)端切れであっても私に使用するのは無駄遣いに思うのが父と義母と異母妹の思考回路。端切れなのにね。


 尚、一日の始まりは手足を曲げて寝ていても無意識に伸ばせば足はベッドから投げ出されてしまい、それで毎朝目が覚めるのだ。

 さらに食事は残念ながら、義母の意向により肉どころか野菜の一つすら入ってない具なしのスープのみを供与される。三人以外の使用人は義母の管轄だから、料理長も当主の父にも見向きされない私が栄養失調になろうと構わないみたいだ。というか寧ろ全く作らないでアズが作ってくれる方が余程栄養たっぷりの食事になるのだが、当然、最初の頃はそうしていてくれた。で、料理長にバレて「無駄遣いだ」 とアズが叱られたようで、以来料理長が作った具なしスープのみが私の朝と晩の食事だ。

 いくらアズが宰相補佐からの紹介でも厨房では料理長の方が権限は上だから叱られても仕方ない。厨房以外だったらアズの方が立場は上なんだろうけど。


 ちなみに執事長やアズも料理長のそういった態度に口出しがしづらい。あまり口出しをして、父と義母を怒らせると解雇が出来なくても私から一定期間、引き剥がせるから。使用人への罰を与えるのは使用人の管理を司る義母の権限で、罰と言われて引き剥がされるのは地味に辛い。


 引き剥がされるというのは、つまりまぁ執事長も表立って庇うことは常にしていないし、庭師も普段は関わらないので圧倒的にアズ一人が私の側に居る期間を減らされること。たった一回だけだが確か十日はアズと引き離されて本当に一人だった。あの時は執事長が父に上手く取り成してくれたので十日で終われたけれど、あれ以来慎重になっている。だから執事長もアズも庭師も口出ししない。

 そんな私の食生活だからお腹は空くがアズがこっそりと自分に供与されたパンを半分与えてくれることが有難い。全部与えて来ようとしたから、それなら食べない、と断ったら半分にして持ってきてくれる。それは有り難く頂いている。


 それから父は義母によく似た異母妹を政略結婚の駒にする気がないため、私を駒にするべく私には厳しく礼儀作法や知識教養を与えてくる。

 もちろん、父自身の手で施されるわけじゃなくて、知識教養を教えてくれるのも礼儀作法を教えてくれるのもアズだ。何しろ宰相補佐直々に伯爵家の侍女として紹介されたアズである。元々はとある伯爵家の令嬢という身できちんと教育を受けていたらしいけれど。


 アズのお父様が早くに病死されお母様が気落ちしている間にアズの叔父にあたる人が伯爵位を継いでしまい、アズとお母様は追い出されてしまった。行く宛の無い母娘は肩を寄せ合い慣れない平民暮らしをしていたそうだったが、宰相補佐……つまり私の亡き母方の祖父の親友様が行方を探し出して保護され、宰相補佐の家で更なる勉強や礼儀作法を叩き込まれて侍女生活を送るようになった、とか。私はそんなアズから教わっている。


 尚、アズのお母様は宰相補佐の家でやはり侍女生活を送っているらしい。アズのお父様が伯爵だった頃、宰相補佐と親交があったそうでその縁でアズのお母様とアズのことを心配していたそうな。つくづく人の縁って大事だよね。


 小説の中では多分私だろうオズバルト様の婚約者は、死んでしまっただけの描写……一文しかなかったけれど。実際の私の現状を振り返るとまぁ病死してもおかしくない状況だよね。まともにご飯食べられてないし、普段閉じ篭もっているし。閉じ篭もっているのは、うっかり離れと名ばかりのこの小屋を出てウロウロしているのをアズ達以外の使用人に見つかれば、即刻義母と異母妹のどちらか、或いは父が居れば父に報告されて使用人の手によってぶたれたり蹴られたりするか、異母妹に水やらお湯やらを掛けられるなどの嫌がらせを受けるか、なので、閉じ篭もっている。


 父と義母と異母妹の誰かに報告した後で許可さえ貰えれば使用人達は、ストレス発散とばかりに私に暴力を振るうのだ。許可はないと、一応私は伯爵令嬢だしね。

 使用人達は、父が義母と異母妹の言いなりなので、義母と異母妹の機嫌を損ねないように常に行動しなくてはならないので、前世の記憶が蘇った今は、完全にストレス発散で私に暴力を振るっているんだなぁ……と理解してる。理解しても怖いし痛いし納得してないから、自衛手段で閉じ篭もっているだけ。離れから出ないで使用人達に見つからなければ、父達も使用人達も態々此処には来ないのが救いだ。

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