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1-2 交流目的、ですか?

「取り敢えず、お嬢様のお支度を終えましたらまた様子を見て来ますね」


「うん、お願い」


 色々と言いたいことだか尋ねたいことだか、あるはずのアズがそれ以上は口にしないで切り替えるように様子を見てくる、と提案してくれたので素直に頷く。

 昨日の今日って……早い、の一言で片付けられることではないよね? 使用人一人を調査する……というより、国王陛下からラテンタール家を探るように言われているような気がする。

 もし、使用人ではなくラテンタール家を調査する、ということなら……嘘を吐かれたわけだけど、まぁその辺は時には必要、という嘘だと思うことにして。

 ……でもそうなると、私の許可でよかったのかな。一応当主であるラテンタール伯爵の許可を得る方がよかったのでは?

 ああでも、ラテンタール家を調査するのにあのラテンタール伯爵の許可なんて得たら、見られたくないものを処分しそうだよね。


 もしかして、こんなに行動が早かったのって、証拠隠滅を恐れたから……とか?


「では、少し見てきますね」


 いつの間にか私の支度……と言っても、オズバルド様が来ていることを考慮して、一着しかないドレスを私に着せ終えたアズが、様子を見に出かけて行った。

 アズが戻って来るまではやる事がないので、いつも通りこの中の箒がけをやっておこう。

 ドレスを着ての箒がけは初めてだけど、まぁ毎日やってるから動けるよね。離れという名の小屋。ただでさえボロいのに、汚れているのはさらに嫌。凹むよね。だからせめて埃だらけにならないように箒がけは毎日行う。三日に一度は雑巾がけと窓拭きもする。

 ……そういえば、一応妹であるシッティが来た時に、ドアを勢いよく開けたからなぁ……。壊れて……いない、よね?

 第一壊れてたらここから出入りする時に気づくよね。だから壊れてないね、うん。それにあれから何日も経ってるから、今頃気にしても仕方ないし。

 じゃあ窓を開けて箒がけをしちゃおう。


 ボロいので勢いよく開けると窓枠が外れてしまいそうなので、そっと開ける。


「何をしているんだい?」


 開けたら、知らない人が立っていた。


「誰?」


 尋ねた私。

 男の人は、茶髪に茶色の目で日焼けしているのか肌が浅黒い。……平民だろうか?


「ああ、ええと、ヘルムって言って、オズバルド・ロイスデン公爵子息様に仕える護衛」


「ああ、オズバルド様の」


 平民も貴族も関係なく実力があれば雇いそうだもんね、公爵様って。という事は、ヘルムさんは実力があるんだ。


「それで、君は? 何をしてるの?」


「これから箒がけをしようかなって」


「箒がけ? その格好を見ると使用人ではないよね?」


 多分、ドレス姿だから、だよね。


「そうね。使用人ではないわ」


「……君、もしかして、ネスティー・ラテンタール伯爵令嬢だったり……する?」


「もしかしなくても、そうだったりする」


「えっ? 嘘だろ⁉︎ なんでご令嬢がこんなボロい小屋に居て箒がけするの⁉︎」


 茶色の目が驚愕の色を載せている。うん、まぁ気持ちは分かる。でも。


「それはあなたに関係ないよね? オズバルド様の使用人ということは間違いないだろうけど、本当に護衛なら、オズバルド様から離れてこんな所でフラフラしていないと思う。だから護衛って嘘でしょ? 普通は護衛対象から離れないはずだもの」


 オズバルド様の使用人は本当。でも護衛は嘘だと思う相手に正直にアレコレ話す義務はない。

 ヘルムさんは面白そうに目を輝かせて、ニコニコと笑う。


「うん、護衛対象から普通は離れないよね。だからご令嬢の言うように護衛そのものではないよ。護衛の仕事もしているけどね。十二歳って聞いてたけど頭が良いんだね!」


「褒めてくれてありがとう。護衛の仕事も、しているってことは全くの嘘じゃないってことか。じゃあ別の仕事の方で、この小屋に来た?」


「やっぱり頭が良いね、ご令嬢。そう。別の仕事の方でラテンタール家のあちこちを見ていて、この小屋が気になって来てみた。まさかご令嬢が居るとは思わなかったけど。それでご令嬢、この小屋は何?」


 今度は事実を話しているらしいヘルムさん。まぁ秘密でも何でもないから話してもいっか。


「小屋というか、名目上は離れ、ね。私の部屋」


「……は?」


「私の部屋」


「いやいやいや? 何の冗談?」


「冗談じゃなくて部屋。ヘルムさんだって、窓を開けたから中が見えてるでしょ?」


 ヘルムさんは、マジマジと中を見て、嘘だろ……と呆然している。中々に平民出身だろうヘルムさんでも衝撃的らしい。まぁ、そうだよね。剥き出しの床に小さなベッドがどーんってあるからね。

 あと小さな一応クローゼット。

 後はこの窓からちょっと覗いただけだと見えないんだけど、覗き込むと窓の奥に申し訳程度のお風呂があるだけだし。お風呂は毎日入れない。だって日本みたいに蛇口ひねって水が出て来ない。

 この世界、ちゃんと蛇口だってあるし、ひねれば水も出るよ。もちろんお湯も蛇口ひねれば出てくるの。画期的だよね、小説の世界様々だよ!

 でも。

 私の部屋の風呂には蛇口そのものが付いてないから。

 なんでお風呂というか風呂釜? があるのか、それはあのラテンタール伯爵の思考が分からないので知らない。

 蛇口付いてないのにお湯も水も出ないからね。だから二日か三日に一度、アズかクリスがこっそりと私を使用人達が暮らす別棟に付いている風呂を使わせてくれる。

 他の使用人達に見つかるとラテンタール伯爵達に告げ口されちゃうからね。七歳の頃にアズが一緒の時に見つかって、私は叩かれてアズは二週間、本邸から出られなくて。

 クリスとフォールが助けてくれなかったら、餓死寸前だったと思う。

 だから慎重に慎重に、お風呂を使わせてもらってる。

 だから多分、そんなに臭くないはずなんだ、私。


 おっと、そんな回想をしてる場合じゃなかった。

 折角、このヘルムさんが居るんだ。大事なことを尋ねなくては。


「ところでヘルムさん。オズバルド様は、何の用ですか?」


 まだ呆然としているヘルムさんに、コレを尋ねました。だって、昨日の今日でどんな用件で来たのか気になりますからね。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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