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2ー1 書籍の内容を思い出してみる

 抑々、あの作品のオズバルドが冒険者になる切っ掛けってどんな内容だったかなぁ。


 執事長にオズバルド様の見送りを頼んで自室に戻り、デイドレスをアズの手を借りて脱いだ後、アズを下がらせた。下がらせたのはアズの居場所が無いから本邸に戻したということだ。

 アズは私の専属侍女で私がこのような目に遭っていることに憤りを感じてくれている三人のうちの一人。このような目というのは……ここ、自室という名の離れ(という名のトイレと風呂が付いた一部屋の小屋)のこと。


 それだけではないけれど。先ずはこの状況を言う。アズが、いつぞやポツリと「私に与えられた部屋の方が格上なことが申し訳ないです。お嬢様、私の部屋に参りませんか?」 と申し入れてくれる程、この状況は伯爵令嬢という地位の私には、そぐわないのだろう。


 もう私の身体には合わなくなって来た小さなベッドに転がってぼんやりと思う。


 いや、今は自分の状況を振り返る場合じゃないな。

 彼、オズバルドのこと。小説では彼が主人公なのは確かだし、冒険者になることも覚えているけれど、仲間が居たのか、とか。何が切っ掛けで冒険者になったのか、とか。そういう細かい内容まで思い出そうとしていたんだった。


「そういえば……主人公が冒険者になって、最初は一人でコツコツと依頼をこなしていたけれど、薬草採集とか街のゴミ拾いとかなら兎も角、時には他人と力を合わせることもある、とかで……」


 そう。バディ(相棒)とかパーティー(仲間)とかを組む相手を見繕うようにギルドから言われて、紹介されたパーティーに冒険者になる切っ掛けは何か尋ねられたことから、彼が回想するシーンだ。

 この時は結局、彼はパーティーの質問に家族と縁を切って自力で生きていきたい、とだけ話すわけだけど。冒険者になった切っ掛けを思い出す話は、1巻の前半のハイライトだった。


「婚約者が病死したことが切っ掛け、で……その婚約者の手紙を侍女から渡され目を通したことが、貴族の柵を抜け出すことになった、だっけ……」


 そう。その手紙には、


 “短い間でしたがあなたと婚約してあなたと過ごす時間だけが私の唯一の幸せでした。あなたはご自分の人生を自由に生きたいのではないでしょうか……。貴族である事が窮屈に見えました。どうか悔いのない人生を歩まれて下さい”


 と書かれていて、婚約者に貴族である事に窮屈を感じていた事を見抜かれていた羞恥心と、自由に生きたい本心を後押ししてくれた事に感銘を受けて、成人と同時に貴族籍を抜けて平民になったのだった。どこかに婿入りもせず、父親が持ついくつかの爵位も受け取らずに平民になり冒険者として生きることを、オズバルドは選ぶ。


 同時に、若くして亡くなった婚約者が自分との時間が幸せだったと言うのなら、もっと大切にすれば良かった、と後悔する。だから、その後は後悔しない人生を歩こうと常に冒険心を忘れないで立ち向かってた。


「そうか……。亡き婚約者の手紙を読んで後押しされたのが切っ掛けだったのね」


 思い出してスッキリ。

 では、これからオズバルドは婚約者が病死して悲しむことになるけれど、それが切っ掛けで冒険者になるわけだから、婚約者との別れは切ないけれど必要なことというわけか……。


 ………………ん?

 ちょっと待って下さい。

 私、今、オズバルドの何でしたっけ?

 こ・ん・や・く・しゃ

 じゃあなかった……?

 えっ。もしかして、いえ、もしかしなくても、病死して手紙を残してオズバルドに自由な人生を送ることを後押しする婚約者って……私、ですか?


 えっ。私って成人年齢の十八歳までに死ぬってこと? 今、十二歳ですけど、後六年の命……? いや、私、健康優良児で病気なんて無いですけど……って、あ。

 オズバルドと私って三歳差でした。という事はオズバルドが十八歳までに私が病死するなら私は十五歳。……あと三年の命?

 考えてみれば……今は、健康優良児ですけど。もちろん、これから三年の間に大病をしないとも限らないし、流行病に罹患しないとも限らないですけど。それ以前に、この状況が病死の遠因ってことになりませんか?


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