13-10 辿々しい二人の道
「ええと、なんだが賑やかな人達ですね」
「南エリアの者達は商人気質故にあのように明るい者達が多い。ただ貴族は割と静かなことを好む傾向だからか、このエリアの者達を避けることが多い」
オズ様が説明する顔に苦笑が浮かぶ。
「でも、この南エリアが一番お土産店の人気があるというお話でしたよね?」
オズ様の説明ではそんな話でしたが。
「南エリアの代表が今の男なのだが、その代表の家が代々他のエリアの代表達と話し合って我が領地の特産品を他のエリアの代表から受け取り、それを売っている。だから土産店はこの南エリアが人気なんだ。その代わり、購入した貴族達は北・東・西の宿に泊まる傾向にある」
ふむふむ、と頷く。オズ様は南の宿も悪くないのにな、と困ったように呟いた。
「それ、南の代表の方は納得されているのでは?」
「それはそうだが。南エリアの宿も良いのに避けられるのが歯痒くてな」
オズ様が悔しそうな顔をするが、私はそうは思わない。
「おそらくですが。南エリアの代表さんは、ロイスデン領の特産品を一手に引き受けて土産店で売る。その代わり、他のエリアは宿を提供する、というのが話し合いで決まっているのでは?」
「そのように聞いている。……ネスティーはよく分かったな」
「他のエリアからも特産品を集めているのであれば、そういうことかな、と思ったのです。南エリアの代表さんは、このエリアの気質をよくご存知のはずです。だから、静かなことを好む貴族に敬遠されがちなことも気付いているはず。それならば、と思ったのではないか、と」
私の説明にオズ様はその通りではあるのだが、それでも……と寂しそうに笑う。頭では納得していても感情は……ということなのでしょう。
気持ちは分かりますが南エリアの代表さんを含めて皆さんの気持ちを聞いてから色々と考える方がいいのではないですかね。
「この話は後にしよう。私たちでアレコレ言っていても彼らの気持ちが置き去りだ」
オズ様が首を左右に振って話を打ち切る。気を取り直したように南エリアの案内を始めた。
とは言うものの、東エリアと大きな造りは同じなので広場を中心として……といった所は同じ。
大きく違う点は広場では子ども達が賑やかに駆け回る姿が見えたというところ。東エリアの子ども達は挨拶をしてくれるものの一歩引いたような姿でこちらに寄ってくることもなければ駆け回る姿もなかった。
あの家でアズと二人きりの勉強時間で聞いたことがあった。昔から平民は貴族によって無礼だ、不敬だと些細なことで罰を与えられたり生死に瀕したりという状況が当たり前だった。
だから不用意に近づかないよう一歩距離を引いて恐縮するのが彼らの身を守る術なのだ、と。
だからこそ東エリアの領民達の姿はおかしくないことなのだと思う。でも南エリアの領民達は貴族だからと気後れすることなく、積極的に近寄ってくる所は物怖じしない、というべきなのかもしれませんが。
でも、その気安さもまた、ロイスデン公爵領では領主の受け入れやすい気質なのかもしれません。どちらが良い悪いではなくて、ね。
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