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11-1 モヤモヤした気持ちを打ち明けます

 さて。

 アズとも離れてオズ様も居なく、私とマリーベル様とマリーベル様付きの侍女がお一人だけのサロンに現在おります。


「ネスティーちゃん、あなた、実の父親と義母と異母妹に暴言を吐かれて暴力を振るわれて、使用人達からも距離を置かれるか蔑まれて来たからでしょうけれど、自分に自信が無いというか……自分が存在していても良いのか懐疑的じゃない?」


 お茶を一口飲んだところで、マリーベル様が核心を付く質問をして来ました。……ビックリしてお茶が喉を通っていて良かった、と心底思いました。危うく吹き出すところです。


「な、なぜそれを……」


「分かるわよ。ネスティーちゃん、自分に自信が無さそうだし、どちらかと言えば常に他人事だもの」


 さすが経験豊かな公爵夫人様は言うことが違いますし、説得力があります。


「マリーベル様はお見通しですか……」


「お見通しではないけれど。何となく遠慮というより他人事な部分が気になっているわね。ねぇ、ネスティーちゃん、私は元王女なのよ」


「ええと、はい」


 それは知ってます。


「だからね、王女であった時にオーデ侯爵家について、勉強しているの。……前世持ちって言うらしいわね?」


 わぁ…………。まさかのソレを知られていましたかぁ……。

 チラリとマリーベル様付きの侍女さんの様子を見れば、私達の会話が聞こえない程度にまで下がってました。出来る侍女は違いますね。


「……はい。私も、前世持ちです」


 私が打ち明けると、マリーベル様はやはりね、という表情で頷く。


「分かりますか」


「分からなかったわよ。でも可能性はあるかもしれない、と」


「そうですか。実はオズバルド様にお会いして、前世の記憶が蘇りました。その時にオズバルド様を主役にした物語が流行っていたんです」


「……どういうこと? 予言の本ってこと?」


「私にも分かりません。ただ、オズバルド様が主役で十八歳で平民になり冒険者となって物語は始まります。その冒険者になるきっかけが、婚約者の存在で。婚約者の名前は知りませんが、その彼女が死んでしまい、彼女が生前遺した手紙に、自由になって欲しい……みたいな内容が書かれていたことから、冒険者になった、と」


 マリーベル様に話すと顔を顰めて何かを考えていらっしゃいます。


「それで、その死ぬはずの婚約者がネスティーちゃんだということ?」


「それは分かりませんが、状況として可能性はあったかな、と」


「そうね。虐待されていたものね」


「はい。だから、伯爵家から逃げたかったのです。生きたいから。でもオズバルド様はまだ十五歳ですし。十八歳まであと三年。その間に私が死なないとも限らない、と今も思っていまして」


「なるほど。だから……他人事に捉えていることが多いのね。死ぬかもしれない、と常に考えているから」


「……そう、ですね。自覚しておりませんでしたが言われてみれば確かに」


 マリーベル様の指摘に、確かに私は常に、直ぐに死んでしまうかもしれないから……と考えていたような気がします。オズバルド様の気持ちを聞いた後でも。


「そうでしょう? だから余計に自信がないのかもしれないわね」


 マリーベル様がうんうん、と頷くのを見ながら、なるほど、だから私は他人事なのか……と納得してしまった。死ぬかもしれない、と無意識に考えているから先のことを考えない。どこか一線を引いている。それが他人事に思えてしまう原因……?

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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