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7-12 「公爵家」の偉大さとその影

「照れてる? ちょっとは私のことを意識してくれていると思っていい?」


 そんなことを上機嫌に言うオズ様。私は居た堪れないまま恥ずかしさを堪えてようやく部屋に辿り着く……と思ったのですが。


「オズバルド様、あのっ、いくら陛下がお認めになったからとはいえ、そんなどこの誰と知れぬ見窄らしい姿の貴族令嬢とも思えないような女など婚約者にしては、オズバルド様とロイスデン公爵家の恥となりますわ!」


 衝撃から立ち直ったのか先程の令嬢が護衛に止められているのにも関わらず振り切って駆け寄って来ました。

 多分、令嬢だから男性の護衛二人は無闇に触れてはならないと判断して手を前に突き出して押し留める仕草をして足止めをしていたのでしょうが、その隙をぬうように令嬢が身体を割り込ませたのが見えました。

 うっかりすると、令嬢に軽々しく触れた、と言い掛かりをつけられるやつだとアズから聞いたことがあります。実際に過去、他家ではありますが護衛さんと令嬢とでは令嬢の方が身分が上で、そのような言い掛かりがあって処罰された護衛さんも居るそうです。

 他家の高位貴族の令嬢が他家の下位貴族の護衛に言い掛かりを付けて処罰対象にするなんて貴族の世界は恐ろしいと思ったものです。

 正しく身分差を笠にきた行動というやつです。

 今の場合、護衛さんはロイスデン公爵家の人だから、この目の前に居る令嬢に訴えられても処罰はされないでしょうが、未婚である貴族令嬢に無闇矢鱈と男性が触れることは許されません。

 仮令(たとえ)護衛であっても、です。

 それ故に隙をぬって令嬢は私の目の前まで来て、オズ様に訴えているのでしょう。


「ユテ侯爵令嬢、君は誰に物を言っているのか自覚が無いようだね? 私は先程、陛下もお認めになった婚約だと伝えた。つまり警告だ。陛下だけでなく我がロイスデン公爵家をも侮辱する発言をしているのだよ。私の両親が彼女のことを知らないわけがないだろう。両親も認めた上での婚約者だ。全く、そんな簡単な事すら分からないとはユテ家も大したことがないな。厳重に抗議させてもらう。それと私が彼女を好きで居るのだから君には関係ないし、君の許可も要らない。当然な。見窄らしいなどと君程度が口出しすることでもない。彼女への侮辱発言を今すぐ謝罪しないのなら、こちらも相応の対応をしなければならないが、どうする?」


 ……わぁ。オズ様すごい。

 今のを一息で言いましたよ、ひといきで。

 息継ぎをどこでしていたのか分からないから一息で合ってますよね。

 そしてなんて言えばいいのか分かりませんが、オズ様が私のために怒ってくれているのは嬉しいのですけれど、殆ど空気になりかけているお兄様やアズ達が居る前なので、居た堪れなさが持続しているのですが、それについてはどう思われますか?


「そ、そんな、あの、その、そんな女より、私の方が、絶対、オズバルド様に相応しいです」


「……ユテ侯爵がどの部屋に宿泊しているのか宿の者に聞いて連れて行け。その際に警告を無視した上に厳重に抗議をする、と言ったにも関わらず態度を改めないことに私だけでなくロイスデン公爵夫妻も不愉快な思いをする、と伝言しておけ」


 ……こういう言い方をすると、さすが公爵子息だと思う。なんて言うか他者を圧倒するというか、他者を簡単に従えてしまう空気感があるというか。

 哀れにも思うけれど私があの令嬢に出来ることはないから、何も言わずに部屋に戻った。オズ様もかなりピリピリされているし、ね。

 護衛に腕を拘束された令嬢は、離しなさい、とかオズバルド様、とか叫んでいて全く令嬢らしくない態度だったけれど、護衛さんは令嬢の訴えを無視して、宿の人を捉えて部屋について尋ねているのが背後から聞こえてきた。

 ……こういうのもやっぱり公爵家の偉大さを感じるし、その光の強さ故にある影の濃さを実感した。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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