7-4 「公爵家」の偉大さとその影
でも、オズバルド様はそれ以上は説明してくれませんでした。曰く。
「説明しなくてもそのうち分かるから」
とのこと。
……さっぱり分かりません。
結局、婚約は継続というか王命から始まったけれど、オズバルド様は私を、す……すきだと言っていたので、れ、恋愛ということですかね! 恋愛の婚約にチェンジしたようですね!
そんなこんなで一日を過ごし翌朝宿を出立した私たちは、先ずはもっとお互いのことを知るために馬車の中では会話をすることを優先しました。
例えばお母様とお兄様との思い出。……これはお兄様が泣きながら頷くので直ぐに終わってしまいましたが。
例えばオズ様……オズバルド様と呼ぶと直ぐに訂正が入るので心の中でもオズ様呼びをしてます……の子ども時代の話。
例えばアズと私の日常生活。
例えばオズ様の日常生活。
「そうだなぁ。お茶会は苦痛だった」
オズ様の日常生活について話を聞いている中でオズ様が言う。
「お茶会」
確か貴族同士の交流会でしたっけ。
私がクビを傾げるとオズ様は交流会というのは確かだけれど、と前置きをしてから。
「令嬢達は私を将来の相手と見るか、将来の義弟にするべくアル兄上を狙うのに私を味方に引き入れる相手と見るか。表情に出すことはしなくても目はギラつくし、話の内容から察せるよね」
オズ様が肩を竦めましたが、そういえば公爵家の子息です。跡取り令嬢の婿相手として優良物件でしたね、この方。あと、そうですか。アルベルト様を仕留める(言い方は悪いですけどそういうことですよね)には、弟を攻略、と考える令嬢達も居ますよね、そういうことですか。
「オズ様はオズ様で苦労されたのですね……」
「まぁその分だけ情報も仕入れられたからいいけどね」
シレッと言うオズ様。……うん、あのベルトラン様の息子だけあって腹黒いところはきちんと腹黒いんですね。
どちらかと言うと全く腹黒さが見えなかったのでちょっと驚きです。
「それは例えば令嬢方が誰を、狙っているのか、みたいな?」
「賢いネスティーも好きだよ」
ニコニコと褒めてサラリと好きと言うのはやめてもらってもいいでしょうか。……アズ以外の人から褒められるのは慣れてないんです。
「あ、あり、がとう、ございます」
「照れてるネスティーも可愛い」
いや、こんなペースで会話が続かないです。というか一番困るのは、お兄様とアズが同じ馬車に乗っていることなんですよっ。二人共、存在感消して空気はやめてぇぇぇ。
「あ、の、オズさま、その、アズとお兄様が居るので、あの、その」
居た堪れないことに気付いて!
私の口籠った先の言葉に気付いたかのようにオズ様が二人を見てから「大丈夫、気にしなくていい」とか言いました!
気にしますよっ。
「オズバルド様、あまり攻められますとお嬢様が泣きます。まだ十二歳であることを呉々も、呉々もお忘れなきよう願います」
アズが半泣きの私の顔を見てオズ様を止めてくれる。せめられるってなに? とは思いますが、兎に角助けてもらったのは確かなので私はアズの言葉に便乗すべく全力で首を縦に振ることで肯定の意思を示しました。
オズ様はとても残念そうな顔をしながら、私を褒めるのをそこで止めて頭を撫でるだけにしてくれました。……この撫で撫で、馬鹿に出来ないんです。だって暖かくて優しくて心がホッと和らぐのですから。
そんな和む心に呼応したかのように再び本日泊まる宿に到着した、と馬車の停車する音や御者の声がけが聞こえてきました。
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