表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/225

6-2 間話・唯一が見つかったロイスデンは〜オズバルド視点

 彼はどうやら本質を見抜けるみたいだ。

 だから父上はネスティーの兄というだけじゃない彼を切り捨てていないのだろう。

 本質を見抜けるというのはなかなか貴重だし、きっとガスティール殿はその能力で危機を回避してきたと見て間違いなさそう。……本人が自覚しているのかどうかはさておき。


「ガスティール殿、凄いですね。それに気付く人は中々いないですよ」


「そうじゃないと、身を守れなくてね」


 ああつまり、彼もまた周囲による環境から身を守る術として本質を見抜く目を養ったのか。彼の場合は跡取り教育が根底にあるのだろうけれど、おそらく祖父にいいように使われ、父親から蔑ろにされるというよりは見向きされないだけの存在になっていたから、周りが彼を騙すなり取り込もうとするなり手薬煉(てぐすね)引いていたのかもしれない。

 そんな環境ならば本質を見抜く目を養わないと喰われてしまう。疾うに喰われていた可能性が高かっただろうから優秀なのは確かだろう。

 それはそうか。

 自らの甘さに気付いて爵位返上を考えられるのだから。

 大抵の貴族に生まれついた子息子女が貴族から抜け出そうなどという考えに至るわけがなく、寧ろどうやってしがみつこうか考えるだけなのだから。

 特に次男・次女以降にそのような考えを持つ者が多い。

 彼は嫡男。他の貴族の嫡男ならばそのような考えにすら至る必要がない。継げる家があるのだから。何も考えずに居る跡取りの方が多いだろう。

 そう考えるとやはり父上が彼を気に入った理由が理解出来た。甘ささえ抜ければ、おそらくアル兄上の側近辺りを務められそうだ。


「成る程。さすが祖父君をお一人で支えてきただけはある」


「いや。周囲の助け無くして祖父を支えられなかったよ。父と呼びたくもないあの男を追いやるだけの力も領民達を慰撫するだけの力も無かったし」


 だからこそ、爵位返上を狙っていた。

 客観的に見ることが出来るのも彼の長所だ。


「もう、終わったことですよ」


「……そう、だった」


 静かに後悔する彼に現実を突き付ければほろ苦く笑う。悔めるのなら、次を良くしようと考えられるだろう。


「ネスティーは私の唯一です。でもあなたは彼女の兄だ。会うことを制限しませんよ」


 彼が気になっているのはそこだろうと予測すればガスティール殿は苦虫を噛み潰したような顔で


「それはまたネスティーと引き離されるようにしか聞こえない。結婚するまでは、ネスティーは私の手元に留めておくつもりだ」


「直ぐに結婚してしまえば問題ないでしょう」


「なっ……。あの子はまだ十二歳だ! 君だって十五歳で未成人だろう!」


 正直なところ成人とか未成人とかどうでもいい、と言ってしまいたいが。ネスティーは義兄殿と離れたくなさそうだし、義兄殿もネスティーから離れたくなさそうだし。

 うっかりすると領地から出て行く、と言い出しかねない。

 領地から出て行かせることは有り得ないけれど、それはネスティーが窮屈さを感じてしまうような籠しか用意出来ないことになってしまう。

 それは避けたい。

 ロイスデン公爵領地内だからこそ、広くて大きな籠が用意出来るのだから。

 父上は公爵当主だけど、私は息子とはいえ三男だから成人したら平民に身分が移行する予定。ネスティーは貴族に籍を戻したいとは思っていないだろうから、平民に身分が移行しても別に構わないけれどそれ故にロイスデン公爵領から外へ出てしまえば、平民の私では伸ばせる手に限りが出てしまう。

 ……うん。

 諸々を考えるとネスティーと義兄殿が領地から出て行くという事態に陥るのは得策じゃない。

 仕方ない。ここは折れておこう。


「分かりました。私が成人するまでは結婚は延ばします」


「オズバルド殿が、ではなくてネスティーが成人するまで」


 ……随分と先延ばしを要求されてしまう。

 だが、それだけ先延ばしされるのなら、ネスティーが窮屈に思わない鳥籠の準備は完全なものになりそうか。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ