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1-4 公爵領に向かいます

 そんなガクブルしている私にヒルデが苦笑する。こういう時の笑顔がアズとそっくりでやっぱり親子なんだなぁ……なんて思う。


「お嬢様、確かに脅かすようなことを言ってしまいましたが、政略結婚だとしても、夫が妻を大切にしている姿を上級使用人に見せていれば、使用人達だってその家に雇われている以上、女主人を冷遇などしませんわ。使用人達を纏めるのが女主人であるということは、雇用も女主人である。先程も話しましたが新たな使用人を雇い入れるのに情報を教えてくれるわけです。つまり、新しくても元々仕えていても、使用人達を雇用も解雇も女主人次第。ですから夫が妻をきちんと妻として扱えば、使用人達も女主人を認めるものですよ」


 ……成る程。確かに。此方の世界は身分制度がハッキリしている。

 主人と使用人も、そう。

 主人は絶対、という考えが根底にある。

 ……それは当主が夫人をきちんと扱えば、使用人もそれに倣うからか。という事は夫人が使用人達から女主人としてきちんと扱われない事態って、当人が致命的に何かダメな素質があるか、夫が妻を蔑ろにしているか、どちらかということ?

 ……それって夫次第、という事もあるのか。

 前世は恋愛結婚が主流だったから政略結婚っていまいちピンと来ない。

 ああだからこそ、幼い頃から婚約して恋愛の情が無くても家族愛みたいなのを育んで妻を大切にする夫、夫を大切にする妻という構図にするのか。

 まぁ他にも政略結婚というからには、互いの家にもたらす利益のアレコレがあるのだろうけれど。

 それは家を守ることになるからで。血の繋がりってことだよね。子を作ることもその一環。だから恋愛は婚外でって考え方に繋がるのか。

 それが良いのか悪いのか判断出来ないけれど。

 分かっているのは妻を大切にしない夫も夫を大切にしない妻も一定数居て、そんな家で生まれ育った子は可哀想ということ。あとそんな夫婦って政略結婚の本質を理解していないってことなんじゃないのかな。


「ヒルデの話を聞いていると、婚外恋愛についてはさておき。妻を大切にしない夫も夫を大切にしない妻も、政略結婚の本質を理解していないという事になって貴族らしい考え方とは言えないよね」


 私の結論に、ヒルデもアズも驚いた顔でマジマジと私を見る。……何か変なことを言ったかな。


「お嬢様、何故そのようにお考えになられたのか、ご説明できますか」


 アズから問われて首を傾げつつ、私は説明を始めた。


「だって家同士の利益があるからこその政略結婚でしょう? あと、子を作って産み育てることで、互いの家の絆を強固にする」


「はい。その通りです」


「でも婚外恋愛をしていることは置いといて、夫婦間で親愛だか家族愛だか友情愛だかが全く無い冷め切った関係だったら、その二人の子は親の愛情を感じないよね。まぁ夫婦間が冷め切っていても親子の愛情が無いとは言い切れないけど。子どもって夫婦の間が冷めていれば気付くよ。そんな夫婦に育てられた子が他人に愛情を持てるとも思えないし、自分にも愛情を持てるとも思えない」


「それは……確かに」


 ヒルデは伯爵夫人だった頃に、政略結婚で結ばれて跡取りの子が出来たが夫婦間は冷め切っていて、互いに愛人を持っているという夫妻を見たことがあるそうだ。その二人の間に生まれた子は人からの愛情を得られなかったために人を信じることが出来ずに、親が決めた婚約者との関係を深められないみたいだった、と思い出したらしい。


「結局、その後のことは分かりませんがお嬢様の仰る通りでしたわ」


 ヒルデがしみじみと語る。


「よっぽど親が愛情深く子を育てるなら兎も角、まぁそういう子に育つよね。それから政略結婚の本質って家同士の利益をもたらすための繋がりだよね」


「そうですね」


 私の確認にアズが頷く。


「だけどさ。夫婦間がそれほど冷め切っているのに家同士の利益って出るの? だって離婚しないだけの関係でしょう? 夫婦間の仲が悪かったら離婚を視野に入れてもいいくらいだと思うけど、利益があるから離婚しない選択をしているって本当にそうなのかなって」


 私の説明にアズもヒルデも首を傾げるばかり。

 ……うーん。私の説明不足だよね。

 説明下手か、私。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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