5-2 オーデ侯爵家の真実
「元々オーデ侯爵家というのはね、現在の王家の前の時代の生き残りの家なんだ」
……最初からディープな話をしてくるクリアと名乗ったこの従兄弟に、ああ深く関わらないことは出来ない、と悟る。
自分の根幹に関わる話から逃れたいとも思うし逃れたくないと思うのもまた人の心の複雑さ故なのかもしれないけれど。
一つ言えることは……まさかの国の成り立ち前の話ぃいいいい! という内心の叫び、だ。
そんな内心にクリアと名乗る従兄弟はおそらく気づいてるのだろうと思う。でも淡々と彼は続ける。
「この国の成り立ちはまぁ昔のことだしどこまで真実か誰にも分からないけれど、現在王家の前の時代の最後の国王は、奢侈に溺れて政治を放棄した。その王家を斃したのが現在の王家の初代国王と言われている。ここまでは知っている?」
「聞いてます」
「うん。まぁこの話は概ね間違いではないのだけど史実には無い話がある。前王家には時折前世の記憶を持つ者が生まれた。その者の持つ知識を元に国を発展させていたが……その知識を当てにして政治を疎かにしていたのが、最後の国王だった」
私は前世の記憶、の一言に反応を示す。
クリアと名乗った従兄弟はその反応に気づいたように目を細めた。
「やっぱり君もあるんだ、ネスティー」
肯定はしない。でも否定もしない。
「肯定しないところは賢いね。その前世の記憶の知識を持つ王族がオーデ侯爵家として現在の王家から侯爵位を賜わって血筋を繋ぐことになった。つまり現在の王家もその知識を欲したということだ。実際にその知識で発展してきているのも確か。後はまぁ前世の記憶を持つ者の保護という意味合いもあるのがオーデ侯爵家。ネスティー、君はオーデ侯爵家の名前を聞いて何か思わない?」
オーデ侯爵家の名前?
思い至らず首を捻る。
「オーデ侯爵の名前が代々ディオということに関しては?」
オーデ侯爵当主ディオ? オーデ……ディオ。オーディオ? 聴衆を意味するオーディエンス? ということ? それとも音声? 声を上げるという意味を持つということ?
「オーディオということ?」
「さすが、分かったんだ」
私の呟きに従兄弟が反応する。
「クリアって透明、よね?」
「オーディオが声を上げるとか人々に話を聞くように促すという意味合いなら、クリアは透明……ではなく削除の意味合いを持つけれどね」
削除の意味合いを持つ名前だ、と笑う彼に何か狂気のようなものを感じる。
「クリア……」
「代々、この名前を受け継ぐ者は、オーデ侯爵家の血を引く者を探して保護する役割を持ち、同時にオーデ侯爵家が時代に不都合な場合はその存在を表舞台から消してきた。それがクリアの名を持つ者」
いや、中々に重い内容ですけど⁉︎ あと、この話の終着点も見えなければ、この話がオズバルド様とどう結び付くのか全くわからないのですが。
「まぁそうしてオーデ侯爵家の名前だけは残ったまま現在まで受け継がれている。完全に秘匿することは出来ないから結果として名前だけが有名となっている」
ここまでは理解出来ているか、と私の顔を確認していく。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




