表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/225

4-1 間話・消えた婚約者〜オズバルド視点〜

 父上からロイスデン公爵領にネスティー嬢達を受け入れる許可をもらい、とんぼ返りをして来た明け方。ガスティール殿の悲痛な声によりネスティー嬢が居なくなったことを知る。……ただ、身内の事ながら、我がロイスデン公爵家の護衛を出し抜いてネスティー嬢が攫われたことに、俄かには信じ難くてアズ殿の説明にも素直に受け入れられない。

 血相を変えたガスティール殿に続きネスティー嬢の部屋である主人の部屋を訪れると、確かにアズ殿が説明した通りの状況が広がり、ネスティー嬢は居なかった。

 ネスティー嬢の部屋の前で不寝番の護衛を務めていた者の真っ青な顔からしても、現実のことなのは分かるのだが、それでもロイスデン公爵家の護衛を出し抜いたことが信じられない。へたり込むガスティール殿の隣に立ち、現状を冷静になって把握し、後ろに控えていたヘルムにどう思うか尋ねてみた。


「うーん。こんなことを言いたくないですが、信じられないんですよね。実際お嬢様は居ないですし攫われたのは確かなのでしょうが、ロイスデン公爵家の護衛が二人も居て、出し抜かれるという現実が信じられません。あと護衛じゃなくてもロイスデン公爵家の使用人の中でも選りすぐりの人達がここに居るじゃないですか。護衛程腕が立つことはなくても人の気配にはそれなりに敏感な皆さんが居るのに、出し抜かれていることが信じられないですね。寝ていたから、という事じゃなくて」


 ヘルムの意見を聞いて、私も同じことを考えていた、と頷く。つまり、ロイスデン公爵家の護衛や使用人達に気付かれずにネスティー嬢をこの屋敷から攫った、という現実を信じたくない。

 いかに、現実としてネスティー嬢が居ない状況だとしても。

 なんて言うか、全くしっくり来ない。

 確かに状況はネスティー嬢が攫われた、という現状だし窓に掛けられた鉤付きの縄を見ても現状を後押ししているように思える。

 それでも。

 どうしてか現状を信じられない。

 ロイスデン公爵家の護衛と使用人達を信用しているからというのもある。信用し過ぎている、と言われてしまえばそれまでだし、人である以上はミスもあるとも理解している。


「ネスティー嬢の部屋の前で不寝番をしていたと思うが」


 私の問いかけに護衛は頷く。ずっとドアの前にいたと言う。もう一人はどうしていた? と尋ねると屋敷を一周した後で交代の時間まで仮眠を取っていたと言う。護衛以外の使用人達は寝ていたと言うしアズ殿とその母親である二人も、ガスティール殿も寝ていたと言う。

 アズ殿とその母とガスティール殿は顔を真っ青にして震えている。対してウチの使用人達は表向き取り乱した様子は無いが、それはロイスデン公爵家の使用人として教育されたから、というものだろう。


「アズ殿と母君はガスティール殿と共に少し彼方で休んでいて下さい」


 ネスティー嬢の寝室と続き部屋の居間へ三人を促し、もう一度寝室の状況を見る。

 ベッドが乱れているのはネスティー嬢が眠っていたから。それ以外に荒らされた室内ではないのは、ネスティー嬢が眠っていたから攫いやすかったということだろう。起きていれば暴れていたのだろうから。

 ……そこまで考えて、ハッとした。

 ネスティー嬢は太陽が顔を出す頃に目を覚ましてしまい、おまけに眠りが浅い、とアズ殿が話していたことがある。

 この屋敷に来てからも早くに起きてしまうのは変わらないようだし、それならば眠りも浅いはず。眠りが浅いということは、人の気配に敏いとも言えるだろう。

 それなのに? 攫われた時は起きなかったのだろうか? よく眠っていた? それとも、誰か知っている者が攫った相手だった? 若しくは攫われることを予想をしていた……?

 知っている者なら暴れない。

 知らない相手でも、よく眠っていたとしても眠りが浅いなら目覚めそうだ。そして知らない相手ならばネスティー嬢は抵抗するか冷静に状況を把握するか、そんな感じだろう。

 攫われることを予想していたとしたら……相手は亡き母君のご実家であるオーデ侯爵家の手の者か。併しオーデ侯爵家の者がロイスデン公爵家の使用人や護衛を出し抜けるような人材が居る、ということだろうか……。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ