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2-1 間話・何処に消えたのお嬢様〜アズ視点〜

 日が昇るのと同時に目を覚ますのは、お嬢様の専属侍女になってからの私の習慣。

 何しろ、髪を整えるのもご飯を準備するのも全部私の仕事だったから。お嬢様はあのドクズな父親達の元に居たから、自分で何でもかんでも行いがちで世話をしたい私の仕事が無くなってしまうことの方が多かった。

 そんなわけで自然にお嬢様が起きるよりも前に起きて、色々とお世話が出来るように、と動くことを考えたら朝日が昇るのと同時に目覚めることが身に付いてしまった。

 今は、母も居るし。私とお嬢様だけで何でもかんでも行う必要が無いからもっと遅くまで寝ていても良いはずなのに、つい目が覚めてしまう。習慣とは怖い。

 密かな楽しみはお嬢様の寝顔を見に行くこと。

 それもじっくりと。まだまだ子どもでそれも痩せ過ぎているお嬢様には、美味しいご飯をたくさん食べてもらいたっぷり寝てもらうこと、がお嬢様のお仕事だ、とロイスデン公爵様が買われたこの屋敷に来てから約束させた。

 そんなのが仕事になるの? と疑問に思っていたお嬢様。でも体力の無さや痩せ過ぎていることは気になっていたようで大人しく聞き入れてくれた。

 この屋敷から退去しなくてはならないのは残念だけれど、お嬢様がオズバルド様を頼ったことは良いことだと思う。何しろ、私にもあまり頼ることはしないお嬢様は他の人などもっと頼らない。

 伯爵家を出るためにロイスデン公爵様を頼ったくらいなものだと思う。

 だから少しずつ人を頼ることを覚えたお嬢様は良い傾向だと思う。

 そんなことを思いながら、小さくノックをしてお嬢様の部屋に入る。

 そっと近づいてその寝顔を見て日に日に頬がふっくらしていく様子を見るのも楽しみ。

 ーーそう、思っていたのに。


「お嬢様っ⁉︎」


 ベッドにお嬢様が居ない。

 寝具を捲っても当然居ない。

 身体の膨らみが無いのだから。

 ベッドの下に転がり落ちてる可能性も無い。

 他の場所に寝ている可能性を考えて探してもクローゼットの中まで見ても居ない。


「お嬢様、お嬢様っ」


 私の声にお嬢様の部屋の外から声が聞こえて来た。お嬢様の不寝番の護衛をしていたロイスデン公爵家の人で、彼は先程、今朝もお嬢様の様子をコッソリ見に来た私に笑顔で挨拶をしてくれた。


「どうしました⁉︎」


 その彼の訝る様子にお嬢様が居ないことを告げると顔色を変えて一緒に探してくれる。

 二人で確認してみてもやはり居ない。


「窓は?」


 護衛の彼に言われてハッと寝室の窓を見る。鍵が掛かっていない。……そんなバカな。


「かかってない……。寝る前に私が確認して、お嬢様も一緒に鍵をかけてくれてありがとう、と確認してベッドに入られたのを確認したのに」


「では、お嬢様が自分で窓を開けて外に出た、ということになります」


 でも窓からどうやって外に出たというのか。一階ではないのだ。

 護衛の彼が窓に近づくとハッとした。


「何か?」


「これは侵入者です。コレを見て下さい。鉤付きのフックです。これに縄が付いてますね。侵入者はこれを窓に掛けてお嬢様を連れて逃げたのです」


 では、その侵入者はどうやって部屋に侵入したのか、という疑問には彼が窓の外の樹を見る。


「あの樹木なら枝も太いので身が軽い者ならお嬢様の部屋の窓に侵入出来たでしょう。ただ、おかしいのは、鍵が掛かった窓を開けるのに音がしなかったことが有り得ません。私は起きてドアの前に居たのですから、窓の鍵を開けるような音がしたのなら聞こえたはずです。慎重になって音を立てなかったとしても、部屋に入れば人の気配に気付かないなんて自分で言いますが信じられません」


 護衛の彼が自分の言葉を自分で否定する。

 ロイスデン公爵家から来た彼はヘルム曰く腕利きだとのこと。公爵様ももう一人の護衛の彼と共に信用している、と言っていた。

 その彼がこんな事を言うのが私も信じられない。


「こんなことを言いたくないですが」


 私が切り出すと彼も頷く。


「分かってます。私がお嬢様を攫って仲間にお嬢様を連れ去ってもらい、何食わぬ顔をしているのが一番簡単な誘拐騒動でしょう」


 彼は私の言いたいことを正確に当ててきた。


「ですが、それは私には死ぬことに等しい。ロイスデン公爵様自らお嬢様に万が一のことがあり、それが私達使用人として雇われた人間が関係していたのなら、その命によって贖え、と言われています」


 まさか、ロイスデン公爵様がそこまでお嬢様を大切にしてくれているとは思ってもみませんでした。

 この人が嘘を付いている可能性が無いとは言えないけれど、自分の命が懸かっていますから、そんな事はしません、と否定する顔に嘘は無さそう。

 一応信用してみていいだろうか。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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