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1-1 此処は何処でしょうね。

お待たせしました。


小学館FTノベル大賞終わりました。読んで下さった皆様ありがとうございます。

 オズバルド様に図々しくもお願いをした。

 ーー公爵領に身を置かせて欲しい、と。

 悩まなかったわけじゃない。

 他に頼れるところが思い付かなかったということもある。

 あんな大勢の人の前で口走ってはいけないことを口走ってしまった。

 ……迂闊だったけれど仕方なかった。私自身がパニックに陥っていたから。

 だってーー

 小説の中身とは全く関係ない夢を見て、それが正夢になってしまったのだから。

 私にはそんな夢で過去や未来を見る力なんて無いはずで、未来を見た、と周囲が思っている私の発言は、単に蘇った前世の記憶にあった小説の内容を話しただけに過ぎなかったから。

 オズバルド様が主役の小説。それだってもう記憶が朧気で細かなことなんて覚えていないし、最後まで読み切っていないから、オズバルド様が冒険者になっても成長過程は少ししか知らないし。

 だからもう、これ以上は夢で見た、と嘘を吐きつつ未来や過去について話すことなんてない、そう思っていた。

 だけど、違った。

 もう朧気な記憶の小説ですら描写のなかった馬車の事故。

 それが手に取るようにハッキリと色付きで目の前で起こったように見た……夢。

 あまりのリアルさに絶叫して飛び起きた。

 バクバクと鳴る心臓。

 耳に響く自分かーー夢の中の人達かーーの、事故に対する叫ぶ声。

 混乱の中で犠牲になった多分兄弟だろうと思われる男の子達。

 リアルだけど、夢で終わって欲しかった。

 ……ああ、夢だったのね。こんな現実はなかったよね。なぁんだ、で済まされたかった。

 ーーだけど。

 事故は現実に起こり、夢で良かったでは済まなくて、最悪の事態は避けられたけれど、初めて自分の見た夢が正夢になってしまったことの恐怖で。

 ……未来に起きたことを口走ってしまった。

 そりゃあ未来が分かる人間なんて居るわけがないもの、化け物扱いされても当然。

 頭では理解出来るけれど、感情は無理で。私は化け物じゃない、普通の人だと叫びたかった。でも、あの場でそんなことを叫んでも狂人扱いしかされなかったはず。

 あの場から引いて良かった。

 それが分かっているのに、もどかしい思いや苦しい思いで喉が引き絞られて胸が切り裂かれたように痛んだ。

 そんな私に、領主代理だと言う宰相様のご子息様が無情にも侯爵領追放を宣言された。

 頭では分かる。

 化け物扱いされた私が領地に居ることは、領民の安寧とは程遠いだろうこと。混乱を生むし恐怖心が植え付けられるだろうし、日本人だった時に勉強したような迫害騒動が起こるだろう。迫害騒動から暴動へ発展して、侯爵領内だけでなく他領にも被害が出たら尚のこと怖いと思うし、国内の反乱を蜂起させる原因を宰相様のお膝元で起こさせるわけにはいかないだろう。

 ーー頭では理解出来るのに。

 感情は追い付かなくて、私が何をしたの、私は寧ろ馬車の事故を最悪の状況から変えたのよ、と悲劇のヒロインのように自分を憐んでいて。

 そんな自分が嫌で、口に出してしまいそうな私が嫌で、だから侯爵領追放を受け入れて直ぐに帰ってもらって、事務的な口調で屋敷を出て行くことを伝えて、そして。

 何処に行けばいいのか分からない私の頭で思い浮かんだのは、オズバルド様を頼ること、だった。

 ロイスデン公爵領の片隅でいいから、私と共に居てくれるだろうお兄様とアズとアズのお母様を私と一緒に受け入れてもらいたい、とお願いした。

 それを受け入れるために、オズバルド様がロイスデン公爵様に頼みに行くことを伝えてくれて、戻って来るのは一日では無理だから、と言われたことだけは頭に残っていた私は、とても心が疲れていたみたいで早々に寝ることをアズに告げて、ベッドに潜り込んだ。

 ーーはずだった。

 記憶はある。

 ベッドに潜り込んだところまで。

 だけど今、目覚めた私の身体は、ベッドの中ではなくて。

 何故か酷く揺れているところだった。

 ……此処は何処でしょうね?

 目が開いただけの私には未だ状況が把握出来ていない。でも、何となく勘が告げる。

 今は動くと厄介だ、と。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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