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7-1 侯爵領を守る者

 お兄様から使用人達のその後の話を聞き終えた所で、アズが固い表情を浮かべて一通の手紙を出してきた。


「これは?」


「この地の領主代理様から、です」


 ここは侯爵領。

 宰相様が領主。

 その代理は、宰相子息様。

 宰相子息様からの手紙。

 嫌な予感しかない。

 でもこの屋敷の主人は私。見て見ぬふりをするわけにもいかない。


「俺が代わりに目を通そうか?」


「ううん。このお屋敷は公爵様が買ってくれたらしいけど、一応主人は私だから」


 お兄様の申し出に一瞬迷う。

 お偉い方からの手紙なんて碌な事が無さそうだし、貴族特有の迂遠な言い回しを鏤められた手紙だと読みづらそうだし。

 お兄様にお願いしたくなる。

 でも、それを押し込めて申し出を断った。

 開いた手紙には明日の午後に訪うという文章が。今世で初めて目にしたけれど、これが先触れというやつだろう。


「なんだって?」


「明日、いらっしゃるそうです。アズ、おもてなしの準備をお願いします」


「畏まりました」


「それとオズバルド様にお時間を頂くように」


「はい」


 さっと身を翻したアズを見送り、お兄様が気を利かせて応接室を出ようとする。私はそれを制した。


「お兄様もご一緒に」


 お兄様が頷きやがてアズと共にオズバルド様がいらっしゃった。……どこかで待機されていたのかしら。


「ネスティー嬢、呼んでいると聞いた」


 ……そういえば、いつの間にか名前呼びになってますね。あれか、私がラテンタール家から出たからですか。ラテンタールの名前、捨てたわけですしね。


「オズバルド様、お忙しいのにお呼び立てして」


 私が切り出すと片手を上げて制してくる。……ので首を捻った。


「この状況だから何も手が付かなくてヘルムと共に護衛をしていただけだから」


 ……ヘルムと共に。

 えっ、じゃあドアの向こうにずっと居たってこと?

 それにしてはアズが呼びに行って戻って来るまでに時間がかかったような……あ、アズが新しいお茶を出してくれる所を見ると、お茶を持って戻って来た時にドアの所に立ってたオズバルド様に声をおかけしたんですね。


「ずっとドアの前に居たのでは大変じゃなかったですか」


「いや。ネスティー嬢が心配だったから」


 ドキッ

 心臓が音を立てました。

 本当に心配してくれている表情で言われると、ちょっとドキドキしますね。何しろ小説の主役で私はオズバルドが好きでしたからね!


「ありがとう、ございます。あの、お兄様とアズにも話しましたが明日は宰相様のご子息様がいらっしゃるそうです。お兄様とオズバルド様に立ち会いをお願いしてもよろしいでしょうか」


 二人共快諾してくれました。良かった。


「何を言われるのでしょうね……」


 安堵と共に不安が押し寄せる。

 きっと今日の馬車の事故について。

 それと……私が口走ってしまったことについて?

 そういえば、お兄様は私の話を信じてくれましたし、お母様の血だとご存知でしたね。

 ーーあら? お母様も、と仰っていました?

 お母様にも未来を見ることが出来たということ?

 でも、私の予想だと前世の記憶……多分、日本人だった記憶……がある人が、前世の記憶を口にしただけだと思うのですが。

 お母様も元日本人?

 それとも私の仮説が違う?

 ……お兄様に詳しくお尋ねした方が良さそう。

 ゆっくり話を聞く時間が取れるかな。

 もう今日は、ちょっと疲れたし、目の前で起こったことだからか、事故の衝撃が少しまだ残っているから……寝たい。

 ……この身体、元々痩せっぽちだから疲れやすいのもあるんだよね。

 お母様の話、明日以降に聞けるかな。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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