表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/225

2-2 お兄様登場

 オズバルド様と公爵様がいつ話し合ったのか、全く分かりませんが。まぁロイスデン公爵家だから、ということで納得しておきましょう。

 ……オズバルド様からお兄様のことを聞いてから三日後。

 お兄様がこの屋敷を訪れてくれることに。


「アズ。どうしましょう。お兄様に会えるって」


「お嬢様にしては珍しく落ち着いておりませんね」


「落ち着いてなんていられないわ。だってもう何年も会ってないのよ? お母様が亡くなって直ぐに会えなくなったから」


「そうでございましたね」


 ソワソワする私を微笑ましいとばかりにアズが見て来るけれど、こればかりは仕方ない。

 “わたし”の記憶に残る優しい時間。もう会えないお母様との記憶を共有出来る人。

 色白で病弱なお母様に似たやっぱり色白で優しく笑っていたお兄様。今はどんな男性に成長されたのだろうか。


「そういえば、アズ」


「はい。どうしました?」


「アズ達の調べで宰相様のご子息様が毎年この時期に視察に訪れるのは確かなのよね?」


「……はい」


 悪夢が不意に私の脳を刺激して、気になることをアズに尋ねる。私の夢はどうにも正夢に近づいているような気がしてならない。


「やっぱり当たる……?」


「分かりません。可能性は高いですが視察の日が判明しませんと」


 簡単なのは子どもを外に出さないように、と通達すること。でも、それを誰が通達するのか、と言えば宰相様のご子息様でもない限りは無理。

 そして通達したからと言って守られるかどうかは不明。

 かと言って馬車を走らせないなんてことは、更に出来ないこと。何しろ所謂交通手段なのだから。

 日本で言えば車。

 自転車やバイクではなく車。

 バスや電車でもなく車。

 日本で一番利用の高い交通手段。

 それを止めるのは何処にも行かないよう伝えることと同じことになる。

 つまり出来そうなことは、あの広場付近を訪れる視察日に、馬車が暴走しないように見張ること。暴走したとして、その近くに子どもが居たのなら子どもを守るよう目を配ること。それくらい。


「……そう。過去に起こった出来事の可能性は低そうだものね」


「……はい」


 まだ全ての新聞を調べたわけではないけれど、宰相様のご子息様が領主代理を務め始めてまだ十年も経過していない。それまでに私の夢のような出来事が起きていたのなら、人の記憶にも残っているはず。

 馬車の暴走というのは中々無いことだから。全く無いわけではないけれど、暴走する程、馬がパニックを起こす事態に陥る出来事が抑々少ない。

 アズの聞いた話では、蜂に馬が刺されて暴走を起こしたことがあるそうだけど、それもかなり昔の話らしい。今は蜂が居そうな花畑の近くは馬車を走らせるのも慎重らしい。

 スピードを抑えて走って蜂を刺激しないとかなんとか。御者さんも大変だと思う。

 そういったことを考えると、過去よりも未来の出来事のような気がしてならない。だから領主代理として視察が行われる日を調べる方に重きを置いている。

 ……そんな状況でお兄様にお会いするためにソワソワしている私もどうなのかなとは思うけれど。

 長い時間会えなかったから、どうか許して欲しい、と誰に赦しを請うているのか分からないことを考えながら、お兄様を待つ。


「お嬢様、いらっしゃったようですよ」


 門番の通達を受けたアズの母であるヒルデがドアをノックして声をかけて来たのを確認したアズが伝えて来る。

 私が居るのは応接室。お庭でのんびり……とも考えなかったわけでもないけれど、アズがゆっくり話をするのであれば近頃は少し寒くなったので庭よりも室内でたくさん話す方がいい、という助言をくれたので。

 応接室でお兄様と会うことになった。

 ヒルデの案内でいらっしゃったお兄様がドアの向こうにいる。

 ドキドキしながら入ってくる人を待ってーー

 ーー私は、ポカンと口を開けてしまった。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ