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11-2 自覚が無いことは怖いそう

 私こそが謝らないといけなかった。

 一人一人の目を見て頭を下げる。あなた達の命を脅かすことをして、ごめんなさい。全く自覚をしていなくてごめんなさい。


「頭を上げて下さい」


 静かな声は、公爵様が寄越してくれた護衛の一人で。その声に合わせるように頭を上げる。


「確かに、お嬢様は自覚がなくて私共の命を危険に晒すようなことをしたと思います。そして、それはお嬢様自身の危険もある。そこは確りと認識して自覚してもらわなくてはならないです。でも」


 そこで言葉を切った護衛の人は続ける。


「でも。お嬢様は、困っていた人のために助言をしていたことは気付きました。私共はヘルムとオズバルド様と一緒に居るお嬢様が、知識をひけらかしたいから、とか無知の者を嘲笑したいから、とか、そんな理由で口出しをしていたのではないことを見ていました。純粋に、困った相手にこうしてみたらいいのでは? という助言だった。だからあなたの専属侍女殿も、ヘルムもオズバルド様も、あなたを止めなかったのだと理解しています。今後はもう少し自覚してもらいたいとは思いますけど、今回のことでそれも理解してもらえたようですし。反省もしている様子。だったら、私共はお嬢様をお守りする。それだけに専念しましょう」


 厳しくも暖かい言葉。

 きっと私が傲慢な人だったら、こんな風に助けてくれなかったと思う。

 ふと、思う。

 前世の記憶が戻っていなかったらずっと私が悪い子、と卑屈のままだったかな。前世の記憶を取り戻すまでの私は、伯爵達から暴言を聞かされ、暴力を振るわれ、閉じ込められても仕方ないと思い込んでいた。

 そして、そのまま死んでいた、と思う。

 前世の記憶が戻って、こんな理不尽に耐える必要はないと気付いたから、今がある。

 記憶が戻った当初は其方に心が引き摺られていたけれど、今は溶け込んでいるというか、大人だった自分がいた事も知っている子どもというか。心は年相応の心じゃないか、と思っている。……多分。

 だから、こんな風に言ってもらえて素直に嬉しいって思える私がいる。

 不思議なことに、前世の私は大人になればなるほど、厳しくも暖かい、此方を気遣う言葉を素直に受け入れられなかった記憶がある。

 成長するに従い、捻くれてしまったのか、恥ずかしくなったのか。それはあの時の私じゃないと分からないけど。

 その記憶があるから、今は素直に受け入れられる。


「ありがとう」


「お嬢様が仕えるのに足る相手だから、ですよ」


 私の礼に護衛の人はそう言ってくれた。そうか。仕えるのに足る、と思ってもらえているのか。

 何も言えなくて感謝の意を込めて頭を下げた。多分護衛の人は分かってくれた。


「とはいえ。ここにこのまま居るのは多分よくないわよね」


 話が一段落した所でアズのお母さん、ヒルデが話を戻す。そうか。このお屋敷にいるのは危ないのか。


「まだ大丈夫かと思います。この屋敷は父上が買ったので名義が父上ですから。賢い者はその時点で手を引きます。あまり賢くない者はまだネスティーの存在に気付いてないでしょうから」


 オズバルド様がヒルデの疑問にサックリ答えた。あ、そういえば公爵様がこの家を準備してくれたってアズが言ってたっけ。公爵様が関わっている時点で手を引く人は賢い。それでも手を出して来る人は、それだけで自分が賢くないと宣言しているようなもの、とオズバルド様が辛辣に言う。

 やはり公爵子息として生まれ育った人だから。オズバルド様は状況判断も出来るし、時には対処の方法も身につけているのだと分かる。

 ヒルデもオズバルド様の言葉に、あっさりと引き下がったし、安心もしているみたい。

 主人として使用人の不安を取り消しているような発言に、生まれ持った下の者を従わせる風格みたいなものを感じ取った。オズバルド様の方がよっぽども主人らしい。

 段々と頼りになりつつあるオズバルド様。

 ーーそれにしても、こんな風に頼り甲斐がありそうな人になるなんて。

 どうしてオズバルド様は、私との婚約を解消しないのか、やっぱり不思議ね。でも今はそこを気にしている場合じゃないから。

 取り敢えず様子を見ながら、私はおとなしくしておくことにします。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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