表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/225

4-3 乗り込んで来た

暴言・暴力描写あり。

苦手な人は次話までお待ち下さい。

「アンタ達っ! 命令よ! コイツの手足を動かせないようにしなさいっ」


 異母妹が叫ぶ。そういうの、拘束って言葉があるけど知らないのかしら。ああでも家庭教師達がそんな恐ろしい言葉を令嬢に教えるわけがないわね。足が上手く動かせられない私は突き倒されたので起き上がるのに時間がかかる。モタモタする私目掛けて侍従二人が身体を押さえ込もうとしてきた。侍女は何を……と視線を向ければ、アズが侍女を押し留めている。異母妹が憤慨していた事に気付いたから、乗り込んで来た異母妹の後を追ってきてくれたのだろう。侍女の方はアズに任せ、私は両腕と両足を押さえ込んだ侍従二人に出来る限りの低い声で冷たく言ってやる。


「あなた達、今までは父と義母と異母妹の命令に当たり前のように従って来たから、今もそうしているみたいだけど、分かってるの? 私は、誰の命を受けて、誰と婚約したのか。候補じゃないの。婚約しているのよ」


 私の言葉に二人共首を傾げた。……察しの悪い使用人ね。泥舟だと気付かずに乗り続けて良い言葉で飾り立てた泥舟の船頭を信じて一緒に沈んでいくわね。

 溜め息をついてハッキリと口にしてやる。


「私の婚約は、王命なの。そして婚約した相手はオズバルド・ロイスデン。ロイスデン公爵子息」


 ここまで言ってもまだ拘束を解こうとしない侍従二人の頭の悪さに溜め息も出なくなった。


「何をごちゃごちゃ言ってるのよ! アンタがオズバルド・ロイスデン様の婚約者なんて、何かの間違いよ! きっと、ラテンタール伯爵令嬢との婚約を国王は命じたに違いないわ!」


 異母妹が鼻息を荒くして言うけど、その命令だとしても何も間違えてない。異母妹が父の娘でも養女として戸籍を取得しているからには、ラテンタール伯爵令嬢は私で、養女である異母妹は、ラテンタール伯爵家養女と認識される。

 これもまぁ跡目争い等の面倒から解放するための法で決まったことで、養子(男児)・養女(女児)がその家の血を引いていたとしても、跡取りと区別をするために……子息(妻の産んだ男児)と令嬢(妻の産んだ女児)とは正当な存在であることを言う。私の場合、亡きお母様の娘なので妻の娘だから、第三者からは令嬢と呼ばれる。お兄様は子息。異母妹は父の娘でも養女なので第三者からは令嬢と呼ばれず、ラテンタール伯爵家の養女殿と呼ばれる。


 だって養女だもの。王家に報告した時点で他の貴族家にも周知する必要があるのは跡目争いを生まないため。同じ養子・養女でも、妻との間に子が出来なかった場合の養子・養女とは違う。妻との間に子が出来なかった場合の養子・養女は、第三者からの呼び方は「子息・令嬢」と正当な子と同じ扱いになる。第三者からの呼びかけが「養子殿・養女殿」と呼ばれるものだとしたら、正当な相手の子ではない、と理解される。それは王家も同じ理解となる。


 つまり、「ラテンタール伯爵令嬢とロイスデン公爵子息との婚約」が王命だとしても、この場合のラテンタール伯爵令嬢は、私でしか有り得ない。ラテンタール伯爵家の養女殿と言われていないのだから。その辺のこと、家庭教師達が教えていると思うのだけど、教わってないのか聞いてないのか。まぁどちらにしても、今更。


「ラテンタール伯爵令嬢は、私以外居ないわ。あなたはあくまでも養女なのだから」


 我が家の使用人は平民出身も居れば貴族出身も居る。私を押さえつけているのがどちらでも、公爵子息の婚約者である私を押さえつける事は許されない事なのだけど。全く理解していないみたい。チラッと見ればアズが対応していた侍女は本邸へと身を翻したので父と義母を呼んでくるのだろう。

 それまでにこの拘束を解いておきたいのだけど……ダメだわ。全く弛まない。


「おいっ! キサマ! 不細工のくせに我が娘に暴力を振るい、言い返しただと⁉︎ 誰に言い返している!」


 あー……。一応の父が怒鳴りながら来たと思ったら、押さえつけられている私を見て、胸に足を置いて体重をかけてきた。グウッと呻き声を上げた私を冷たい目で見ながら、今度は顔を蹴飛ばして来る。それから義母も父の背後から現れたと思ったら右手に足(ピンヒールの靴を履いた)を乗せて体重を乗せてきた。穴、手に穴が開くっ!


 そう思いながら脂汗をかいていると。


「旦那様! 奥様! お嬢様は公爵子息の婚約者です! 何かあれば調査されます!」


 アズの必死な声を聞きながら、私は痛みから逃れるように気を失った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ