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犬も食わない物語  作者: 胡暖
犬も食わないハジメテの

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18/18

初めての仲直り~sideA~

 泣きたくなんて無かったのに、感情の制御が効かず、思わず涙が零れた。

 ぼやけた視界で、微かにルークが俯いたのを感じ取る。あぁ、面倒くさい女だと思われてしまっただろうか。

 自分の中で、箍が外れる音がした気がした。

 気がつけば、言葉が止まらくなってしまった。


「大体、なんでキャサリンと一緒にいるの?……こんなに好きなのにってどういうこと?私とのことは遊びだったの?……ねぇ、なんで何も言ってくれないの?」


 はぁぁぁぁ、と、盛大なため息が聞こえてきて、思わず体が強張る。

 ゴシゴシと手で涙をぬぐって、ルークの顔を見ようとすると、両手で手を押さえられる。


「はなして」

「目が腫れる。やめろ」


 私の目が腫れようと、ルークには関係ないはずだ。きっと睨みつける。

 ルークは、へニョンと眉を下げ私の腕を握っていた手を離して、私の背に回した。甘えるように頭を肩に乗せてくる。


「泣くなよー。……俺、お前が泣くとどうしていいか分からなくなるんだ。だから」


 言いながら、ルークは私の額や頬にキスの雨を降らせる。


「そんなんじゃ、私、誤魔化されないから。だいたい、誰が泣かせてると思ってるの?」

「俺。俺が全部悪かった」


 優しく私の目元に唇を寄せながら、ルークが言う。


「お前、俺の元カノに嫌がらせされてたんだって?最近の言動はそれが原因?」


 その言葉に、目を見開く。体がぎっと強張り、さぁと、血の気が引く。


「……キャサリンに聞いたの?」

「あぁ」


 ぎゅうっと目を瞑る。

 知られたくなかった。うまく立ち回れない自分も。卑屈な自分も。ルークの想いを信じられない自分も。全部全部隠してすました顔してあなたの隣に立ちたかったのに。

 私の心は昔より格段に弱くなった。傷つかないように、自分を守るために、興味ないふりして直接対決を避けて……そうしているうちに。なりふり構わず、相手に思いをぶつけるなんて、一度もやったことない。

 だから分からない。

 どうすればもっとうまくできるのか。


「不安にさせて悪かったよ」

「キャサリンと何してたの?」

「……言わないとだめか?」

「言えないことなの?」

「言いたくない」


 不貞腐れたようなルークの顔にまた、涙が湧いてくる。私の涙腺どうしちゃったんだろう?


「やっぱり、キャサリンとも付き合っているの?」

「はぁ!?なんでそうなる?」

「だって……」


 ルークはぎょっとしたような顔をした後、観念したように息をついた。


「あいつには、お前の情報をもらってたんだよ」


 それから話してくれた。これまで、キャサリンに何をお願いしていたのかも。

 私は、顔を赤くして絶句するしかなかった。


「どうして、その、私と……しようとしなかったの?」

「あぁ?怖気づいて逃げた奴が何言ってんだ」

「……逃げてないもん」


 はぁぁ、とため息を付くとルークにビクリと体をこわばらせる。


「お前のこと大事にしたいと思ってるからだろうが」

「でも……」

「おまえ、俺の想いなめんなよ」


「だ……ってぇ」


 めそめそと、私は可愛くないし、話だって楽しくない、何かすごい特技があるわけでもない、そんなことを言いながら泣いた。


「……泣くほど俺が好き?」

「……」

「……俺も、好き。お前のことが、すげぇ好き」


 蕩けるような目をして、ルークがこちらを見ていた。

 普段は切れ長の瞳が、どこか冷たく見せているが、眉が下がるだけで、びっくりするくらい優しい顔に見える。


「だからもう泣くな」


 ぎゅうっとルークにしがみついて、コクコクと頷く。

 ルークは、私の気持ちときちんと向き合ってくれる。そう思ったら、これまでの苦しい気持ちが嘘みたいに晴れた。卑屈な私はこれからもまた出てくるだろう。でも、そうなったらまたルークに気持ちをぶつけよう。そうして、二人の関係を積み上げていこう。


「じゃぁ、仲直り。ね」


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