初めての仲直り~sideA~
泣きたくなんて無かったのに、感情の制御が効かず、思わず涙が零れた。
ぼやけた視界で、微かにルークが俯いたのを感じ取る。あぁ、面倒くさい女だと思われてしまっただろうか。
自分の中で、箍が外れる音がした気がした。
気がつけば、言葉が止まらくなってしまった。
「大体、なんでキャサリンと一緒にいるの?……こんなに好きなのにってどういうこと?私とのことは遊びだったの?……ねぇ、なんで何も言ってくれないの?」
はぁぁぁぁ、と、盛大なため息が聞こえてきて、思わず体が強張る。
ゴシゴシと手で涙をぬぐって、ルークの顔を見ようとすると、両手で手を押さえられる。
「はなして」
「目が腫れる。やめろ」
私の目が腫れようと、ルークには関係ないはずだ。きっと睨みつける。
ルークは、へニョンと眉を下げ私の腕を握っていた手を離して、私の背に回した。甘えるように頭を肩に乗せてくる。
「泣くなよー。……俺、お前が泣くとどうしていいか分からなくなるんだ。だから」
言いながら、ルークは私の額や頬にキスの雨を降らせる。
「そんなんじゃ、私、誤魔化されないから。だいたい、誰が泣かせてると思ってるの?」
「俺。俺が全部悪かった」
優しく私の目元に唇を寄せながら、ルークが言う。
「お前、俺の元カノに嫌がらせされてたんだって?最近の言動はそれが原因?」
その言葉に、目を見開く。体がぎっと強張り、さぁと、血の気が引く。
「……キャサリンに聞いたの?」
「あぁ」
ぎゅうっと目を瞑る。
知られたくなかった。うまく立ち回れない自分も。卑屈な自分も。ルークの想いを信じられない自分も。全部全部隠してすました顔してあなたの隣に立ちたかったのに。
私の心は昔より格段に弱くなった。傷つかないように、自分を守るために、興味ないふりして直接対決を避けて……そうしているうちに。なりふり構わず、相手に思いをぶつけるなんて、一度もやったことない。
だから分からない。
どうすればもっとうまくできるのか。
「不安にさせて悪かったよ」
「キャサリンと何してたの?」
「……言わないとだめか?」
「言えないことなの?」
「言いたくない」
不貞腐れたようなルークの顔にまた、涙が湧いてくる。私の涙腺どうしちゃったんだろう?
「やっぱり、キャサリンとも付き合っているの?」
「はぁ!?なんでそうなる?」
「だって……」
ルークはぎょっとしたような顔をした後、観念したように息をついた。
「あいつには、お前の情報をもらってたんだよ」
それから話してくれた。これまで、キャサリンに何をお願いしていたのかも。
私は、顔を赤くして絶句するしかなかった。
「どうして、その、私と……しようとしなかったの?」
「あぁ?怖気づいて逃げた奴が何言ってんだ」
「……逃げてないもん」
はぁぁ、とため息を付くとルークにビクリと体をこわばらせる。
「お前のこと大事にしたいと思ってるからだろうが」
「でも……」
「おまえ、俺の想いなめんなよ」
「だ……ってぇ」
めそめそと、私は可愛くないし、話だって楽しくない、何かすごい特技があるわけでもない、そんなことを言いながら泣いた。
「……泣くほど俺が好き?」
「……」
「……俺も、好き。お前のことが、すげぇ好き」
蕩けるような目をして、ルークがこちらを見ていた。
普段は切れ長の瞳が、どこか冷たく見せているが、眉が下がるだけで、びっくりするくらい優しい顔に見える。
「だからもう泣くな」
ぎゅうっとルークにしがみついて、コクコクと頷く。
ルークは、私の気持ちときちんと向き合ってくれる。そう思ったら、これまでの苦しい気持ちが嘘みたいに晴れた。卑屈な私はこれからもまた出てくるだろう。でも、そうなったらまたルークに気持ちをぶつけよう。そうして、二人の関係を積み上げていこう。
「じゃぁ、仲直り。ね」




