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第9話《甘い夢》


「どうしていつも、意地悪ばかりするんですか!」

「そんなこと、有らへんよ。何か、悪いことした?」



 涙目でメリアは、俺を見ている。

 何かを言いたげに、口を閉ざしていた。思っていることを、上手く言葉にできないのだろう。



「ちょっと、アンタ。コモさまが、嫌がってんだろ?」

「邪魔しないでくださいッ!」



 いつの間にか回復したのか、メリッサが間に割ってはいる。



「あらあら、モテモテねぇ!」



 オカンが面白がっている。

 メリッサがなぜか、甘い視線を俺に向けている。



「コモさま。こんな女よりも、アチキの方が満足させてあげるよ?」

「それは一体、どういう意味ですか!」



 メリアは完全に逆上している。その怒りの矛先は、メリッサに向かっている。

 剣を構えて、術式を開放していた。



 メリッサもまた、術式を解き放っていた。

 全身を燃やしながら、メリッサは突進する。それに合わせるように、メリアは上段斬りを放つ。メリッサの空間転移は、かなり次元が高いものである。気付けばメリアの背後を、取っていた。



 炎の抱擁を受けて、両者は仲良く燃え上がっている。



「ねぇ、コモさま?」



 背後から、他の女の声がした。

 エルフ族の少女が、そこに居た。他にも三人の女子が、俺を見ている。



「あんな女たちよりも、私と良いことしませんか?」



 艶っぽい表情からは、敵意を感じた。

 膨れ上がる魔闘級から、臨戦態勢であるのは間違いはなかった。



「ちょっと、あなた。抜け駆けは、許さないんだからぁ!」



 幼い顔立ちの少女が、怒りを露わにしている。魔力の質からして、セイレーンっぽかった。

 どうやら彼女もまた、目的は同じのようだ。



「誰が一番、コモさまに愛されるか勝負するって、決めたはずでしょう?」



 ――おい。一体、どういう意味だ。


 趣旨が完全に、変わってきている。

 オカンの差し金だろうか。



「コモに勝てたら、結婚を約束するっていっちゃった!」



 めちゃくちゃなオカンだな。

 クレイジーにも、ほどがあるだろう。



 しかも彼女たちは、勝手に闘い始めている。誰が残っても、最悪だ。ならばいっそ、一網打尽にしてやろうか。

 たったいま、彼女たちを傷付けずに、制圧する方法を思いついたのだ。




 全リミッター解除。



 ――術式発動。



 魔力(コード)淫魔(サキュバス)

 解放レベル:Max

 スロット数:5

 【甘淫魅惑(テンプテーション)】【洗脳催眠】【魔力強奪】【幻覚】【無限供給】

 解放時間:無制限 



 効果範囲は半径500メートル。

 全員、甘い夢に溺れてもらおうか。



読んで下さり、ありがとうございます。

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