第7話《第三魔眼》
その昔、魔人族と一眼巨人族との間で、大きな争いが起きた。
争いは七日間も続いたが、魔人族の勝利に終わった。その際に魔人族の王であるザナッファーが、一眼巨人族の王サイクロプスの眼球を抉り取った。
ザナッファーはサイクロプスの眼球こそが、魔力の源だと確信した。それはまったく、根拠がない迷信であった。事実、眼球を奪われたサイクロプスは、その後も強大な魔力を宿し続けていたという。
然しながら、眼球を移植した後のザナッファーの魔力は、凄まじかったと言われている。
これには色んな説があるのだが、もっとも有力な説が、サイクロプスの眼球とザナッファーの持つ魔力の相性が、抜群に良かったのではないかというものだ。そこからザナッファーは独自の術式を編み込んで、《第三魔眼》という形で後世の魔人族に、サイクロプスの眼球を残したのだという。
第三魔眼を開眼するような魔人族は、現代ではなかなかお目にかかれないことから、ザナッファーの話しは『一眼伝説』として語り継がれるおとぎ話として扱われていた。
まさか本物を、こんなところでお目にかかれるとは思わなかった。
メリッサの魔闘級が極限まで、跳ね上がっている。
「本気のアチキに触れると、ヤケドするよ?」
まるで彼女は、燃え盛る果実だ。
炎のように、魔力が滾っている。その全身を、深紅の闘気が包んでいる。メリッサに触れるだけで、常人ならば灰になってしまうだろう。
加えて、転移魔術か。
気付けばメリッサはまた、俺の背後にいる。その拳には、圧縮された炎が宿っている。振り向かずに、裏拳を放ったら空振りしていた。
「残念だね。反撃がくるのは、解ってんだよッ!」
「それは、俺も知ってんで?」
メリッサは再度、空間転移をしていた。
今度は俺の目の前にいるので、その拳は俺の腹部を捉えようとしている。もっとも全部、読めていた。だからこそ、振り向かなかったのだ。
――やれやれ。
優しく抱き締めて、堕としてやるしかないようだな。
半身を捻って、前に出ていた。拳をすり抜けて、メリッサに抱きつくと全身が焼けるような熱さを感じた。
「なるほど。これが、お前の魔力か。なかなか、情熱的やんけ?」
「お前、馬鹿か。そんなことしたら、焼け死ぬぞッ!」
思いのほか、メリッサは焦っていた。
まさか抱き付かれるとは、思っていなかったようだ。身動きが取れないので、反撃もできないだろう。メリッサの魔力に直接、触れることでその性質を真似てやろうと思ったのだ。
大体の術式は、理解った。
「あらあらコモったら、大胆ねぇ~」
メリッサを絞め堕としてやると、オカンが茶々を入れてきた。
目の前には何故か涙目で、メリアが立っている。
「コモさま。他の女に抱きつくなんて、最低ですよぉ!」
最大出力の術式を、メリアは発動させている。
どうやら、本気で怒っているようだ。
まったく、面倒くさい女だな。
メリッサから模写した魔力を応用して、炎の剣を生成して応戦した。
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