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第4話《問答無用》


「では、始めましょうか!」



 誰からの同意も得ていないのに、エルザは空間魔術を構成している。

 勇者のくせに魔王スキルを、平気で使用するのだから(たち)が悪いな。ほんの一瞬にして、広大な自然空間を生み出して、そこに俺たちを転移させようとしている。



 そうはいくまいと、妨害(ジャミング)系の術式を形成するが阻害された。



「普段のサボり癖が、(あだ)となりましたね。貴方(あなた)ほどの才能が努力すれば、私の生み出した魔術など簡単に消し飛ばせれるはずですよ?」



 勝ち誇ったように、小言をいうエルザ。

 皆は戸惑っているようだが、問答無用でエルザの生み出した自然空間(ダンジョン)に引きずり込まれてしまった。



「オカンのクソったれが。問答無用も、いいとこやな!」



 悪態をつきながら、周囲を窺った。

 広大な森林のなかを、俺だけが佇んでいる。皆の姿はない。いまごろオカンの指導を受けて、能力の底上げをされているのだろう。空間を破壊するのは可能だが、なかの人間を傷付けてしまうので、それは流石(さすが)にできなかった。



 同様の理由で、全力で闘うこともできない。

 いくら力を抑えるブレスレットやガントレットを付けているとはいえ、俺の最小出力でさえ彼らを殺しかねない威力を秘めている。なので使えるのは、いくつかの通常魔術(ノーマル)か体術だけだ。



「言っておきますけど、生徒たちを傷付けたら許しませんからね?」



 頭のなかにエルザの声が直接、響いてきた。

 すでに一人目の刺客を、送り込んできているのが気配で理解(わか)った。魔力の質から言って、魔闘級が3000(ごく)の眼鏡の少年だ。もっとも、エルザが何かをしたせいで、10那由他(なゆた)まで魔闘級が上がっている。



 勇者ではなく、魔王になっていた方が向いていたかもしれないな。

 どうやらエルザは、本気で俺を倒しにきているようだ。こちらの手札は体術と、通常魔術(ノーマル)だけだ。対して相手は、エルザの知恵と力を借りた勇者候補生たちだ。



 将棋で例えるなら、こちらは『玉』と『歩』だけで闘うようなものだ。

 贔屓(バイアス)があまりにも、酷すぎると思うのだが――。



 振り返りざまに、体重を乗せて手刀を放った。その手には魔力を、少しだけ付与しておいた。加減を間違えると、殺してしまうからな。鋭い剣撃を、片手で俺は受け止めている。

 手に触れる金属と、魔力の感触からして勇者(オカン)のお下がりを与えらたようだな。躊躇(ちゅうちょ)なく振り切るのは、俺が勇者の息子だと知っているからだろうが、初対面の相手に失礼なやつだ。



「彼は剣術が得意なようなので、私が使っていた超絶聖剣ウルトラ・エクスカリバーを与えておきました。それと肉体強化と、魔力増幅の術式を付与しています」

「何やねんな、その恥ずかしい名前の聖剣。オカン、中二病なんか?」



 息子としては、このうえなく恥ずかしいな。

 ちなみに『術式』とは、魔力を入れる容器のようなものだ。数学で言うところの数式のようなもので、通常の魔術ではありえないほどの効果を術式は(もたら)してくれる。



「コモくん、初めまして。僕は、ボリス。よろしくお願いします」

「ご丁寧に、どーも。できれば穏便な、あいさつにしてもらいたいねんけどな?」



 物静かだが決して、大人しくはないようだ。

 好戦的な、眼をしている。俺に向かってくるやつは、決まって同じような眼をしているのだ。



「それは、できない相談だね。君みたいな花形(スター)をまえにして、大人しくするなんて無理に決まっている!」



 身体を捻って、回転蹴りをかましてきた。

 意外な追撃方法に、虚をつかれて反応が遅れてしまった。ボリスのつま先が、俺の(あご)を掠めている。脳内を揺さぶられて、足元が軽くふらついた。ラッキーキックをもらって、数年ぶりのダメージを負っている。



 追撃の剣が、俺を襲い掛かっている。

 本当に皆、問答無用だな。



読んで下さり、ありがとうございます。

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