第2話《クラス分けも、楽ではない!》
入学式とは、面倒な行事であった。
学園長の話しは、長くてつまらなかった。はっきりと言って、どうでもいい内容である。そんなクソつまらない話しを、メリアはまじめに聞いているのだから本当に良い子である。
「それでは、諸君。しっかりと、勉学に励んで下さい!」
ようやく学園長の話が終わって解放されると思いきや、禿げたオッサンが現れた。
俺は相手を見ただけで、だいたいの魔闘級が理解るのだが、オッサンはかなり強い部類に入るな。
――10阿僧祇も、ある。
これは、魔王の側近。もしくは、賢者レベルに匹敵するほどの魔闘級である。
ちなみに学園長の魔闘級は、五億しかない。それでも、かなり優秀なのだが、俺の周りの規格が違いすぎて霞んでしまうのだ。
一般市民の平均ラインが、五百ぐらいなので学園長が優秀であるのは間違いはない。
あくまでも、一般レベルの話しだがな。
「俺の名は、バイグルだ。これから三年間、お前らを指導してやる。前職は王立魔導騎士団だったので、剣術・魔導。あらゆる分野を、教えてやるから覚悟しておけ!」
禿げたオッサン――バイグルは、そう言って壇上から降りた。
手には魔力盤が、握られている。魔闘級を測定する魔導機具だ。
「これから、クラス分けをする。皆、順番に魔闘級を、測定させてもらうぞ!」
俺たちの学年は、全部で300人ぐらいだろうか。
これはしばらく、俺たちの番は回ってこないだろうな。
「解っとるやろうな、メリア。出来るだけ、魔闘級を抑えとけよ?」
「かしこまりましたぁ~。でもでもぉ~、コモ様は大丈夫ですかぁ~?」
確かに、そうだ。
俺の魔闘級は、甚大だ。爺ちゃんに作って貰った力を抑え込む魔導機具でも、100無量大数ぐらいまでにしか抑えられない。
弱いフリをするのは、相当な技量が必要になってくるだろうな。間違っても、上位のクラスには入りたくはない。中の上ぐらいが、ちょうどいいラインだろう。
なので平均値が、どの程度の数値かを把握しておかなければならない。
「普通クラスだな」
いまの女が、4000万で普通クラスだった。
もう少し上の1億ぐらいが、目安だと考えた方がよさそうだな。
「特待クラス。お前は、なかなか優秀だな!」
ヤンキー風の少年が、2億を叩き出している。
あのラインは、目立ってしまいそうだ。
「すげぇッ!」
「3000極だってよ!」
周囲が慌ただしく、どよめいている。
魔人レベルの魔闘級が、出たようだな。メガネをかけた物静かな少年だった。種族までは解らないが、人間ではなさそうだ。
「お前は、勇者の素質がある。勇者クラスに、行って貰おうか!」
バイグルに、好印象を持たれていた。
それからも、何人かが勇者クラスに選出されていたようだが、俺たちの番がくる直前に、10那由他が出た。修練を積めば、魔王や勇者ぐらいには強くなるだろうな。
「あの……私のような田舎暮らしの貧乏人が、本当に良いんですか?」
不安げに問いかける少女は、校門でぼやいていたあの少女であった。
おそらくその素質を見出されて、推薦枠で入学したのだろう。でなければ、この学園とは無縁そうな立場だろうからな。
「何を言うんだい。君には、輝かしい未来が待っているよ。しっかりと、勉学に励みなさい!」
「ありがとうございます……」
少女はめちゃくちゃ、目立っていたが不安そうな表情をしていた。
よほど自分に、自信がないのだろうか。才能の塊なのだから、もっと胸を張ってもバチは当たらない。
「さて、いよいよやな。しっかり、力を抑えとけよ?」
「かしこまりましたぁ~」
間の抜けた返事とは裏腹に、メリアは5000那由他を叩き出してしまった。
めちゃくちゃ、目立ってしまっている。
「凄いな、君。さすがは、あの神魔竜さまのご息女さまだッ!」
興奮気味に、バイグルが喰いついてしまっている。
メリアのバカ野郎。めちゃくちゃ、目立ってるじゃないか。そのとなりに居る俺を、期待に満ち溢れた眼差しでバイグルが見ている。
「貴方さまが、偉大なるエスタさまのご子息ですな?」
「せや。俺は、弱いから普通クラスにしてもらえんやろか?」
すでに全生徒が、俺を見ている。周囲のどよめきが、半端ではない。
全員がまだか、まだかと、俺の測定を待っているようだ。
「ご謙遜なさらずに、コモさま。ささっ。サクッと、いっちゃいましょう!」
完全に社長を接待する時のサラリーマンのノリで、測定を促してきやがる。
そんなに、規格外の力が見たいか。
だが俺は、お前たちの期待には乗らない。魔闘級を最小化させて、平均ラインのすこし上をいってやる。
「何という数値だ。こんな素晴らしい数値は、初めて見ましたよ!」
大興奮するバイグルを、周囲は見ていた。
どよめきが、増していく。
――やってしまった。
俺はなんて、バカ野郎なんだ。
これからの三年間が、地獄と化してしまった。
「8000不可思議が出たぞ。皆、我らの英雄さまに、盛大な拍手を送ろうではないか!」
俺を包む万雷の拍手が、悪魔の嘲笑のように聞こえてきた。
いや、悪魔なんか秒で殺せるけど。
やってしまった。
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