第12話《お鍋は美味しいでござるなぁ!》
「パパ上。ゴマを、振ってくだされ!」
「解っとるがな、ハウちゃん!」
ハウゾウが待ち切れないのか、オトンに催促を始めている。
基本的に彼女は食いしん坊なので、食べることになると黙ってはいない。ゴブリンやオークの新鮮な肉と、野菜を味噌ベースの出汁で煮込まれた鍋は食欲をめちゃくちゃ刺激してきていた。
ハウゾウでなくとも、待ち切れなくなるのは頷けるな。
「パパぁ~。ハウタも、ゴマいっぱいが良いんに!」
言われるがままに、オトンはゴマを振りかけている。
我が家のゴマは、神々が住まう神聖世界にのみ生息する神樹菩薩の根をもとに、生成された特別製である。普通のゴマとは別次元に香りが違うのだ。ゆえにゴマだけでも、かなり旨いのだ。
「昼間に、ガルマのオッサンが来てなぁ。刃紡竜骨を、分けてくれてん!」
「マジか。めちゃくちゃ、レアな竜骨やん!」
ガルマのオッサンとは、オトンの叔父に当たるのだが――ようは、俺の爺ちゃんだが――竜族の住まう神竜界に住んでいる。
竜骨は良い出汁が取れるのだが、絶滅危惧種である刃紡竜は数も少ない上に、めちゃくちゃ強いのだ。全身の竜鱗は、刃のように鋭くて硬いのだ。その肉は硬くて食べられないが、骨を煮込んで出汁を摂ればどんなものでも絶品の料理となる。
「細かいことは言わんから、とにかく食うてくれ!」
鼻腔をくすぐる濃厚な香りは、さきほどから胃袋を激しく絞めつけている。
腹が減って、仕方がなかった。
まずは、出汁の味からだ。
程よい熱が、舌を湿らせる。濃密な味噌の香りの奥からは、刃紡竜骨の重厚な旨味を感じた。神樹菩薩の根で作られたゴマの風味が、極楽浄土の風を運んでくるような錯覚をさせる。
――これは、ガチで旨いな。
「美味しいで、ござるよ!」
「美味しいんに!」
ハウゾウとハウタの感嘆の声を尻目に、俺はゴブリンの肉を頬張っていた。
あっさりとした淡泊な味わいに、味噌の旨味が絡みついてくる。これは、いくらでも食べれそうだ。
気付けば皿は、空になっていた。
無言で器を差し出すと、オトンが笑顔でおかわりよそってくれていた。
ハウゾウとハウタが同じように、おかわりを催促していた。
「やはり、お鍋は美味しいでござるなぁ!」
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