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垂乳根  作者: 亜脳工廠
1/10

1. 熱病

プロローグです。

全編にわたって、頻繁に書き直すことがあります。ご容赦ください。

目覚めは、鉛のような倦怠感と共に訪れた。


……頭痛がする。身体の節々が痛くて、呼吸が熱かった。

寝ぼけた眼を開きかけたとき、部屋に母の声が響いた。


「セレナ? どうしたの。酷い腫れ……」


母は私の胸元を見てそう言った。


「何でもない……」

「何でもないって、何でもなくないでしょう」


胸を触ると、細かな腫れが、ブツブツと身体の表面に浮かんでいるのが分かった。

母は額に手を当てて言う。


「今日は学校はいいから、早く病院に行きましょう」


重い朝食を食べ終えると、車に乗せられて、街の風景を眺めていた。

通学途中の生徒達、街並みに並べられた母性のペトルキカ像、早朝の街を行く車の縦列……

見慣れた道のりから外れて、車は街の坂道を行く。


遠くに大きな教会が見える場所まで登ると、その光景を振り切るように、建物の群れの中に侵入する。

そうして、いくつかの路地を曲がった先にそれはあった。

こじんまりとした診療所。予想通り、ここは今日も閑古鳥が鳴いていた。


診療所の中に入ると、センサーに手首をかざして、都市健康保険の認証をする。視界に『認証』の文字が表示されて、数秒もたたないうちにそれは終わった。

すると気だるげな医者が一人出てきて、大きめの眼鏡を抑えながら言う。

「ああ、ではこちらに」

 

医者はあくびをしながら自分のデスクの前に座った。

私は黒いスツールに座って、いくつかの質問に答えた。

そして赤い腫れを見せると医者は「ああ、イス熱ですね」と端的に言った。

「思春期の子供に多い病気です。基本的にストレスや疲労によって起こります。処方箋を出しますから、一週間ほど安静にしていてください」

 

ロビーでしばらく待っていると、先ほどの医者の妻だという薬剤師が処方箋を持って現れた。

薬剤師の簡単な説明の後、処方箋を渡される。

お大事に、という言葉に送られて、診療所を後にした。

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