長文タイトルについて思うこと
エッセイはご無沙汰しております。早見と申します。
今回は今ネット小説界隈を賑わせている『長文タイトル』について思うところを述べさせていただきます。
えっと、先に予防線を張っておきますが、これはあくまでデータや実体験に基づいた個人的な意見です。この話題については賛否両論あるのは分かってますので(じゃないとエッセイで意見表明したりしません)、反論のある方はあなたの意見を尊重します。
あと、結構燃えることもわかっているので、どうぞお手柔らかに……
さて、本題ですが、『長文タイトル』についてはTwitter等でも以前から話題になっていて、定期的に議論が蒸し返されて「もういいよ」ってなっていると思います(私もなっています)。なのでこれを機に自分で考えを整理して落ち着こうというのがこのエッセイの主な目的となります(要は自己満足です。)。
では始めたいと思います。
【そもそも長文タイトルとはなんぞや?】
そう、これが一番謎です。
長文のタイトルの作品といって私がパッと思いつくのが、
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』
のような書籍や漫画を原作としたアニメ作品で、『俺妹』については2008年にライトノベルが刊行。『もしドラ』については2009年に初版が刊行。『あの花』については2012年に漫画が発売されています。
少なくとも10年以上前から長文タイトルの作品が存在し、書籍からアニメにもなったんですから、長文タイトルの作品自体は一定の評価を得ていると言っても良いでしょう。
しかし、今問題とされているのは上記の長文タイトル作品とはまた別種のものであると考えます。
現在批判の対象となっているのは、恐らく今の『小説家になろう』を席巻している長文タイトルの作品群。「〜を〜したら〜だった件 〜が〜で〜します!」みたいな説明調のタイトルの作品群を指していると思います。
【なんで長文タイトルが多くなってしまったのか】
これには諸説ありますが、一番有力だと思っている説が「小説家になろう(読もう)のシステム上の問題」という説です。
現在、「小説家になろう」には数多の小説が存在しています。読者が読みたい小説を探す場合、主に「ランキング」「新着」「レビュー」から好みに合うものを探していくことになると思いますが、そのうち「ランキング」や「新着」では、スマホ版サイトではタイトルのみがズラっと並んでいます。他に分かる情報は「作者」「ジャンル」「完結済みかどうか」くらいであらすじすら表示されません。
読者としては、このような状態で読んでみようかなとお目当ての作品を見つけるのは「タイトルを見て判断するしかない」ということです。もちろん、タイトルをクリックしてあらすじを読んでから判断するという人もいると思いますが、タイトルで興味をひけなければそもそもクリックすらしてもらえないんです。
これはシステム的な欠陥だと思っております。
じゃあこの状況でどうやって読者の気を引くか。そうして作者さんたちがたどり着いた結論が「タイトルを長くして気になりそうなワードを詰め込んでみる」ということです。
【じゃあ長文タイトルにしたら読者は増えるのか】
これは作者さんは気になるところだと思います。少し前に検証してみました。
私の話数がほぼ同じ長文タイトルの作品と短文タイトルの作品を同じ時間に更新して更新後のPV(閲覧数)を比較してみました。ジャンルは同じSFです。
結果は、だいたい一日で10倍くらいのPV数の差がつきました。長文タイトルの作品のほうが読まれています。
でもこれだけじゃまだ分かりませんね。ブクマ数も、あらすじも、評価点も違う作品ですから。
次に、既に完結済みの短文タイトルの小説を長文タイトルに変えた上で、設定集を追加して(一度更新して)みました。これでPV数の変移を見ていると、あっという間に過去最高の日間PV数を更新しました。
以上のことから、タイトルを長文にするとよく読まれるということは明らかだと考えます。
【長文タイトルのデメリット】
作者にとっては読まれて嬉しい長文タイトルがなぜ批判されているのか、色んな方の意見がありますが、いくつか挙げてみたいと思います。
・読みづらい
うん、確かに。長文タイトルは読みづらいし他の作品と混同しやすいのでこれはデメリットといえるでしょう。私のフォロワーさんの中では上手く略称をつけている方もいらっしゃいますが、それも浸透しなければあまり意味がないでしょう。
・タイトル見ただけで読む気が失せる
これは好みの問題だと思いますが、そういった方もいるのは頭の片隅に置いておくべきでしょう。
・創作物としての美しさに欠ける
ごもっともで、タイトルと内容が絶妙な関係性を織りなす文芸作品が数ある中で、長文タイトルはそのような芸術性はないと言えるでしょう。
・書籍化した時にレイアウトに困る
これも実に的を射た意見だと思います。特に私みたいな書籍をイラストで選ぶような人間にとっては、タイトルで絵が隠れたらちょっと嫌だと思います。
加えて「長文タイトルは流行だからすぐに廃れる」という意見については、前述した長文タイトルが多くなった経緯があるので否定させていただきます。なろうにおける流行は『悪役令嬢』や『追放』や『ざまぁ』など物語の作風であって、長文タイトル自体は流行ではなく、「なろうのシステムに適応しようとした進化」であると考えます。ですから、なろうのシステムが改善されない限りは長文タイトルは廃れないと思います。
【長文タイトルは善か悪か】
さて、長文タイトルのメリットデメリットを挙げてきました。もちろんこれ以外にもあると思います。ですがこれだけは言えると思います。
「別にどっちでもよくない?」
長文タイトルを使う人は、デメリットを理解した上でそれでも読まれたいので使っています。タイトルよりも内容を読んで欲しいという方なんでしょう。対して絶対に使いたくないという人は固い信念と自分の目指すものを突き詰めるという崇高な意志を持っていると思うのでどちらが良い、悪いとは誰にも言えません。
ただ、Twitter上などで長文タイトルを使っているから、使っていないからといってバカにされる、貶されるといったことが散見され、これはとても醜い行為だということです。自分は自分、他人は他人でいいはずなのに、理解できないものを頭ごなしに批判するのはよろしくないと思います。それは自分の立場を貶め、自分の崇高な意志すらも貶める結果になります。そして、多様性を認めないことはコンテンツの発展を阻害します。これは明らかな悪です。
長文タイトルを使うも使わないもよく考えた上で自分で下した決断なので尊重されるべきです。
さて、かくいう私も一年ほど前までは長文タイトルにかなりの抵抗を持っていて、長文タイトルをつけることは悪魔に魂を売るようなものだと思っていました。
でも、小説書いていると予想外に疲れるんですよね。もっと読まれたい。こんなに頑張っているのに他の人より全然読まれていないってなることがあるんです。もちろん実力不足なところは多々あると思います。ですが、読まれるようになってそれで作者さんが救われるのだとしたら……そしてタイトルを変えることについて大して抵抗がないのだとしたら……少しくらい甘えてもいいんじゃないかなって思います。
ちなみに、どうしても長文タイトルが苦手な人。おっと、小説家になろうには「純文学」というジャンルがあります。あそこにはランキングにも長文タイトルが入っておりません。一度チェックしてみては?
【結論】
長文タイトルは読まれます。ただ、デメリットもあるので考えなしにつけるのはオススメできません。
そして、他の人が必死に考え抜いて出した決断にケチつけるのはみっともないからやめようね。
作者の皆さんは、自分の創作に全力で取り組んでいると思います。そんな皆さんの努力がいつか実を結ぶことを願って……今回はこの辺で筆を置こうと思います。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました。似たような議論で「なろう系の是非について」というのがありますが、それはまたの機会にしますね。