約束
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正月も終わり
冬休みも終わり高校二年生もそろそろ受験生として勉強に力を入れようとしている一月下旬
4時限目のチャイムの音にクラスがざわつく
食堂に向かうもの、お弁当を出すもの
そして「藤山~飯食おうぜ~」
「藤山君、たまには一緒に食べない?」
あ~田中すまない
「まぁ邪魔しちゃ悪いしな、おーい木村~飯食おうぜ~」
それじゃ屋上にでも行きましょうか
「はい!」
休み時間になると解放される屋上で昼ご飯
今更ですけど神様もご飯は食べるんですね
「これが一番効率よく霊力が溜まるので」
今度、信者の人がいたら沢山お供え物をするといいですよと教えよう
今日は帰りに塾があるので先に帰っていてください
「わかりました、今日は私が料理当番なので期待して下さい!」
こうわくわくしてるってことは何かに挑戦しようとしている顔だ
以前出てきた鳴きながら自走する前衛的なハンバーグが頭をよぎる…
今日は和風なものがいいなぁと希望を言っておこう
「あら?そうですか?わかりました、では頑張って作ります!」
ちょっと残念そうではあるがほっと一安心
ずっと続くと思ってた日常
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授業中ではあるが今日はとてもねむい
昨晩部屋の片付けをしようと思ったところ出てきた漫画が面白すぎたのが悪い。
一生懸命シャープペンシルを手にさして眠気をごまかし手が穴だらけになったところでチャイムがなった
「藤山~飯食おうぜ~」
「藤山君、一緒に食べない?」
二日連続とは珍しいな、いつもの友達は?
「今日は藤山君と食べようと思って」
ふむ…と言うわけだ田中すまない
不思議そうな顔している田中
「何がというわけかは知らんが今度焼きそばパンおごれよ」
はいはい
今日は食堂にしましょうか
「はい、カレーうどんが美味しいんですよね!」
いくら美味しいからと言って一週間全部カレーうどんだったときは流石につらかったです…
「あはは…すいません」
そんな世間話をしていたら担任の先生が来た
「あれ?田中さんはいない?一人なんて珍しいな」
先生?神白さんと食事していますが…
「ん?あぁ!すまない!それでだな、申し訳ないのだが田中にあとで職員室まで来るように言っておいてくれないか?」
なんかやらかしたんですね…
「おかげで最近、胃が痛くてな…じゃない、頼んだぞ」
先生も大変ですね
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最近少しおかしい
美景が人に認識されていないように感じる。
本人は気づかないように振舞っているようだけど
とりあえず塾ということで先に帰ってもらい俺は湖の社にいる。
とは言えどうしたらでてきてくれるかな。呼んだらでてきてくれるかな。
先代様!
「隠居してるとはいえ神なんだからあんまり気安く呼んで欲しくないんだけどね」
…出てきた
うん、気を取り直して
申し訳ありません。
ただ、どうしても気になることがありまして
と近況を話すと
「あぁ…なるほどね、そうだねぇ
徹くんには説明したほうがいいのかしらね」
お願いします。
「我々神というのはね、人々の信仰によって力を得ています。そこは分かるわね?」
頷く
「で、その神にも神たる資格を維持するために神格という位付けがされていてそこで初めて信仰を力に変えることが出来るのね」
ということは
「神格がなくなり神としての資格がなくなると存在が消滅するねぇ」
消滅する…って、え?
「だから時間がないと言ってたんだけどね」
「このままだと数日もしないうちに」
息を切らしながら急いで帰る。
「あ、ご飯出来てますよ!」
いつものように迎えてくれる美景
だが、時間がないと聞いていた俺はあせるように美景に問い詰めた
なんでもっと早く言わなかったんだ!
このままだと美景が消えるんだぞ!
と言ったところで泣きそうな顔をしている美景に気付き次の一言に詰まってしまった。
「ごめんなさい」
いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。
完全にただの八つ当たりなんだ。
何も知らず美景を引き止めていた自分が悪いんだ。
「神様は人の願いを聞き届けるのが役目なれば、
いえ、これは嘘。徹との生活が楽しくて離れるのが辛くて
私はこのまま消えても構わないと思ってしまった。」
そんなことになったら俺も忘れてしまうのでは
「離れることの辛さを考えれば忘れてしまったほうが幸せだと、自分本位なのは承知です。ですが、この気持ちは私だけが持っていけば」
「駄目だ!」
「困った方ですね…そうだ、では昔の様に約束をしていただけませんか?」
昔?約束…夢を思い出した
あぁそうか…だからなのか
またね
「はい、また」
窓から見える湖の社に伸びた御神渡りはとても綺麗だった
…
一年もあっという間に過ぎまた冬が来た
今年の御神渡りも綺麗に見える
俺は社に見えた人影に手を振った
ここまでお読みいただきありがとうございました。
拙い文章ではございますが頑張って書きました。