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御神渡りを渡って  作者: ゴハン
4/5

記憶

日常なんてあっという間に変わってしまう。

今年もあと一日と迫った12月30日

「こたつはいいですねぇ。あ、徹さんミカン剥いてください~」

すっかり馴染んだ神山さんがこたつでだらけている

神山さん、そんなにだらけてたら太りますよ

「大丈夫ですよぉ」

なんかセリフも心なしか緩い

ぴんぽーん

「徹さん、だれか来ましたよぉ?」

誰か来たなら尚のことその緩んだ顔を何とかしたほうがいいんじゃないかな?は~い

「大丈夫ですよぉ。私に知り合いなんて…知り合い…」

玄関を開けると見知らぬ妙齢の女性がいた。

「あら、徹くんじゃない。久しぶりねぇ」

不意に訪れる違和感。あぁこれは

神白さんの…えーと、お母さん?

「あら、美景のことを認識しているからかしら?掛かりが浅いのね、まぁいいわ。美景はいるんでしょう?」

は、はぁ

「せ、先代!?」

「はぁ…何やってるのかしらね、この馬鹿当代は…」

居間に案内すると神白…美景さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした

珍しい顔だ

先代ってことは二代目の神様?

「まぁそんな感じだね、ほら帰るよ!」

神白さんの首根っこをつかんだ

せ、先代さん!?

「悪いね徹くん、こっちの問題だから気にしないでおくれ」

そういうと目の前から二人は姿を消した。


…あれ?今何かいたような

こたつには剥きかけのミカンが置いてあり

自分はただ休日を満喫していただけのはずなのに

とても大事な何かを忘れてしまったような

胸に穴が開いている気分だ



客間の大掃除中に不思議なものを見つける。

マフラーだった

家族に聞いたが誰も知らないという。

自分も買った覚えはないがとても大切なものに感じた。

どこかでこれを

頭が痛い


夢を見た

夢の中では一人の子供を見ていた

冬の寒い日に子供が遊んでいるとどこからともなく泣き声が聞こえてきて

子供がそちらの方へ行くと同い年くらいの女の子が泣いていた

「どうしたの?」と子供が聞くと「ここはどこ?」と泣く女の子

困った子供は一緒に遊んであげたところ、ようやく泣き止んだ

夕方になり、遠くに人影が「おーい」と子供たちに声を掛けた

お母さんが来たのかと子供も安心して「それじゃあ、またね」と女の子に手を振ると

女の子も「またね」と手を振って人影に向かって走っていった



空もそろそろ明るくなるだろうという時間

こんこんと窓が鳴る音で目が覚めた。

昔からこの合図をしてくるのは一人しかいない

玄関を開けると晴れ着姿の田中が居た

「初日の出と初詣行こうぜ!」

馬子にも衣装とはこのことかな?

「たまにはいいだろ?惚れるなよ?」

あ、はい

「うわ、反応悪」

そんないつものやり取り

ちょっと出かけてくると家族に告げ隣町の神社へ向かう。

「徹にしては珍しいマフラーしてるな」

まぁなんとなくね

「そろそろ日がでるなぁ」

湖岸から見る初日の出は毎年恒例になっている

「今年は御神渡りが綺麗に見えるなぁ。ほら、中央の社までまっすぐ!」

御神渡り…どこかで…社まで…神…


「わるい!田中!後でお汁粉と甘酒おごってやるから先神社行っててくれ!忘れ物だ!」


後ろで田中が何か言ってたがそんなことは気にしていられなかった

走った

心臓が破裂するんじゃないかという位走った。

家の前から延びる社への道

御神渡り

みしみし言ってるような気もするが気にしてなんかいられない

それでも社まで走った


「美景!」


名前を呼ぶと何もない空間から神白さんが出てきた

「あれ?なんで…?」動揺した神白さん

「まったく、人間に深くかかわりすぎだよ当代…」あきれたようなため息をつく先代

「あと腐れのない様にしたのにまったく…」

先代さん、お願いだ。美景が帰るのをもう少しだけ伸ばせないか?

「できない相談だね。と言いたいところだけどまずは理由を聞かせてもらおうか」


クリスマスの時に気づいた

たとえ神様だとしても俺は



「美景が好きだから」


「…」


あの

「くっくっくっはーはっはっはっ神を好きと!」

えーそんな笑う?

「くっくっくっごめんごめん、そうだねぇ

徹くんには恩もあるしねぇ、当代はどう…聞くまでもないか」

見ると耳まで真っ赤な美景がいた

「さて出雲の土産話もできたしこれ以上いたら馬に蹴られそうだから私は帰るよ」

じゃあ

嬉しそうに言う俺に先代が少し厳しい顔をした

「ただし、当代。時間がないのは事実だからね」

そんな先代の言葉にちょっと寂しげに美景は頷いた。


先代が帰った後

ちょっと気まずいな…えーと、うん

…とりあえず初詣いく?

「…はい!」

他の神社とか行って大丈夫なのか?とか色々疑問はあったがさっきの寂しげな顔はどこかに行ったような美景はやっぱり可愛かった。

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