新生活
前回のあらすじ、自力で異世界転移した天才科学者こと神楽坂 仁は
「見かけは子供、頭脳は大人」になったのだ。
異世界に来たら冒険者になろうと考えていたジンだが、1つ問題があった。冒険者になるためには魔法学校を卒業しなければいけないのだ。一般人が冒険者になったら簡単に死んでしまうということらしい。そこでジンはアスラシア第二学院に入学することにした。費用の心配はなかった。日本で金塊を買っておき、それをこの世界で換金したのである。
今日は入学試験の日だ。事前の申し込みは不要であり、受付で入学試験の受験料を支払うと、受験票が手渡され試験会場へと案内された。
試験には、実技試験と面接試験がある。今年の実技試験は魔法で10m先の的を破壊すればいいというものだ。魔法の種類は問わないということだが、地味な魔法だと評価されにくいかもしれないと考え、ジンは火の玉を出すことにした。また、この世界ではチームで行動するときに連携が取れるようにするため、何の魔法を使うのかを宣言するのが一般的らしいので、ジンもそれに倣って宣言することにした。
「火の玉(ルビは異世界語での読みです)」
ジンがそう言い放つのと同時に彼の手から火の玉が飛びだし、1秒も経たぬうちに的へ着弾した。そして、的は瞬く間に灰と化した。
「おお~。」
という声が周囲に響いた。こうして実技試験は終わり、その後の面接試験も無事に終わった。
後日、ジンは合格を確認すると、すぐに入学の手続きを終わらせた。
今日は入寮の日である。学院は全寮制なのだ。どうやら今年の男子は4人だけのようで、集まってそれぞれ自己紹介することになった。
「まずは僕からですね。僕の名前はリュフジュ、得意魔法は雷です。よろしくね。次、相部屋のジン君。」
(こいつと相部屋なのか。初耳だな。)
「俺がジンだ。得意魔法は火の玉で、ここを卒業したら冒険者になりたいと考えている。
田舎から来たので世間知らずなところもあると思うがよろしく頼む。」
(得意魔法が火の玉というのは、嘘だがな。)
「ってお主、火の玉男ではないか!」
(火の玉男ってなんだよ)
「こやつ、すごいんぜよ!火の玉で的を灰に変えたぜよ!」
(それってすごいのか?って)
「お前誰だよ。」
「これはすまない。拙者はギルディオ、冒険者志望でござる。気軽にギルと呼んでほしいでござるよ。では次。」
(帯刀しているから、武器に魔力を込めて戦うタイプだな。)
「ぼく、ルビノス。よろしく。」
(それだけ!?)
「ルビノス君、よろしくね。」
こうして、それぞれの自己紹介が終わった。
夜、ジンとリュフジュは部屋でこんな話をした。
「ジンはどうして冒険者になりたいの?冒険者って軍に入れなかった人がなるイメージだけど。」
「昔からの憧れだからかな。それに軍に男は入れないじゃん。」
「あ、そうなんだ。憧れかあ。」
「そういうリュフジュは将来の夢とかないのか?」
「う~ん。素敵な人と結ばれるとか?」
リュフジュは顔を赤らめてそう言った。
「そうか、いい出会いがあるといいな。」
「うん。」
(この世界では、リュフジュのような奴が普通なんだろうな。)
「ジン、そろそろ寝ようか。」
「そうだな。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
こうしてジンの新しい生活が始まった。
何も考えずに書いているようでも、結構考えることがありますね。