不可能を超えた男
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アスラシア王国第一王女アスラシア・クレファは信じられない光景を目にしていた。
目の前の男子が、同年代の女子を魔法で圧倒しているのだ。
魔法が普及して数百年がたった今、「男は女に勝てない。」それが常識だった。
周囲に動揺が広がる中、彼は言った。
「不可能は超えられる。」
そんな彼に対し、クレファは思ってしまった。「かっこいい。」と。
魔法によって男女の力関係が逆転したこの世界において、「かっこいい。」は男に向ける言葉ではなくなっていた。それでも彼女は「かっこいい。」と思ったのだった。
これは魔法の存在を知らない現代日本人であった「神楽坂 仁」が異世界において数々の不可能を可能に変えていく物語である。
クレファとジンの出会いから遡ること36年、ジンは11歳の子供だった。
当時の彼はどこにでもいるような男の子で、趣味は漫画を読むこと、勉強に対しては
「頑張っても頭は良くならない。」と言っていた。
一方で、彼には人とは違う部分があった。彼は異世界に行くことを夢としていたのだった。
将来の夢というと、多くの人はスポーツ選手、パティシエ、サラリーマン、お金持ち、など実在するものを思い浮かべるだろう。しかし彼は違ったのだ。
高校生にもなると異世界への想いはますます強くなり、彼は勉強に熱心に取り組むようになっていた。そこに「頑張っても頭は良くならない。」と言っていた少年の面影は、もはや無かった。
気が付けば、彼は「天才科学者」と周囲に評される存在になっていた。
しかし、彼は満足しなかった。彼は異世界へ行くことを諦めてはいなかったためだ。
実は、彼も一度は異世界へ行くことを諦めかけたという。
しかし彼が諦めなかったのは、歴代の偉人たちの存在があったからである。
例えばライト兄弟は、「人間は空を飛べない。」そんな当たり前だった常識を、飛行機を用いて覆したのだった。
ライト兄弟は、不可能を可能にしたのだ。
ジンもまた、「異世界へは行けない。」そんな当たり前の常識を、覆そうとしたのである。
それから5年後、ジンは魔法というべきものを発見し、夢へ大きく近づいた。
最初、魔法はちっぽけなものだったが「天才科学者」の手にかかれば、それは大きな力を生むものへと変わっていった。
その1年後、彼は無数に存在する異世界のうちの1つを発見した。
そしてさらに1年後、ついに異世界転移を成功させたのである。
次にジンが取り掛かったのは、異世界の言語の習得だ。
ジンが転移した異世界は幸い言語が統一されており、その言語の語順は日本語とほぼ同じであったため、
習得はそう難しくなかった。
また、異世界の一般常識などを抑えることも忘れなかった。
次に行ったのは、魔法のさらなる研究である。研究の期間はたった1年ほどであったが、科学技術と魔法を応用することで、自身の体を若返らせることに成功した。
彼はなんと高校生くらいの体に若返ったのだ。
この研究により、彼は寿命をも超えることを可能にした。
また、この研究と同時に彼は「異世界でモテモテになりたい。」という願望を叶えるべく、己の体を鍛えていた。筋トレは、イケメンへの第一歩であるからだ。特に力を入れたのは顔の筋肉を鍛えることで、口回りの筋肉などには多くの時間を割いた。
魔法でどうにかならなかったのかという疑問が生じるが、気にしないでおいてほしい。
こうして準備を終えたジン。
これから彼の異世界生活がスタートするのだ。
このままいくとクレファがメインヒロインになりそうですね。
一応言っておくと、ハーレム化の予定は無いです。