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最強騎士だったけど転移したらニートだった件 (仮)  作者: さいだー
???

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96/123

癖(へき)

命の危機が迫ると見えると言われている走馬灯


まさに俺はそれを経験している。

スローモーションになるって言うのも本当なんだな

落下していると言うのに永遠に落下しているようにも感じる

それに加えて俺のカスみたいな人生が次から次へと場面展開していく。


まるで人生の最後に思い出を想い返しているように思われがちだが実際のところは違うらしい。


今までの経験からその危機に対してどうすれば助かるのか

少しでも助かる確率をあげられるのかを、脳がフル回転して検索している状態らしいのだ



……ただ残念な事に自堕落に家に引きこもって生活していただけの俺の記憶からでは何も___________________





「ノクティ…!

手を…!」


もう届かないのは彼女も百も承知だろうに馬車の一番後ろから

これでもかって程身を乗り出して

目一杯手を伸ばして俺を救おうとしてくれているようだ。


それでも絶対に届かない圧倒的な距離


俺にむけて差しのべられたその手は無情にも残りの2人に馬車の中に引きずり込まれていく


そうだよな……そのままじゃネムだって危ない


「ノクティーーーーーーー!」


俺の名を呼び叫ぶ声は雪山に山彦となってこだまする。


俺の最後なんてこんなもんか、と諦めてなんとなく馬車の前方に目をやるとあいつらの侵入をも拒むように黒雲が広がっているのが見えた。


このままじゃあいつらもなんて今の自分に必要の無い事を考えていると空から一番近い高く大きい木の枝に体が触れた_____


その瞬間スローモーションが解除される。


今までの時間の歪(ひず)みが揺り戻されるように重力と時間を取り戻し

今まで体験したことのないスピードで地面に向かって一直線に_________________





______________________________________________



「…い!……!お…!しっかりしろ

目を覚ませ!


こんなところで寝ていたら死んでしまうぞ!?」



何かが俺の顔をパンパンと打ち付ける感覚とともに強く揺さぶられているようだった。



「…ん…うん…」



「おっ!おっお前達目を覚ましたぞ!


こんなところで眠ってしまうなんて君は何を考えているんだい!」



目を開くが視界がボヤけていて相手の顔は良く確認出来ない

シルエットでショートカットの女の子なのかなと言う判断はできるが。

なにやら彼女の後ろにも人が複数人いるようであったが不思議と話し声みたいなものは一切聞こえなかった。


にしてもめちゃくちゃ寒い……それに身動き一つできない

何が起こっているんだ?



「ほら僕の手に掴まるんだ!」


そう言って彼女は手を差しのべてきた。

彼女の手にしがみつくとその細身からは想像もつかない力で俺を一気に引き上げる。




「ふーっ



ところで君はなんでこんな山奥で雪に埋まっていたのかな?

自殺志願者……



いやそれともそういう性癖なのかい?」



そんな軽い調子で彼女は俺に質問をしてきたが

口調とは裏腹に聞かれている内容は凄い重い気がするんだ

それに女の子の口から性癖だなんて……最高じゃないか



「いやどちらでもない


助けてくれてありがとうな

俺がここで雪に埋っていたのは……」



「いや…いいよ無理に話す必要はない……


君にも人に話したくない性癖もあるだろう

だからさっきのは聞かなかった事にするし

もう聞かないようにするよ」



「いや本当に性癖じゃないんだが

人の話をきけ!」



「僕にも人にはあまり理解されない性癖があるんだ

わかるわかるよ君の気持ちは


そんな事よりいつまでそうやって地面に突っ伏しているつもりだい?」


ダメだこいつ

話が通じないタイプのあまりかかわり合いになりたくないタイプだ。



「ほら立てるかい?


それにしても君びちゃびちゃだね

なるほど……そういう……」


俺に肩を貸してくれながらそんな事をぼそぼそと囁いている。



「いやだから性癖じゃないから……」



「そのままじゃ君体温が奪われて死んでしまうぞ?


性癖も大事だけどさ

命を粗末にしちゃあいけないよ!」


もうめんどくさいから適当にうんうんと相槌を打っていると



「まずはその服を乾かした方がいいね……


うん


この先にちょっと大きな横穴があるんだ

そこなら焚き火もできると思うし案内するよ

歩けるかい?」







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